最終更新日:2025-10-30

税務署がマンションを狙う⁉ 課税対象となる収益事業とは

  • 2025/11/04
  • 2025/10/30
税務署がマンションを狙う⁉ 課税対象となる収益事業とは

マンション管理組合に対して、税務署から「事業内容等について」の照会(質問状)が届くケースが増えている。管理組合は法人格を持たないものの、法人税法上は「人格のない社団等」として法人とみなされ、収益事業に該当する所得には法人税が課税される。では、どのような活動が収益事業とされ、課税対象となるのか。国税庁の公式情報や法人税基本通達をもとに、マンション管理組合が知っておくべき税務上のポイント迫った。


マンション管理組合は一般に法人格を持たないが、法人税法上は「人格のない社団等」として取り扱われる。このため、政令で定める「収益事業」から生じた所得については、法人税の課税対象となる。

ただし、すべての収入が課税されるわけではなく、収益事業から生じた所得(益金から損金を差し引いた金額)に限って課税される。

「収益事業」とは何か

「収益事業」とは、法人税法施行令第5条第1項で定められた34業種に該当し、かつ継続的に事業場を設けて行われる事業を指す。つまり、管理組合が外部者との契約により収益を得ている場合、その内容が34業種のいずれかに該当するかどうかが課税判定の重要な基準となる。

収益事業と認定されるには、以下の3要件をすべて満たす必要がある。

  1. 政令で定める34業種に該当すること 法人税法施行令第5条第1項では、以下の業種などが「収益事業」とされている。
    不動産貸付業、物品販売業、金銭貸付業、通信業、運送業、倉庫業、請負業、印刷業、出版業、写真業、旅館業、飲食店業、代理業、仲立業、問屋業、鉱業、浴場業、理容業、美容業、興行業、遊技所業、医療保険業、技芸教授業、駐車場業、信用保証業、無体財産権提供業、労働者派遣業 など。
  2. 継続して行われていること 法人税基本通達15-1-5によれば、事業年度を通じて継続的に行われるもの、または定期的・不定期に反復して行われるものが該当する。単発的な活動は通常、収益事業とは認められない。
  3.  事業場を設けて行われていること 「事業場」とは、店舗や事務所などの拠点を指す。移動販売や移動興行のように場所が変わる場合でも、実態として継続的な拠点を有する場合は、事業場を設けているとみなされることがある(法人税基本通則15-1-4)。

収益事業に該当する具体例

実際にマンション管理組合が行う活動のうち、収益事業に該当しやすいものには以下のような例がある。

・携帯電話基地局(アンテナ)設置による屋上賃貸収入(不動産貸付業)

・広告看板設置収入(不動産貸付業または請負業などに該当する可能性)

・駐車場のサブリース収入(不動産貸付業または駐車場業に該当する可能性)

※区分所有者のみを対象とする場合は、後述の例外規定により非課税となるケースがある

・電柱設置収入(不動産貸付業)

・自動販売機設置によるマージン収入(物品販売業または無体財産権提供業などに該当する可能性)

・CATV・インターネット設備設置収入(通信業または無体財産権提供業などに該当する可能性)

これらは外部業者との契約に基づき、継続的に収益を得ているため、法人税の申告・納税義務が生じる可能性がある。

収益事業に該当しないもの

一方で、次のような活動は通常、収益事業には該当しない。

  1. 資源ゴミ回収奨励金(補助金) 市区町村から交付される報奨金は、政令で定める34業種に該当せず、収益事業から生じた所得には含まれない。
  2. フリーマーケット収入 物品販売業に形式的には該当するが、年2〜3回程度の開催であれば**「継続性」**が認められず、収益事業には当たらない。ただし、頻繁に開催したり、外部の第三者が参加する場合は収益事業と判断される可能性もあるため、継続性のない行事であることを明確化し、開催ルールを文書化しておくことが望まれる。
  3. 実費経費の精算 携帯基地局や自販機設置に伴う電気代などの経費精算は、収益ではなく実費負担の返還であるため課税対象外だ。
  4. 僅少な収入 社会通念上、事業と認められないほど少額の収入は収益事業に該当しない。「少額」の判断基準は明確ではないため、不安がある場合は管轄の税務署へ相談しておくとよいだろう。ただし、担当者の口頭見解は法的拘束力を持たないため、記録に残る形で確認を行うことが安全だ。

例外規定による非該当になるケースもある。法人税法施行令や基本通達では、例外的に収益事業に該当しないとされるケースも定められている。

  1. 組合員全員への物品販売やサービス提供 公益法人が会員に対して物品を頒布する場合、その価格や取扱いが会費徴収の一形態と認められるときは「物品販売業」に該当しない(法人税基本通達15-1-9注3)。 また、駐車場の利用や施設の賃貸などが専ら組合員を対象とする場合(概ね8割以上が目安)は、一般的に収益事業とはみなされない。これは共益的な活動と見なされるためだ。
  2. 広報紙の配布 会員向けに配布する会報や出版物は、対価を得ていても「出版業」とは扱われない(法人税法施行令第5条第1項第12号)。

管理組合は税務対応を丁寧に検証しておく

マンション管理組合が収益事業を行っている場合、法人税の申告・納税義務が発生する。収益事業の該当性は、業種・継続性・事業場の有無によって総合的に判断され、さらに例外規定も存在する。 税務署から照会があった際には、国税庁の公表情報や基本通達に基づいて正確に判断し、必要に応じて税理士など専門家の助言を受けることが重要だ。

特に「収益事業に該当するか否か」の判断は、組合の活動内容や契約の実態によって結論が分かれるため、収益の発生源、契約内容、使途などの記録と説明根拠を残しておくことが、後々のトラブル防止につながる。

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税界よもやま話

元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。