最終更新日:2023-03-20
国税庁が税理士制度Q&A更新 2カ所事務所の基準示す
- 2023/03/20
執筆者
宮口 貴志
KaikeiBizline論説委員兼編集委員
税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
令和4年度税制改正には、税理士制度の見直しが盛り込まれている。なかでも関心が高いのが「事務所設置規定の見直し(物理的な事務所判定基準の撤廃)」だ。令和5年4月1日から施行されることが決まっており、国税庁ではこのほど、「税理士制度のQ&A」を更新している。税理士は2カ所事務所がNGだが、Q&Aでは、2カ所事務所の判断基準が示されている。
税理士事務所の基本的な考え方とは
令和4年度税制改正に伴う税理士制度の見直しを受けて、税理士基本通達が見直されている。それによると、税理士事務所の考え方については、従来は「継続的に税理士業務を執行する場所をいい、継続的に税理士業務を執行する場所であるかどうかは、外部に対する表示の有無、設備の状況、使用人の有無等の客観的事実によって判定するものとする」とされてきた。
しかし、4年度改正を受けて、現在は、「法第 40 条第1項に規定する『税理士業務を行うための事務所』とは、税理士業務の本拠をいい、税理士業務の本拠であるかどうかは、委嘱者等に示す連絡先など外部に対する表示に係る客観的事実によって判定するものとする。この場合において、「外部に対する表示」には、看板等物理的な表示やウェブサイトへの連絡先の掲載のほか、契約書等への連絡先の記載などが含まれることに留意する」とされた。
この点、更新された税理士制度Q&Aでは、「税理士業務を行うための事務所」について、税理士業務の本拠をいい、税理士業務の本拠であるかどうかは、委嘱者等に示す連絡先など外部に対する表示に係る客観的事実によって判定することになると解説している。そして、「外部に対する表示」については、「例えば、看板等物理的な表示、ウェブサイトへの表示、契約書等への記載などが含まれる」としている。
二ヶ所事務所には当たらない定義とは
また、税理士業務の本拠については、税理士等が自らの管理下とする場所とし、外部に対する表示が行われた場所としているのは、行政庁・税理士会の指導、連絡及び監督の適切な実施や顧客の不測の損害を防止する観点から、法律関係を明確にする必要があるとしており、住所借りや実態のない事務所の登録を認めるものではないとしている。また、自らの管理下であっても、外部に対する表示がなされていない場合は、本拠には該当しないと解説している。
このほか、税理士は二カ所の事務所を設けてはならないとされているが、この点通達では「法第 40 条第3項の『税理士事務所を二以上設けて』いる場合とは、例えば、自宅以外の場所に税理士事務所を設け、40-1の『外部に対する表示』をしている状態で、自宅においても 40-1の『外部に対する表示』をして税理士業務を行っている場合などをいう。したがって、自宅等の税理士事務所以外の場所で税理士業務を行っていても、その場所に 40-1の『外部に対する表示』に係る客観的事実がなく、法第 40 条第1項に規定する『税理士業務を行うための事務所』と判定される状態でない場合には、税理士事務所を二以上設けている場合には該当しない」と見直されている。
この2カ所事務所の考え方についてQ&Aでは、本拠となる事務所以外の場所において、税理士や税理士事務所の使用人等が税理士の業務等を行っていたとしても、税理士事務所としての外部に対する表示がなければ、二ヶ所事務所には当たらないとしている。
理由としては、「税理士事務所を二以上設けて」いる場合とは、例えば、自宅以外の場所に税理士事務所を設け、基通 40-1の「外部に対する表示」をしている状態で、自宅においても基通 40-1の「外部に対する表示」をして税理士業務を行っている場合などが該当するとしている。
二カ所事務所と判定されれば処分も
したがって、自宅等の税理士事務所以外の場所で税理士業務を行っていても、その場所についての外部に対する表示がない場合には、二ヶ所事務所には当たらないと解説。「外部に対する表示」については、看板等物理的な表示やウェブサイトへの連絡先の掲載のほか、契約書等への連絡先の記載などが含まれ(基通 40-1)、本拠となる事務所以外の場所について税理士事務所と誤認されるおそれのある外部に対する表示をしている場合には、その場所は税理士事務所と判定され、二ヶ所事務所に該当することになると説明している。例えば、「○○○税理士事務所□□□分室」、「○○○税理士事務所□□□オフィス」など税理士事務所と誤認されるおそれのある表示だ。
二カ所事務所と判定された場合の処分については、Q&Aの問6-29に記載されており、「この場合の懲戒処分の量定は、法第 46 条及び告示の規定に基づき、戒告、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止」となる。
税理士の二カ所事務所問題は、パソコンとネットワーク技術の発展でかなり前から指摘されていたが、コロナ禍におけるテレワークで一気に環境が一変した。会計事務所においても新たな働き方が模索されている中、税理士事務所の本拠、二カ所事務所を正しく解釈し、次世代の事務所づくりに活かしたい。
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税界よもやま話
元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。