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最終更新日:2024-09-13

個人住民税「現年課税化」の議論大詰め

  • 2024/09/13
個人住民税「現年課税化」の議論大詰め

はじめに

個人住民税の「現年課税化」に向けた議論が大詰めを迎えている。総務省はこのほど、令和6年度第1回個人住民税検討会の資料を公表。この中で「個人住民税の現年課税化」についての内容に注目が集まっている。

所得発生と課税・納税のタイムラグによる納税者の負担感

現年課税化とは、所得発生分の税負担について、時間的間隔を置かず、その年分の所得を基に決定し、徴収すること。
現在、所得税については所得が発生した年に課税・納税を行う「現年課税」であるのに対し、地方税である個人住民税については前年の所得を基準として翌年度に課税する「翌年課税」を採用している。しかし、所得発生と課税・納税のタイムラグによる納税者の負担感を指摘する声は多く、とくに近年、安定した収入が確保できる終身雇用制度から働き方の多様化が進み必ずしも収入が一定とは限らなくなっていること、またコロナ禍の影響で解雇や仕事の減少等により収入が激減するケースが増えていることなどから、住民税の現年課税化を求める声は急速に高まっている。

事務負担や切替年度の対応など繊細なテーマが山積

個人住民税の現年課税化についてはかねてより検討が重ねられているところだが、主な検討課題となっているのが導入に伴う事務負担増。令和5年度の検討会では、「企業における源泉徴収や年末調整に係る実情等も踏まえつつ、行政手続きや企業事務のデジタル化の更なる進展を見据えて関係者の事務負担を軽減する手法を模索し、どのような技術的な対応が必要なのかといった実務的な面を引き続き検討していく必要がある」とされ、国税庁においては確定申告に必要なデータを、マイナポータル等を通じて申告データに自動で取り込む仕組みの整備が進められていることを念頭に、この仕組みを活用することで地方税においても所得の捕捉の即時化等を進めていける可能性があるとの意見も出ている。また徴税方式としては、所得税方式と市町村精算方式の二案が検討されている。
同検討会ではこうした議論を踏まえた上で、令和6年度においては、企業における所得税及び個人住民税の関連事務について、①現在どのように運用されているか、②各企業にとってどの程度の負荷となっているのか、③個人住民税の現年課税化について実務上どのような点が課題となり得るか、等についての実情を把握することとし、個人住民税の現年課税化について構成員からの意見、検討案などの整理を行っていくこととしている。
事務負担や切替年度の対応など繊細なテーマが山積しているだけに慎重を期して進められている現年課税化。事務負担軽減などテクニカルな問題も大事だが、税負担を負う納税者だ。死活問題にも繋がりかねないだけに、今後の議論に注目が集まる。

個人住民税「現年課税化」の議論大詰め

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