最終更新日:2025-09-16

マイニング報酬に消費税はかかるのか? 暗号資産の「不課税取引」とは・・・

  • 2025/09/19
  • 2025/09/16
マイニング報酬に消費税はかかるのか? 暗号資産の「不課税取引」とは・・・

企業が新たな事業として暗号資産のマイニング事業に参入するケースがあるが、マイニング報酬には消費税がかかるのだろうか?実は、マイニングによって暗号資産を取得する取引は、消費税の課税対象外(不課税取引)となるので注意したい。これは、消費税の課税要件である「対価性」が成立しないと解釈されるためだ。


暗号資産のマイニングは、ブロックチェーン上の取引を検証・承認し、新たなブロックを生成する作業だ。同作業に成功したマイナーは、その報酬として暗号資産を受け取る。一見すると、この報酬は「役務の提供」に対する対価であり、消費税の課税対象になるように思える。しかし、税法上の解釈は異なる。

消費税が課税されるのは、消費税法第4条に定められる「資産の譲渡等」に該当し、かつその取引に「対価性」があること。対価性とは、資産の譲渡や役務の提供に対して、反対給付として対価を受け取るという明確な関係を指す。例えば、商品を販売すれば代金を得る、サービスを提供すれば手数料を得る、といった関係だ。

マイニングの場合、この対価性が成立しないと解釈される。その理由は、役務提供の相手方が特定できないからだ。マイニング作業は、特定の誰か一人のために行われるものではなく、不特定多数のネットワーク参加者全体に対して包括的に貢献している。報酬は、ブロックチェーンのプロトコル(ルール)によって自動的に生成され、成功したマイナーに与えられるものであり、特定の誰かが直接対価として支払っているわけではない。

このように、報酬の受け取りが特定の相手方との間で発生する取引とは言えないため、消費税の課税要件である「対価性」を満たさない。そのため、マイニング報酬の取得は消費税の課税対象とならず、不課税取引として扱われる。したがって、マイニングで得た暗号資産の報酬について、消費税の申告は不要だ。

混同されがちな「不課税取引」と「非課税取引」

消費税の取り扱いには、「課税」「不課税取引」「非課税取引」という考え方がある。「課税」は税金が掛かることだが、「不課税取引」「非課税取引」について分からない人も少なくないだろう。一般的には混同されやすいが、取り扱いは全く異なるので、明確に区別して理解する必要がある。

 「非課税取引」は、消費税法上、本来課税対象となる取引だが、政策的な配慮などからあえて課税しないこととされている取引だ。例えば、土地の譲渡や有価証券の売却、利子を対価とする金銭の貸付けなどがこれにあたる。これらの取引は、消費税法に規定された特定の項目として非課税とされている。

一方、「不課税取引」は、そもそも消費税の課税対象となる要件を満たさない取引を指す。消費税法第4条で規定されている「国内において」「事業者が」「対価を得て行う」「資産の譲渡等」のいずれかの要件を満たさない取引だ。マイニング報酬は、このうち「対価を得て行う」という要件を満たさないと解釈されるため、不課税取引に分類される。

 マイニング事業者は、この違いを正確に理解しておく必要がある。マイニングで得た報酬は不課税取引であり、その後、その報酬として得た暗号資産を売却する行為は、非課税取引となる。このように、同一の暗号資産を巡って、異なる税務上の取り扱いが適用されることを認識しておくことが重要だ。

税務上のリスク回避のために注意すべきポイント

暗号資産のマイニング事業で得られる報酬は、消費税の課税対象外だ。これは、取引承認という役務提供の相手方が特定できず、消費税の課税要件である「対価性」が成立しないと解釈から。そのため事業者は、この報酬について消費税の申告は不要だ。ただし、これはマイニング報酬の受け取りという行為に対する消費税の取り扱いに限定される。マイニングで得た暗号資産を事業資金に充てるために売却した場合、その売却は「支払手段の譲渡」として非課税取引となる。

暗号資産をめぐる税制は、その複雑さと変化の速さから、常に最新の情報を把握し、専門家の助言を求めることが不可欠だ。マイニング事業は、新たな収益源をもたらす一方で、複雑な税務上の課題を伴う。自己判断に頼るのではなく、税理士といった専門家と連携することで、予期せぬ税務リスクを回避し、事業の健全な成長を確保すべきである。

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元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。