最終更新日:2025-09-08

石破首相の辞任で次期首相は誰が有力!? 令和8年度税制改正の行方に迫る

  • 2025/09/08
石破首相の辞任で次期首相は誰が有力⁉ 令和8年度税制改正の行方に迫る

9月7日、石破茂首相が突然辞任を表明し、政界に大きな波紋を広げた。自民党は臨時総裁選の実施を決定し、9月22日告示・10月4日投開票という日程で調整を進めている。今回は「フルスペック方式」、すなわち党員・党友の投票を伴う本格的な選挙となる見込みだ。

8日には茂木敏充前幹事長(69)が出馬の意向を正式に表明。林芳正官房長官(64)も立候補の意向を固めており、小林鷹之元経済安全保障担当相(50)は出馬を検討中とされる。いずれも党内で一定の支持基盤を持つが、筆者個人の見方として最も現実的な次期総裁には林氏ではないかと感じている。

林氏と言えば、宏池会系の穏健派で、財務・税制分野に精通した制度設計型の政治家である。外交・財政・地方創生といった分野でも安定感があり、少数与党体制下でも野党との協調を図りながら着実な政策遂行が可能と見られている。とりわけ、令和8年度税制改正の方向性において、林氏の手腕が問われる局面が多いのではないかと思う。

令和8年度税制改正に向けて、各府省庁から提出された要望には、財源制約の中でも実現可能性の高い改正案が並ぶ。林氏が総裁となった場合、以下のような制度設計型の税制改正が現実味を帯びてくるだろう。

まず注目すべきは、事業承継税制の恒久化と要件緩和である。中小企業の後継者不足が深刻化する中、現行制度の期限延長や適用要件の簡素化は、地方経済の持続性を支える重要な施策となる。林氏は地方創生に理解が深く、自治体との連携強化にも積極的であるため、こうした改正には強い推進力を持つ。

次に、投資促進税制の創設が挙げられる。高付加価値設備への投資を促す新制度として、内部留保の活用や賃上げ連動型の設計が検討されている。これは、企業の成長と雇用の安定を両立させる狙いがあり、財務省との協調のもとで制度化が進む可能性が高い。

さらに、暗号資産課税の見直しも令和8年度税制改正の焦点となる。分離課税の導入や損益通算の検討など、個人投資家への対応強化が求められており、税務実務にも大きな影響を与える分野だ。会計事務所としては、顧問先の資産管理や申告支援において、制度変更への迅速な対応が不可欠となる。

加えて、研究開発税制の拡充・延長も重要な論点だ。科学技術投資の促進と国内産業基盤の強化を目的とした優遇措置は、製造業やIT企業を中心に広く活用されており、制度の安定化が期待される。

これらの改正は、会計事務所が支援する中小企業や資産家層にとって、直接的な影響を持つ。とくに、事業承継税制の恒久化は、経営者層への提案機会を広げ、顧問契約の質的向上にもつながる。また、投資促進税制や暗号資産課税の見直しは、税務戦略の再構築を迫るものであり、専門的な知見とタイムリーな情報提供が求められる。

会計事務所業界としては、政局の動向を注視しつつ、制度改正の方向性を見極め、顧問先への戦略的提案を準備することが重要だ。税制は単なる財政技術ではなく、経済の方向性と国民の生活に直結する制度である。その改正には、政治的な胆力と制度的な緻密さが必要であり、林氏のような実務型リーダーの登場は、業界にとっても安定的な環境をもたらす可能性がある。

とはいえ、総裁選の構図は流動的だ。小泉進次郎氏や高市早苗氏の出馬も取り沙汰されており、今後の展開次第では政策の方向性が大きく変わる可能性がある。

小泉氏は環境・子育て支援に力を入れる可能性が高く、象徴的な税制改革として住宅ローン控除の再設計や保育関連控除の拡充を打ち出す可能性がある。一方、高市氏は保守層に強く、防衛財源や経済安保関連の税制強化に動く可能性が高い。これらの政策は、業界にとっても新たな対応領域を生むことになる。

総裁選は、単なる党内人事ではなく、税制・財政・経済運営の方向性を決定づける重要な分岐点である。会計事務所業界としては、候補者の政策スタンスを冷静に分析し、顧問先のニーズに応じた対応戦略を構築する必要がある。

(*KaikeiBizelieでは、今後も政局と税制改正の動向を注視し、業界に必要な情報をタイムリーに発信してまいります。制度の変化をチャンスに変えるために、私たちは常に先を読み、情報提供していきます)

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元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。