最終更新日:2026-01-15

令和8年税制改正 「178万円の壁」時代にパート主婦はどこまで働くべきか 所得税・住民税・社会保険、3つの負担を踏まえた新・正解ライン

  • 2026/01/15
令和8年税制改正 「178万円の壁」時代にパート主婦はどこまで働くべきか 所得税・住民税・社会保険、3つの負担を踏まえた新・正解ライン

2025年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱によれば令和8年度から、所得税の非課税ラインが「178万円」へと引き上げられる見通しだ。税制改正により、パート主婦の手取り環境は大きく改善する。しかし、住民税の課税ラインや社会保険料の負担は引き続き残り、パート主婦からは「いったいいくらまでなら損しないの?」との声が聞こえてくる。税制改正で余計に複雑になったパート主婦の手取り問題について、所得税・住民税・社会保険の3つの負担を整理し、新時代の「正解ライン」を読み解く。

(編集長=宮口貴志)


パート主婦が直面する「3つの壁」

年末になると税制改正論議になり、友人・知人の奥さんから「一体、いくらまでパートしていいの?」と質問されることが多い。令和8年度税制改正大綱でも所得税の非課税ラインが「178万円」まで引き上げられる趣旨が盛り込まれたが、「社会保険も影響してくるでしょう。住民税だってかかるじゃない」と、複雑化する税制に右往左往している。個人的な見方だが、政治家の多くが理解してないのではないだろうか。税制は複雑になっているので、そこに携わるのはごく一部の政治家。それも税制改正大綱をまとめるにあたっては、制度設計が細かくなるため、お役人の力も借りながら、何とか理屈の通る税制にまとめ上げていく。一般の人から見たら、なかなか理解できない内容になっているのが税制といえる。

それも、税金は国税だけでなく、地方税の「住民税」もあれば、パート主婦となれば「社会保険」も絡んでくるのだから、「もっとシンプルにして!」と言う声もごもっともだと思っている。

なので、コラムと言いつつ、令和8年度以降の働き方の目安となる金額について、ざっくり整理してみた。

パート主婦の壁は3つ

住民税の壁(年収105万〜110万円前後)

 令和8年度税制改正により、所得税の非課税ラインは178万円まで引き上げられる予定だが、住民税の非課税ラインはそこまで拡大しない。

 住民税の非課税ラインは自治体ごとに異なるものの、令和8年度改正により多くの自治体で年収105万〜110万円前後に引き上げられる見込みだ。ただし、このラインを超えると均等割(年5000円前後)が発生し、さらに所得が増えると所得割(約10%)も課税される。

そのため、今年(2026年)以降は「所得税はゼロだが住民税だけ払う」期間が長く続く構造になる。

② 社会保険の壁は「撤廃」へ――年収要件が消滅

これまでパート主婦の働き方を縛ってきた「106万円の壁」は、2026年10月に撤廃される。今後は年収がいくらであるかに関係なく、次の条件を満たせば社会保険への加入が義務化される。

・週の所定労働時間が20時間以上

・学生でないこと

・2か月を超える雇用見込みがあること

つまり、「いくら稼ぐか」ではなく「どれだけ働くか」が社会保険加入の基準となる。

社会保険料の本人負担は年収の約15%前後(40歳以上で介護保険料込みの場合は約15.5%前後)にのぼり、今後は多くのパート主婦がこの負担を避けられなくなる。

③ 178万円の壁(所得税の新基準)

2025年12月に取りまとめられた令和8年度与党税制改正大綱により、所得税の非課税ラインは178万円まで引き上げられる。

2026年以降は、「年収178万円以下であれば所得税はゼロ」いう新たな基準がスタートする。

社会保険「完全義務化」へのロードマップ

社会保険の適用拡大は、賃金要件だけでなく企業規模要件についても段階的に進められる。

■ 今後のスケジュール

2026年10月  賃金要件(106万円の壁)撤廃。週20時間以上働けば年収に関係なく社保加入義務化

2027年10月  企業規模要件の縮小開始。従業員36人以上の企業も対象

2029年10月  個人事業所の拡大。5人以上の個人事業所(全業種)が対象

2035年10月  企業規模要件の完全廃止。従業員1人以上のすべての企業が対象

これにより、2035年以降はほぼすべてのパート労働者が社会保険加入の対象となる。

「所得税ゼロ」でも手取りが減る逆転現象

新制度下で注意すべきなのは、「所得税はゼロでも、住民税と社会保険料で手取りが削られる」構造だ。

 例えば、年収150万円まで働いた場合の標準モデルでは、

所得税:0円(178万円以下のため)

住民税:約3万円前後

社会保険料(本人負担):約11〜12万円前後

 合計で15万円前後の負担が生じ、手取りは約134万円程度となる。

かつてのように「130万円未満に抑える」という選択肢は、社会保険完全義務化により徐々に消えていく。

2026年以降の「正解ライン」は二極化から一本化へ

従来は、

・扶養内にとどまる層

・社会保険に加入してしっかり稼ぐ層

という二極化が主流だった。しかし、2026年以降は社会保険の完全義務化が進むことで、「扶養内調整」という選択肢自体が縮小していく。

その結果、合理的な戦略は次の一本に集約される。

新・正解ラインとは?

・社会保険加入は前提

・週20時間以上働くなら「150万〜178万円ゾーン」を最大活用

・所得税ゼロの恩恵をフルに使い切る

年収ゾーン別の実務目安(2026年10月以降)

年収ゾーン別の実務目安(2026年10月以降)

上記の図表からも分かるように、これからのパート主婦は「稼ぎ切る設計」が必須になるのではないか。令和8年度税制改正により「178万円の壁」はパート主婦にとって追い風となるものの、社会保険制度は完全義務化へと舵を切り、「壁を避ける働き方」は制度上成立しなくなるからだ。

よって、筆者は2026年以降の基本戦略として、週20時間以上働くなら社会保険加入は前提なので、「150万〜178万円ゾーン」を最大活用することだと思う。中途半端な調整は最も損になりやすいと言える。今後の働き方は、「いくら稼ぐか」ではなく「制度をどう使い切るか」が問われる時代になるのではないか。

クローズアップインタビュー

会計業界をはじめ関連する企業や団体などのキーマンを取材し、インタビュー形式で紹介します。

税界よもやま話

元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。