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    最終更新日:2021-03-26

    (一社)全国農業経営専門会計人協会「農専会」 農業者の「6次産業化」でチャンスつかむ 官民ファンドへの関与で事業化の橋渡し役に

    • 2013/06/01
    • 2021/03/26
    (一社)全国農業経営専門会計人協会「農専会」 農業者の「6次産業化」でチャンスつかむ 官民ファンドへの関与で事業化の橋渡し役に

    農専会 阿部禧一代表理事、若山茂樹事務局長

    農林水産省の農業強化策の柱として、2月より農業者の6次産業化を後押しする官民ファンドが立ち上がっている。
    この新たな施策は、農業者が流通や販売分野にも進出し、経営の多角化を図ることで収益を上げてもらう目的でスタートしたもの。
    「民間の取組みを官がサポートする」という新たな試みのもと、そのファンドづくりを行う(株)農林漁業成長産業化支援機構の社外取締役には、農専会の阿部禧一代表理事が就任。
    農専会とは、農業経営をサポートする会計人の特化組織「一般社団法人全国農業経営専門会計人協会」の略称である。
    阿部代表理事と若山茂樹事務局長に、農専会としての今後の新たな事業展開について聞いてみた。

    阿部氏:ビジネスモデルなどを総合的にサポート
    若山市:特化税理士組織として新たな事業展開を

    平成18年9月の発足以来、さまざまな活動を展開されていますね。

    阿部 農業経営の近代化・安定化を促進するために、会計、税務、経営について総合的な支援を行うことを目的に発足したのが農専会です。
    法人化へのサポートをはじめ農業経営研修会の開催、農業版ビジネススクールとしての「担い手経営塾」の開講など、会計人の専門ノウハウを活かして、日本農業の健全な発展に貢献する事業に取組んできました。
    会員には毎年2回、農林水産省などから講師を迎え、農業行政の動きや農業経営者からの現状を聞く機会も設けて、レベルアップ研修を行っています。
    平成22年には社団化して、会計人の全国組織というネットワークを活かした事業活動の拡充を図りましたが、「事業経営としての農業」というマインドを醸成していくという活動のスタンスに変わりはありません。

    農業特化組織として初めて実態調査を実施され、結果はいかがでしたか。

    若山 このほど会員事務所対象に実施した実態調査(2012年5月~2013年3月時点の調査)によると、農業法人の顧問先数は全国で270件、個人農家は870件という実態が明らかになりました。
    エリア的には関東甲信越が多く、月次・決算・相談対応ができる事務所スタッフ数については、131人という結果に。
    また、日本政策金融公庫主催の農業経営アドバイザー試験合格者は68名。
    会員が地元で農業活動を行う上で取引のある関係団体としては、やはり「JA」をトップに、農業会議(委員)、市町村、金融機関と続きます。
    こうした実態調査を細かく分析して、今後の事業活動に役立てていきたいと考えています。

    今回、農林漁業成長産業化支援機構の役員に就任したきっかけを教えてください。

    阿部 農水省の政策評価委員や補助金の審査委員の業務も受けており、そうした経験がかわれたのかもしれませんね。
    でも正直なところ、今回の依頼は、まさに寝耳に水。
    正直なところ、「また大役が回ってきた」という感じでしたね。しかしながら、お声をかけて頂いたことには感謝したいですし、それが農専会としての事業活動に何らかの役に立てばと思い、引け受けました。」

    支援機構の事業内容については。

    阿部 国と民間の共同出資によって設立された支援機構は、ドリームインキュベーターの堀紘一氏が取締役会長に、農林中央金庫副理事長を務めた大多和巌氏が社長に就任。
    農林漁業者らが主体となって行われる新事業分野開拓などの活動に対して、資金供給や経営支援を行います。
    サブファンド(地域またはテーマ)への出資を通じて、支援対象者となる「6次産業化事業体」への経営支援を一体的に行う形をとります。
    出資期間は最長で15年と、他のファンドにはない長い期間が特徴で、農林漁業の成長産業化という政策目的が達成されるような事業スキームが考えられています。

    そうした事業構想と農専会との関わりについては、就任時点で構図が描けましたか。

    農専会 阿部禧一

    阿部 機構が立ち上がったばかりですから、正直、漠然としたものしか描けませんでしたね。
    6月に開催する戦略会議で今後の関わりや事業展開について、農専会として協議していく予定です。
    まず考えられるのは、「6次産業化」に関心を持ち、それをベースに雇用に結び付けたいと考える健全で前向きな農業者らの情報を、全国各地の農専会の会員から提供してもらうことが第一歩ではないでしょうか。
    そうした各地域からの情報収集を手始めに、支援機関との関わりを深めていければいい、と思っています。

    若山 それと、例えば「NPO法人農家のこせがれネットワーク」や、「一般社団法人全国農業青年経営会」といった若手農業組織との連携も進んでいます。
    この「6次産業化事業体」はそれなりの規模が必要です。
    この事業化スキームに興味を持つ複数の若手農業者がタッグを組み、流通と販路を持つ6次産業化のパートナー企業らを見つけてファンドの申請を狙うといった場合、実現性の高い成功モデルを描いて事業計画にする必要があるでしょう。
    そのアドバイスには、農業経営に詳しい専門家が必要です。
    農専会の会員が事業体の会計顧問や監査役、あるいはコーディネータといった立場で参画できるようになれば、存在意義は高まるだけに、大きなメリットを生みます。
    農専会が事業化の橋渡し役となり、そうした強みを会員間で共有しながら、各地域でサポートしていく実績を積み重ねていきたいですね。

    なるほど。当面の活動は事業化支援が中心になりそうですね。

    阿部 はい。これまでの農業の法人化支援と合わせて積極的に関わっていく方針です。
    補助金の審査業務に携わった経験やノウハウを会員に提供して、顧問先でもある農家に農地の拡大を勧め、如何に付加価値を提供できるかがキーになります。
    「6次産業化の支援」という、言葉の響き自体はいいのですが、そこへのサポートというと、現実的にはイメージしづらい。
    「6次産業化」を拡大するための戦略的なマーケティングも必要になる。
    そこに、新たなスキームができ、農専会がその担い手になることが目標です。

    すでに地方の金融機関を中心に、20あまりの機関がファンドに出資する動きがでています。
    ただ、農業側の受け入れ態勢はまだまだ不十分であるため、われわれ農業経営のプロ集団がビジネスモデルづくりから関わってあげることで、専門性をより活かしていきたいですね。

    若山 農専会の発起人の先生からは、「ついに時が来たね!」という声が上がっているほどで、理事会も盛り上がっています。
    某大手監査法人もこの成長化ファンドのスキームに着目し、売上10億円超の農業生産法人をターゲットにコンサルティングを展開する動きが出ています。
    私達、農専会は地域会計事務所の団体である特性を活かして、小規模農業者を中心にした中小連携による6次産業化事業体の支援を行っていこうと考えております。

    農専会 阿部禧一
    代表理事、若山茂樹事務局長