最終更新日:2026-03-12
令和8年度税制改正 ふるさと納税に“193万円上限” 高所得者の控除にブレーキ、返礼品競争にも変化
- 2026/03/12
ふるさと納税の仕組みが、令和8年度税制改正で見直される。最大のポイントは、高所得者の寄附額に応じて際限なく増えていた「住民税の特例控除」に、193万円の定額上限が設けられること。これにより、年収1億円規模の人などが利用していた高額寄附の節税効果には一定のブレーキがかかる。一方、自治体側についても、寄附金のうち実際に地域事業に使える割合を段階的に引き上げるルールが導入される。制度開始から17年を経て、拡大を続けてきたふるさと納税は「過熱する返礼品競争」を抑える方向へと舵を切る。
ふるさと納税制度が創設されたのは2008年度(平成20年度)。都市部に集中する税収を地方に分配することを目的に、自治体への寄附額のうち自己負担2千円を除いた金額が所得税・住民税から控除される仕組みだ。
制度開始当初は利用者も限られていたが、ポータルサイトの普及や魅力的な返礼品の登場により利用は急増している。総務省の統計によれば、2024年度(令和6年度)の寄附受入額は約1兆2800億円と、制度開始当初の数十倍規模にまで拡大した。
しかし、制度の拡大とともにいくつかの課題も指摘されてきた。代表的なのが、自治体間の「返礼品競争」。一部の自治体では高額な返礼品を用意して寄附を集めるケースが増え、制度本来の趣旨から外れるとの批判が出ていた。そのため政府はこれまでにも、返礼品の価格を寄附額の3割以下とするルールや、ポータルサイトによるポイント付与の実質的な禁止など、段階的に制度を見直してきた。
今回の税制改正も、こうした流れの延長線上にある。
高所得者の控除に「193万円」の上限
今回の改正で最も大きな変更は、住民税の特例控除額に193万円の上限を設けること。この改正は、2027年(令和9年)の寄附分から適用される。
ふるさと納税の税額控除は、次の3つで構成されている。
1.所得税控除
2住民税の基本控除
3.住民税の特例控除
このうち、節税効果の大部分を占めるのが「住民税の特例控除」だ。これまでこの特例控除には定額の上限が設けられていなかったため、所得が高い人ほど寄附額を増やすことができる仕組みとなっていた。
その結果、与党の税制改正議論では、次のような事例が問題視された。
・純金製小判30グラム(寄附額530万円)
・高級スーツ仕立券(寄附額3700万円)
さらに、高所得者向けに寄附先や返礼品を提案する「コンシェルジュサービス」まで登場している。こうした状況を受け、税制改正では特例控除額に193万円の上限を設定することが決まった。
なお、この上限は住民税の特例控除だけに適用される。寄附金額の10%相当が控除される基本控除には上限は設けられていない。
図:ふるさと納税“上限193万円”とは
【改正前】
高所得者→寄附額、控除額に上限なし
↓
【改正後】
住民税特例控除→上限は193万円
政府の試算では、年収1億円程度の給与所得者が上限に達する水準とされている。つまり今回の改正は、一般的な給与所得者への影響は小さい一方、超高所得層の寄附による節税効果を一定程度抑える狙いがあるといえる。
自治体が使える寄附金の割合を引き上げ
もう一つの大きな見直しが、自治体が寄附金を実際に使える割合の引き上げだ。ふるさと納税では、寄附金の一部が返礼品の調達費用やポータルサイトの手数料などに充てられる。そのため、寄附額すべてが自治体の財源になるわけではない。政府はこれまで、寄附金の募集にかかった費用を寄附額の50%以下に抑えるよう求めてきた。
しかし実際には、ポータルサイトの手数料や返礼品の調達費用などが増え、自治体が自由に使える金額が減っているとの指摘も。そのため今回の改正では、自治体が実際に活用できる寄附金の割合(寄附金活用可能額)を最終的に寄附額の60%以上とするルールが導入される。
ただし、自治体や事業者への影響を考慮し、段階的に引き上げる。具体的には次の通り。
・2026年10月~2027年9月:52.5%以上
・2027年10月~2028年9月:55%以上
・2028年10月~2029年9月:57.5%以上
・2029年10月以降:60%以上
返礼品の内容は「やや縮小」の可能性
今回のルールは、主にポータルサイトなど外部事業者への手数料を減らすことを目的としている。
しかし、もし自治体が手数料を十分に下げられない場合、基準を満たすためには返礼品の調達費用を抑えるしかない可能性もある。
その場合、寄附額に対する返礼品の内容がこれまでよりも小さくなることも考えられる。つまり今回の改正は、
・高所得者の節税利用を抑える
・自治体の実質的な財源を増やす
という2つの方向から、制度の過熱を抑える狙いがあるわけだ。
「返礼品競争」から制度本来の目的へ
ふるさと納税は地方財政を支える重要な制度となった一方、過度な返礼品競争など制度のゆがみも指摘されてきた。
今回の税制改正は、こうした状況を踏まえ、制度を本来の「地域支援型の寄附制度」へ近づける調整といえる。
今後は、返礼品の豪華さよりも、「どの地域を応援するのか」という寄附本来の目的が、より重視される制度へと変化していく可能性がある。
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会計業界をはじめ関連する企業や団体などのキーマンを取材し、インタビュー形式で紹介します。
税界よもやま話
元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。



