最終更新日:2026-02-18
外国人不動産投資に“消費税10%”課税 令和8年10月から仲介手数料が課税対象
- 2026/02/20
- 2026/02/18
令和8年度税制改正大綱に、非居住者(海外投資家)向けの国内不動産売買に係る仲介手数料等を消費税の課税対象とする見直しが盛り込まれた。これまで一定の場合に「輸出免税」とされてきた取扱いを改め、2026年10月1日以後の役務提供から原則10%課税へと転換する。急増する海外マネーを背景に、居住者との税負担の公平性を確保する重要改正となる。
増え続ける海外マネーと制度のズレ
近年、円安や日本の不動産市場の安定性を背景に、海外投資家によるマンション、オフィスビル、ホテル等の取得が増加している。都市部を中心に、外国法人や海外ファンドが買主となる事例は珍しくない。
現行の消費税法では、国内で提供される役務であっても、相手方が非居住者である場合には、一定の要件のもとで「輸出取引に類するもの」として輸出免税の対象となることがある。不動産売買の仲介手数料についても、非居住者向けであることを理由に消費税が課税されないケースが存在してきた。
しかし、不動産は国外へ持ち出すことができない資産だ。その価値や経済的効果は国内に帰属するにもかかわらず、相手方が海外居住者であるという理由のみで消費税が免税となることは、国内居住者との間で税負担の不均衡を生じさせるとの指摘があった。
そこで8年度税制改正では、「不動産関連サービスは所在地国で課税する」という国際的な付加価値税(VAT)の考え方に沿った制度へと見直すことになった。
改正の骨子:輸出免税の適用対象から除外
8年度税制改正大綱では、非居住者に対して行う「国内に所在する不動産」に係る役務の提供等について、消費税の輸出免税の適用対象から除外する旨が明記された。
今後、消費税法上の輸出免税規定の見直し等が行われる見込みであり、非居住者向けの不動産売買仲介手数料等については、原則として国内取引として10%の消費税が課税される方向となる。
対象となる役務の範囲については、今後の法案・政省令により具体化されるが、少なくとも不動産売買の仲介手数料は中心的な対象になると考えられる。
施行は、8年10月1日以後に行われる役務提供から適用される予定だ。もっとも、急激な制度変更による混乱を避けるため、経過措置も設けられる。
・令和8年3月31日までに締結した契約に基づき
・同年10月1日以後に役務提供が行われる場合
には、従前の取扱い(免税)が適用される見込みだ。実務上は、「契約締結日」と「役務提供時期」の管理が極めて重要になる。特に大型案件では、3月末までの契約締結を急ぐ動きが出る可能性もある。
「不動産に関する権利」も対象に
今回の見直しは、単なる土地・建物の仲介にとどまらない。大綱では、「不動産に関する権利に類するもの」に係る役務についても同様に見直す方針が示されている。
具体例として挙げられているのは次のような権利である。
・鉱業権
・採石権
・試掘権
・漁業権・入漁権
・公共施設等運営権(コンセッション)
これらはいずれも特定の土地や水域に強く結び付いた権利であり、実質的に「不動産に準ずるもの」と整理されている。今後、これらの権利に関する役務提供についても、内外判定基準の整備が行われる見込みだ。
企業へのインパクトとしては「不動産仲介会社」が最も直接的な影響を受ける。これまで非居住者向け案件を免税として処理していた場合、今後は原則として10%課税に切り替える必要がある。
・請求書様式の変更
・インボイス制度への対応
・会計処理の見直し
・契約日管理体制の強化
など、実務フロー全体の再点検が求められる。
次いで影響があるのが「海外投資家」だ。投資家にとっては、取得時のコストが増加する。例えば、仲介手数料が数千万円規模となる大型案件では、消費税相当額も相応の金額になる。投資利回り(NOI)や取得総コストの再計算が必要になる場面も出てくるだろう。
なお、日本国内で課税事業者に該当する場合には、支払った消費税の取扱い(仕入税額控除の可否)が論点となる可能性があるが、これは個別の取引形態や事業実態に応じた検討が必要である。
なぜ今、この改正なのか
今回の見直しは単なる技術的修正ではない。「外国人投資の増加」「不動産価格の上昇」「インボイス制度開始後の制度整合」といった環境変化の中で、「国内資産に関するサービスは国内で課税する」という原則を明確化する動きといえる。
非居住者であることのみを理由に免税とする取扱いは、政策的にも説明が難しくなっていた。今回の改正は、税制の公平性と国際的整合性を意識した制度修正と位置付けられる。
令和8年10月から、非居住者向けの国内不動産仲介手数料等は原則として消費税課税へと転換する。「海外投資家だから免税」という従来の図式は通用しなくなる。不動産業界、投資家、税理士はいずれも、契約時期や課税関係の確認を早めに進める必要がある。
今後、具体的な法案や通達の公表により詳細が明らかになる。制度の最終形を注視しつつ、2026年10月施行に向けた準備を怠らないことが重要だ。
クローズアップインタビュー
会計業界をはじめ関連する企業や団体などのキーマンを取材し、インタビュー形式で紹介します。
税界よもやま話
元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。



