最終更新日:2021-03-26
「デジタルとアナログ」融合による記帳自動化の大変革
- 2017/12/11
- 2021/03/26
先日マザーズ上場で話題を集めた(株)マネーフォワード(東京・港区、代表取締役社長CEO=辻庸介氏)が、今度は、クラウド記帳ソフト「STREAMED(ストリームド)」を提供する(株)クラビス(東京・新宿区、代表取締役=菅藤達也氏)の全株式を取得し、グループ会社化するとの発表が、会計業界内に衝撃を与えている。企業のバックオフィス業務の効率化を支援する「MFクラウド」シリーズを持つマネーフォワードの強みは、「デジタルデータを活用した記帳業務」。「アナログデータの記帳自動化」を売りにするクラビスと連携することで、記帳処理の自動化分野での新たなイノベーションに期待が寄せられている。そこで、菅藤代表とマネーフォワード執行役員でMFクラウドサービスの責任者でもある山田一也氏に、今後の目指す方向性などについて聞いてみた。
「記帳入力作業のほぼ100%自動化にメドがついた」
(山田氏 写真左)
「連携で進化する“会計AIサービス”普及に弾み」
(菅藤氏 写真右)
―そもそも、どのような経緯で今回の提携に至ったのでしょうか?
デジタルデータでないとクラウド会計の強みが活かせない
菅藤 もともと、顧客である会計事務所から、両社が持つ記帳処理技術の長所を重ねたサービスがあればベストなのに……、といった声を頂いていました。ならば、顧客サイドに立ってより良いサービスを構築していこうと辻社長とディスカッションをし、MFクラウドサービスの開発責任者でもあるマネーフォワード執行役員の山田一也氏に加わってもらい、具体的な検討をしました。お互いのサービス作りに対する価値観が同じだったこともあり、実にテンポよく進展しました。
山田 マネーフォワードとしては、ネットバンクなどのデジタルデータの取り込みには絶対の自信はあった。でも、会計事務所はどうしても紙の領収書や請求書からの仕訳が中心になり、それが最大のネックになっていました。つまり、デジタルデータでないと、「クラウド会計」の強みが活かせないわけで、正直なところ、クラビスが持つ「アナログデータを記帳自動化」するシステムには以前からとても関心がありました。
―確か、マネーフォワードもクラビスと同様なサービスを提供されていましたね。
山田 はい。社内でシステム構築していくという流れのなかで、「MFクラウド会計」のオプションサービスとして昨年夏に提供しました。ただ、残念ながら機能不足などの理由から、満足頂けるレベルの業務効率化は達成できませんでした。そこで、クラビスのシステムと連携できないかという話になりました。両社の強みを活かしたサービス開発を共同で行うことのメリットは図り知れない。お互いにユーザーの課題解決に向けて、同じベクトルで共同歩調をとることで生まれるシナジー効果によって、短期間に実現できるものと確信しました。
菅藤 お互いの資産や強みが「1+1」の足し算ではなく、むしろ掛け算といった感じで拡がっていく感じがします。普通でしたら、業務提携の後に資本提携というプロセスを踏むのが一般的ですが、スピード感を重視して一気に子会社化となりました。
既存、新規顧客の意見を聴取し、サービスのあり方を模索
―今回の子会社化で今後のクラビスの活動については。
菅藤 紙をスキャンするだけで業務改革が実現できるサービスとして「STREAMED」を2014年から提供してきました。領収書・請求書・預金通帳などをスキャナで読み取り、スピードと正確性を両立させた独自の仕組みにより1営業日で証憑から仕訳データを生成します。原始証憑等を外部に出さずに入力したい会計事務所にメリットを感じていただき、現在、「STREAMED」の登録ユーザーは全国で約500会計事務所。顧客サービスの提供やフォローを最優先に、営業や開発の活動はむしろ加速していこうと考えています。また、グループ化による今後の活動については、既存および新規顧客の意見を聞きながら、互いのサービスのあり方などを模索していこうと考えています。
山田 マネーフォワードが目指す成長戦略を加速させるためにも、経営戦略会議にも加わっていただき、今後の方向性を協議していきます。
菅藤 クラビスとしては、現時点では商品開発はともかく、営業面がウイークポイントでした。会計事務所向けに、AIや記帳の生産性向上を切り口として精力的にセミナー等を開催して営業活動をしてきましたが、集客はできても遠方の事務所への直接訪問といった営業面のフォローはなかなか難しいため、電話やWEB会議で対応していました。その点、全国で顧客サポートを展開できるマネーフォワードの営業力は魅力的でした。
相乗効果を生み出す理想的な補完関係が誕生
―クラビスは、会計事務所のロボット記帳「STREAMED」といったキャッチフレーズで、AI(人工知能)を意識された活動を展開されていますね。
菅藤 はい。今後、会計士・税理士の仕事がAIに置き変わっていくという風潮がありますが、そうではなく、AIを味方にするのだといった発想の転換が求められてくるでしょう。そのためには、AIについて漠然と不安視するのではなく、より具体的に知ることが大事で、それをお伝えするのが私たちの役目だと思っています。当社のセミナーでは実際のデモをご覧いただきながら、現在どこまでAI化が出来ていて、どこまではできていないのか具体的にご説明しています。そうすることで、AIによって自動化される業務と、付加価値として更に求められる業務が鮮明にイメージ頂けるようになると思っています。これからの会計業界におけるAI化の流れを想定すると、記帳分野やバックオフィス業務が大きく様変わりしていきます。その時代をリードするのが、「M F クラウド」と「STREAMED」の連携によって進化する「会計AIサービス」です。
―両社の強みを活かした相乗効果は期待できそうですか。
山田 はい。アナログのデジタルデータ化による記帳業務の自動化はもちろん、仕訳入力業務の大幅な効率化を実現させる新たな業務フローも提供できるでしょう。会計事務所や企業が行う記帳業務の完全自動化を目指す当社としても、これで「MFクラウド会計」の入力がほぼ100%自動になるメドが付いた格好ですね。
―具体的にグループ会社化によって実現するサービスとは?
菅藤 クラウド会計の普及が加速すれば、記帳業務の自動化を実現する最高のクラウド会計サービスが生まれるだろうと思っています。とはいえ、当社もマネーフォワードも大事にしているのが顧客の生産性向上に加えて付加価値向上に役立つことです。今まで通りにお客様を訪問して意見を伺いながら、来春にはセミナー等を通じてサービスの進化について公表していきいと考えています。
山田 現在、約2,500会計事務所で「MFクラウド会計」が使われています。その一方、「STREAMED」は会計ソフトではないので、事務所において既存の会計ソフトを入れ替える必要がありません。その点、事務所で導入しやすいのが最大の特徴で、両社のサービス、顧客基盤、そしてテクノロジーは相乗効果を生み出す理想的な補完関係にあるのではないでしょうか。
(株)マネーフォワード執行役員MFクラウドサービス開発本部
本部長 山田一也氏
(株)クラビス代表取締役 菅藤達也氏
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税界よもやま話
元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。