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    最終更新日:2021-03-26

    税理士情報フォーラム2010 税理士事務所IT化コンテストで最優秀賞を受賞

    • 2010/11/15
    • 2021/03/26
    理士情報フォーラム2010 税理士事務所IT化コンテストで最優秀賞を受賞

    安田信彦氏
    安田会計事務所 所長・税理士

    「お金を掛けずに出来る事務所のIT化をすべてお見せします」

    さきごろ、東京税理士会館(東京・渋谷区)開催された税理士情報フォーラム2010(東京会情報システム委員会、東京会データ通信協同組合・税理士情報ネットワーク東京ユーザー会共催)。
    メイン企画の「税理士事務所IT化コンテスト」には150名ほどの会場が終日満員で、大いに注目を集めた。
    目的は、税理士会員同士がアイデアを交換し合い、相互に協力して税理士業界のIT化を促進することにある。
    そこで、見事、最優秀賞に輝いた安田信彦氏(東京・中央区)にインタビューした。

    まず、コンテストに優勝された率直な感想を聞かせてください。

    正直ビックリしましたが、本当に嬉しい限りです。
    コンテストを知ってすぐに応募しましたところ、申込み順にプレゼン発表するとのことで、午前10時20分からの一番バッターとなってしまい、持ち時間は僅か20分間しかないので、わかりやすく伝わるのだろうかと不安でした。
    当日は、「お金を掛けずにココまで出来る事務所のIT化」をテーマに10項目にポイントを絞り、「気に入った項目をどれから使っても結構です」、という方向性のプレゼン資料で望みましたが、事務所でやっていることはきっと受け入れられるだろうと内心は思っていました。

    どこが評価されたと思いますか。

    税理士事務所をIT化するためには時間とお金が掛かります。
    そこで、安価で安心、そして事務所で既に利用しているものを選んで紹介しました。
    情報化が進展し、電子申告が普及する中で、気にいったものがあればどうぞチャレンジしてみてください。
    とにかくIT化の一歩を踏み出してください、というスタンスが参加者らの共感を得たのだろうと思います。
    初めての企画でこれだけ関心を集めたのですから、今後に期待したいです。

    事務所は究極のペーパーレス化が図られているそうですね。

    父親の代から40年以上に渡って蓄積された膨大な顧問先の資料などを何とかして効率よく整理・保管したいと考えていた時、2003年に富士ゼロックスの文書管理ソフト「DocuWorks」(ドキュワークス)と効率アップのための複合機を一緒に活用したことがペーパーレス化の始まりでした。
    しかしながら、業務で使用する会計ソフトと「DocuWorks」を1つの画面の中で交互に頻繁に切り替えるのは、あまり効率的な使い方だとは思わなかったので、複数のディスプレイで同時に使用する手法を導入。
    でも、当初は失敗の連続で試行錯誤を繰り返し行った結果、ようやくストレスを感じずに、業務の効率化を図ることができたわけです。
    それによって、無駄な紙は使わないように書類をデジタル保存し、効率的で環境にも優しい事務所のIT化を進めることができました。
    ペーパーレス入門時の構築費用については、パソコン本体を除いて、およそ10万円程度見ていれば十分です。

    「ペーパーレス事務所の見学会を毎月開催して情報をオープンにしています」

    事務所における会計書類等の電子化・共有システムの運用について教えてください。

    顧問先とのやり取りや紙文書はその場で携帯スキャナーで取込み、「DocuWorks」を使って電子文書の一元管理を図ります。
    取り込んだ電子データはストレージサーバーに保管され、情報共有化と同時にバックアップ体制も確立させています。
    統一したルールでファイリングされたデータを管理しているため、書類の取り出し時間は全くかかりません。
    こうしたペーパーレス化を完全に進めようとすると、データの保全やバックアップが重要課題となります。
    そのため、事務所では家電ではなくプロユースの保全システムと、ウイルス対策としての「Beat」を導入することで徹底したセキュリティ強化を図っています。

    そうした事務所の導入ノウハウは、コンテストのプレゼン資料に活かされているわけですね。

    はい。少ない投資で最大限の効果を上げるための手法とツールを紹介しました。
    所長や職員のスケジュール管理やメールをどこでも確認したかったら「Googleカレンダー」や「Gmail」。
    請求書作成、源泉納付日、従業員の誕生日など、忘れてはいけないスケジュール管理をしたい。相続税などの申告で長期のスケジュール管理をしたい。
    所内で情報の共有化を図るため、フリーの監視ソフトの活用、出先や突発的な事があって、事務所のパソコンをリモート操作したい。
    会計マスターを顧問先と共有したい。
    顧問先とのコミュニケーションを取るためにテレビ電話で会話したい・・・など、ITをもっと身近にするツールの利用について、当日のレジメを無料冊子化して提供しています。

    事務所のIT化で何が最大のポイントになるのでしょうか。

    安田会計事務所 所長・税理士
安田信彦氏

    一言で言えば、基本はIT化を人任せにしないことです。
    仮にどうしても人に任せるのであれば、担当者を2人付けて、問題点や進捗状況について、情報を共有化する必要があります。
    過去に自分の事務所を人任せにしてしまった自らの失敗が教訓になっています。

     

    事務所の見学会を開催されているそうですね。

    税理士業務の電子化でペーパーレス化を実現したオフィスの見学会を毎月開いており、15名程度参加される場合もあります。
    2時間で、きっと目から鱗状態になりますよ。
    ペーパーレスのためのホームページ(http://paperless-office.jp/)も開設しましたので、一度覗いてみてください。

    税理士業界のIT化についての評価はいかがですか。

    厳しい見方かもしれませんが、恐らく税理士は今後、現在の10%程度しか残らないのではないでしょうか。
    これまで、顧問先等から見て、事務所を差別化する明確なファクターは見当たりませんでしたが、エポックが「電子申告」なのです。
    現在、NTTデータ社が開発した「Zaimon」に乗って金融機関が電子申告によって会社の決算データを受け付けています。
    この仕組みでデータを送信すると融資利息が優遇されるメリットがあり、この優遇策が納税者側に浸透すれば、会計事務所として電子申告を受け入れざるを得なくなってきます。そうした状況になっても、電子申告に関心を持たなければ、顧問先からもソッポを向かれるでしょう。
    もちろん、当事務所は電子申告を100%導入済みですが、他の会計事務所もすでに、インフラは整っているはずなのですが・・・。

    最後にメッセーをどうぞ。

    まずはこのインターネットの世界にチャレンジしてみてください。
    サポートしてくれる仲間はたくさんおります。
    コンテストでは、13人の会員がそれぞれすばらしい内容で発表されていましたが、こうした機会をもっと多くの会員に知ってもらい、税理士業界のIT化推進の原動力につながれば良いと思っています。

    安田会計事務所 所長・税理士
    安田信彦氏