最終更新日:2026-01-29

8年度税制改正 青色申告特別控除が「最大75万円」に拡大へ “得する個人事業主・損する個人事業主”が分かれる  

  • 2026/01/29
8年度税制改正 青色申告特別控除が「最大75万円」に拡大へ “得する個人事業主・損する個人事業主”が分かれる  

令和8年度税制改正大綱によれば、個人事業主の節税の要である「青色申告特別控除」が大きく見直される。デジタル帳簿や電子申告を行う事業者には、従来の65万円控除に代えて最大75万円控除という新たな優遇が用意される。一方で、紙の帳簿や書面申告に依存する事業者は控除10万円まで引き下げとなる可能性が高い。さらに、簡易簿記による10万円控除にも売上1千万円以下という新たな制限が設けられる見通しだ。改正の内容を正確に整理し、個人事業主が今から取るべき対応に迫った。


デジタル帳簿で「75万円控除」時代が到来

税制改正大綱によると、新設されるのが、一定の電子帳簿保存要件を満たす青色申告者に対する75万円控除だ。

対象は、訂正・削除履歴が残るなど信頼性の高い電子帳簿を保存し、帳簿と請求書・領収書データが連携可能な環境を整えている事業者。政府は、会計ソフトやクラウドサービスの普及を背景に、正確で透明性の高いデジタル記帳を行う事業者を重点的に優遇する方針を鮮明にしている。実質的には、デジタル対応できる事業者に対する「10万円の上乗せインセンティブ」といえる。

e-Tax未利用者は65万円・55万円から脱落

 これまで、複式簿記で帳簿を作成し書面で申告すれば55万円控除、e-Tax申告を行えば65万円控除が認められてきた。

改正後は、「複式簿記+e-Tax申告」が65万円控除の最低ラインとなる。

e-Taxではなく、紙で申告する場合は、複式簿記であっても原則として10万円控除のみとなる。

 控除額が55万円から10万円に下がれば、課税所得が45万円増加する計算となり、所得税・住民税・国民健康保険料を含めると年間で10万円超の負担増になることもある。

簡易簿記10万円控除に「売上1千万円以下」制限

さらに大きな変更が、簡易簿記による10万円控除の適用範囲だ。

令和9年分以後の所得税からは、以下のいずれかに該当する者のみが対象となる。

  • 前々年分の事業・不動産収入が1千万円以下
  • 事業規模に満たない不動産所得者、または山林所得者

つまり、売上(収入金額)が1千万円を超える事業者は、複式簿記でなければ青色申告特別控除を一切受けられなくなる。

簡易簿記のまま事業を続けることは、実質的に「控除放棄」と同義となる。

適用は令和9年分から、準備期間は今が勝負

これらの改正は、令和9年分以後の所得税から適用される予定だ。しかし、会計ソフトの導入や記帳体制の変更には時間がかかる。

現在でもe-Tax利用率は約8割に達しているが、なお2割程度の事業者は紙申告を続けているとされる。今回の改正は、そうした層に対し強制的なデジタル移行を迫る制度設計と言える。

これらの制度設計から事業者が今すぐ取るべき3つの行動は、

1. クラウド会計ソフトを導入し、電子帳簿保存要件を満たす

2. e-Taxによる申告を標準化する

3. 売上1,000万円超の場合は複式簿記へ移行する

となる。「面倒だから後回し」は、将来の確実な増税を受け入れることと同じだ。

最大75万円控除を勝ち取れるかどうかが、デジタル時代の個人事業主の明暗を分ける。

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税界よもやま話

元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。