最終更新日:2025-10-03

KaikeiBizLine×丸善リサーチ お勧め書籍 令和7年版 税理士業務の“ヒヤリ”を未然に防ぐための3つの視点

  • 2025/10/02
  • 2025/10/03
KaikeiBizLine×丸善リサーチ お勧め書籍 令和7年版 税理士業務の“ヒヤリ”を未然に防ぐための3つの視点

なぜ“ヒヤリ”は繰り返されるのか 繁忙期に潜む見落としのリスク

税理士の業務は、申告や届出といった「期日が決まっている」仕事が多く、繁忙期には作業が立て込みやすいのが特徴です。そのなかで制度改正や顧客事情を見落とすと、思わぬ“ヒヤリ”が生じます。

  • 年末調整で基礎控除額が最新改正に沿っていない計算をしてしまった
  • 消費税インボイス制度対応で仕入税額控除の判定を誤った
  • 相続税申告で小規模宅地の要件確認を忘れた

こうした事例は「誰にでも起こり得ること」でありながら、顧客の信頼を揺るがす重大なリスクです。令和7年度は税制改正項目も多く、例年以上に“ヒヤリ”が起きやすい年といえます。

改正への敏感さ ― 最新制度を業務に落とし込む

所得税基礎控除の大幅改正に注意

令和7年度税制改正では、所得税の基礎控除が大きく変更されました。

  • 基礎控除額の引上げ
  • 給与所得控除額の引上げ
  • 「特定親族特別控除」の新設

いずれも年末調整の源泉徴収の計算に直結し、旧制度のまま処理してしまうリスクが高い部分です。

実務での対応策

  • チェックリスト更新:令和7年度税制改正の施行は12月1日からのため、11月末までと12月1日以降では処理方法が違う。例えば、年末調整では12月以後の源泉徴収事務で変更あり(11月までの源泉徴収事務には変更はなし)。そのため「基礎控除額を確認したか」「特定親族の有無を確認したか」などを必ず項目化。
  • 給与計算ソフトの検証:バージョンアップが改正に追随しているか確認し、テストデータで試算。
  • 顧客説明の標準化:制度改正を説明する資料を事務所で統一し、担当者間の説明のバラつきを防ぐ。

業務フローの定期的な見直し ― “慣れ”が最大の敵

定型業務ほど要注意

税務のルーティンワークは、慣れているからこそ抜けやすい落とし穴があります。

  • 年末調整:扶養控除等申告書などのチェックが人によって甘くなり、誤りが見逃される
  • 消費税処理:勘定科目の振替仕訳における消費税自動計上ミス
  • 相続税申告:相続財産の正確な確認をしていない(名義預金など)

実務での対応策

  • 業務フロー図を年1回更新:改正や過去の“ヒヤリ”を反映した最新版を共有。
  • 二重チェックを徹底:インボイスや相続税など複雑な案件は必ず別担当が再確認。
  • 事務所内の教育で活用:過去の“失敗例と回避法”を教材化し、理解度を高める。

所内での情報共有 ― 失敗を次につなげる仕組み

個人の気づきを組織の知恵に

個人が経験した“ヒヤリ”を事務所全体で共有できなければ、同じミスが繰り返されます。

例えば、現在、インボイスの特例期間中で免税事業者からの仕入れについては8割控除できるところを誤って控除しなかった事例。担当者だけの反省に留めるのではなく、所内で共有することで初めて再発防止につながります。

実務での対応策

  • 定例会議で「今週のヒヤリ」を報告:1〜2分で済む短時間共有を習慣化。
  • データベース化:“ヒヤリ事例カード”を記録し、検索できる形で蓄積。
  • 成功例とセットで共有:失敗談だけでなく「こう改善したら防げた」という事例も残す。

解決策のヒント:『税理士業務のヒヤリハット』シリーズ

実務で役立つ“ヒヤリ”の集積

こうした「実務で本当に起きたヒヤリ」を体系的に整理したのが、ぎょうせいの『こんなところに落とし穴!税理士業務のヒヤリハット』シリーズです。

いずれも原因と防止策が事例形式で解説され、所内研修や新人教育に適しています。

さらに、丸善リサーチでは第1〜3巻が電子版で掲載されており、検索・閲覧しながら活用可能です。最新の第4巻は紙版で刊行されており、電子と紙を組み合わせることで「過去の典型事例+直近の改正対応」を幅広く学ぶことができます。

令和7年税制改正で特に注意すべき“ヒヤリ”の芽をつぶす

制度改正の理解不足が最大のリスク

令和7年度は、以下のように実務へ直結する改正が相次ぎます。

  • 基礎控除・給与所得控除額の引上げ
  • 特定親族特別控除の新設
  • 相続・贈与税の見直し(生前贈与加算が3年から7年に)
  • インボイスの8割特例、仕入税額控除の厳格化

  (*基礎控除・給与所得控除、特定親族控除とかぶっているためカットで良いと思います)

いずれも誤解や見落としが“ヒヤリ”に直結しやすい論点です。

今年徹底すべき3つの行動

  • 改正内容を業務チェックリストに反映する
  • ソフトやマニュアルを最新化する
  • 改正事例を所内で共有し、疑問を放置しない

令和7年は年末調整や令和8年の確定申告に直結する改正が多く、“ヒヤリ”が増える年です。小さな見落としを未然に防ぎ、顧客の信頼を守るためにも、気づきの共有と業務フローの鮮度維持が欠かせません。そして、『ヒヤリハット』シリーズのような体系的資料を活用することで、個人の経験値を組織全体の知恵へと昇華できるでしょう。

(執筆:丸善リサーチ 戸田風香) 

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元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。