最終更新日:2026-01-29
8年度税制改正 住宅ローン控除の新常識 省エネ未達の新築は対象外、中古優遇へ大転換
- 2026/01/30
- 2026/01/29
令和8年度税制改正大綱によれば、住宅ローン控除は「延長」だけでなく制度の軸足が大きく転換される。ポイントは、中古住宅と省エネ性能の高い住宅を強力に後押しする一方、省エネ基準にとどまる新築住宅を段階的に切り捨てる点だ。特に注目されるのが、既存住宅の控除期間が13年へ拡大されること。そして令和10年以降は新築の「省エネ基準適合住宅」が原則として控除対象外となることだ。住宅購入を検討する人にとって、物件の「新しさ」よりも「性能」と「立地」が税負担を左右する時代が到来する。
1.住宅ローン控除は5年延長、ただし「中身」は大転換
住宅ローン控除の適用期限は5年間延長されるが、単なる延長ではない。政府は住宅政策の方向性を「新築偏重」から「ストック重視」へと明確に切り替えた。
狙いは次の2点
・ 既存住宅(中古住宅)の流通促進
・ 住宅分野における脱炭素の加速
その結果、税制上の優遇は「中古+省エネ」に集中する。
2.既存住宅(中古)が主役に――控除期間13年へ
省エネ基準に適合する既存住宅については、住宅ローン控除の適用期間が10年から13年へ拡大する。控除期間が3年伸びることで、総控除額は大きく増える。さらに、認定長期優良住宅やZEH水準の既存住宅については、借入限度額が引き上げられる。
3.子育て世帯・若夫婦世帯は中古でも上乗せ
次のいずれかに該当する世帯は、借入限度額の上乗せ措置を受けられる。
- 19歳未満の子を有する世帯
- 夫婦のいずれかが40歳未満の世帯
これまで上乗せの中心は新築だったが、既存住宅でも適用される点が大きな変更点だ。
「中古を買ってリフォーム」という選択肢が、税制面でも有利になる。
4.新築住宅は“ZEH以上”が事実上の最低条件
新築住宅については、最低ランクである「省エネ基準適合住宅」の扱いが厳しくなる。
- 令和8年:借入限度額を引き下げ
- 令和10年以降:原則として控除対象外
つまり、令和10年以降に入居する新築住宅で住宅ローン控除を受けるには、ZEH水準以上が事実上の必須条件となる。
将来、建築基準上の省エネ基準は令和12年度にZEH水準へ引き上げ予定だが、税制はそれより先行して厳格化される。
5、ZEH水準とは?――「エネルギー収支ゼロ」を目指す省エネ住宅
ZEH(ゼッチ)とは「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略で、1年間に住宅で消費するエネルギー量と、太陽光発電などで創り出すエネルギー量を差し引きすると“実質ゼロ”になる住宅を指すというもの。
簡単に言ってしまえば、ポイントは3つ。
① 断熱性能が高い
壁・天井・床・窓などの断熱性能を大幅に高め、外気の影響を受けにくくする。夏は涼しく、冬は暖かい。冷暖房に使う電気・ガスが少なくて済む。つまり、「エネルギーをムダにしない家」である。
② 省エネ設備を使う
エアコン、給湯器、照明などに高効率な機器を採用する。
例: 高効率エアコン、エコキュートなどの省エネ給湯器、LED照明
これにより、住宅全体の消費エネルギー量をさらに削減する。
③ 太陽光発電などでエネルギーを創る
屋根などに太陽光パネルを設置し、電気を自宅で発電する。「使う電気を減らす」「足りない分を創る」
この2つを組み合わせ、年間で見るとエネルギー収支がほぼゼロになる。
それでは、「省エネ基準適合住宅」と何が違うのかという点だが、現在の新築住宅の最低ラインは「省エネ基準適合住宅」だが、これはあくまで最低限の省エネ性能にすぎない。
イメージすると次の関係になる。
省エネ基準適合住宅 : 最低限の省エネ
ZEH水準住宅 : 省エネ+創エネを組み合わせた高性能住宅
つまり、ZEH水準は“ワンランク上の省エネ住宅”である。
では、ZEH水準住宅のメリットについてだが、光熱費が大幅に下がることが大きい。つまり、「夏冬の室内温度が安定し、住み心地が良い」「停電時も太陽光発電で一定の電力が使える」「住宅ローン控除など税制優遇を受けやすい」などがあげられる。
初期費用はやや高くなるが、長期的には家計メリットが大きい住宅と言える。
6、住宅ローン控除との関係
令和10年以降、新築住宅で住宅ローン控除を受けるためには、原則としてZEH水準以上が必要となる。言い換えると、「ZEH水準に満たない新築住宅は、税金の優遇が受けられなくなる」ということだ。
ひとことで言うとZEH水準とは、「エネルギーをあまり使わず、自分で電気もつくる、家計にも環境にもやさしい高性能住宅」である。
7.「買取再販住宅」は引き続き対象に
不動産業者が中古住宅を取得し、リフォームして販売する「買取再販住宅」については、令和10年以降も、省エネ基準に満たない場合であっても住宅ローン控除の対象とされる。
これは、既存住宅ストックの活用を妨げないための措置だ。
一方で、同10年以降、「土砂災害特別警戒区域(いわゆるレッドゾーン)」などに新築される住宅は住宅ローン控除の対象外となる。ただし、「既存住宅の購入」「建替え」「リフォーム」については、レッドゾーン内であっても引き続き適用可能としている。
将来的にはイエローゾーンも対象に含める検討が示されており、ハザードマップの確認は必須となる。
8.床面積要件緩和の拡張と「選択適用」
40㎡以上で適用できる床面積要件の緩和は、既存住宅にも拡大される。ただし、「床面積緩和」「子育て世帯等の借入限度額上乗せ」は、選択適用であり、併用できない。どちらが有利かを事前にシミュレーションすることが重要だ。
今回の改正を踏まえた住宅選びの基本戦略を考えると、
1.中古住宅を購入し、省エネリフォーム
2.新築ならZEH水準以上
3.災害リスクの低い立地を選ぶ
令和8年度税制改正では、「新築か中古か」ではなく、「性能」と「場所」で選ぶ時代に入ったと言える。
住宅ローン控除は今後、「誰でも受けられる減税」ではなく、令和10年を境に、物件の選択次第で控除が使えるかどうかが決まる制度へと変わる。購入前の段階で、省エネ性能・立地・控除額の試算を行うことが、家計防衛のカギとなる。
クローズアップインタビュー
会計業界をはじめ関連する企業や団体などのキーマンを取材し、インタビュー形式で紹介します。
税界よもやま話
元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。



