最終更新日:2021-12-03
ネットの「口コミ」が審査に活用される時代になった
- 2021/12/03
監修者
徳永 貴則
(株)スペースワン 代表取締役 金融税理士アドバイザー講座主宰
大和銀行(現りそな銀行)にて、都内を中心に主に法人融資の新規開拓業務を行う。その後、本店融資部・審査部門を歴任。2,000社以上の融資に携わる。これらの経験を活かし㈱スペースワンを創設。銀行融資のコンサルをはじめ、事業再生や経営改善のアドバイスも行っている。
また、金融税理士アドバイザーの専任講師としても活躍中。
以前からメルマガにて情報発信を行っている日本政策金融公庫の資本性劣後ローンですが、全国にて利用企業が増えてきている話をよく耳にするようになりました。
まだまだ知らない方も多い制度ですが、逆に誰でも利用できるのでは?と思っている方も多いイメージです。
利用できる企業の大前提は2つです。
➀コロナ禍が理由で大きな赤字かつ債務超過に陥った企業
➁「官民」協調体制にて支援できる企業
➀はコロナ前から慢性的な売上減少かつ赤字体質の企業はダメです。あくまでコロナで急転した企業が対象です。
➁は劣後ローンが民間の融資の呼び水となることで、官民双方にて企業の再建を後押しすることが目的です。
劣後ローンはコロナ再建の「切り札」になると思っておりますが、対象企業へのハードルは高いとも感じます。 皆さんの顧問先でまずは➀に該当する先がありましたら、民間取引銀行の担当者にまずは相談して頂き、債務超過解消を行い、企業評価を上げるべく動いてみてください!
融資審査の「定性情報」とは
私融資審査の根底にあるのは「決算書」の財務情報ですが、数字の審査だけではなく、企業の「定性情報」を活用する動きが出てきています。
ネット上の定性情報を活用する人工知能(AI)与信管理のアラームボックスが、提携する金融機関を広げており、融資審査の幅が広がっております。
今回は、融資審査の「定性情報」とはどういったものか?についてお話しします。
▽SNSや口コミサイトやプレスリリースなどの情報が見られている
今はSNS全盛の時代であり、多くの企業がFacebook、Twitter、Instagramなどを活用して自社のサービスや商品を消費者にアピールしています。また、企業としてだけではなく、経営者個人もSNSを活用している方が多いと思います。
今回の「アラームボックス」では、ターゲットの会社のSNS情報を一元的に集めることにより、数字に見えない取引先の変化や趣向を分析するものです。
例えば
〇自社のサイトでのプレスリリース(新商品やサービスなど)
〇自治体へのプレスリリース(官民連携情報など)
〇顧客トラブル(口コミサイトなど)
〇給与未払い・残業未払いトラブルやブラックな労働環境(転職サイトやバイト募集サイトなど)
〇取引先同士のトラブル(帝国データなど)
コロナ禍で企業業績の動向がより見えない状況で、事業計画等の数字的な評価が困難であり、融資審査や企業の信用情報を決算書だけの情報に依存するのは難しくなっております。そこで、数字以外の情報が貴重な審査材料になってきており、上記のような情報を重宝するようになっているのです。 ある意味、数字よりも消費者等の生の声のほうが、現実を表しているとも言えます。
審査体制の変化に企業側はどう対応する?
▽企業としては自社情報に関するアンテナを高くする必要あり
では、このような審査体制の変化に対して、企業側は何をしていかなければならないでしょうか?
SNSの情報が全て正しいとも限らず、根も葉もない情報に右往左往することはありませんが、自社に関する投稿や情報を定期的にウォッチしていくことが必要です。
具体的には、
〇新商品・サービスなど前向きな情報発信は積極的に行うこと
〇ネガティブ情報には真摯に対応し、その情報の検索順位を落とすことや削除することも検討する
〇従業員とのトラブルが発生しない労働環境を作ること
自社サイトでの情報発信はもちろんのこと、SNSやプレスリリース専用サイトの活用も効果的です。一方ネガティブ情報に対しては、スルーすることもありですが、発信者に対して真摯に対応することも、自社の評価を上げることに繋がります。
特に、従業員との給与・残業代・就労時間等での労使間トラブルの情報は、評価ランクダウンに繋がる可能性が高いことから、アンテナをより高くしておくことが肝要です。 「数字」だけで評価する時代から、「数字」+「日常の振舞い方」も評価されていることを覚えておいてください。
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会計業界をはじめ関連する企業や団体などのキーマンを取材し、インタビュー形式で紹介します。
税界よもやま話
元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。