最終更新日:2025-09-07
税理士の半分以上が60歳超 深刻化する高齢化と若手は減少の一歩
- 2025/09/07

税理士の元締めである日本税理士会連合会(日税連)が令和6年に実施した第7回実態調査によると、60歳以上が全体の53.6%を占めていることが分かった。昔から平均年齢の高い税理士業界だが、益々、業界の若返りが深刻な問題になりそうだ。
税理士実態調査は10年に一度行われており今回で7回目。今回の実態調査は回答期限を令和6年5月24日までとし、8万6166件に実施して、有効回答数は3万8607件(所属会不明分118件を含む)、回答率は 44.8%だった。
実態調査によると税理士の年齢層で最も多いのは「60歳代」(25.7%)、次いで「70歳代」(22%)、「50歳代」(21.5%)だった。60歳以上の税理士が全体の53.6%を占めており、業界の高齢化が顕著であることが明らかとなった。
特に勤め人でなく自ら開業している税理士を「開業税理士」というが、開業税石に限れば、60歳以上が28.9%、70歳以上が27%と、60〜79歳で55.9%を占める構造となっている。
この背景には、税理士制度の構造的な特性がある。税理士資格は一度取得すれば自ら資格を返上しなければ長く業務を続けることが可能だ。さらに、自らの裁量で業務量を調整できるため、年齢を重ねても現役を続けるケースが多い。
一方で、20〜30歳代の若手税理士は減少傾向にある。第5回調査では11.5%だったが第7回調査では6.6%と半減している。これは、税理士試験の難易度の高さや、資格取得までの長期的な学習負担、そして税理士業界の魅力の相対的低下が影響していると考えられる。
税理士試験の5科目合格者は貴重な存在に
こうした状況下において、税理士資格の取得経路にも変化が見られる。
税理士になるためには、いくつかの方法がある。基本的には税理士試験に合格する「試験合格組」か、大学院で一定の教育を受けると税理士試験の一部が免除される「免除組」、国税職員を一定期間勤めて資格を取得する「国税OB」、弁護士や公認会計士からの登録組などに分かれる。
税理士試験は、必修となる会計科目2科目と、税法に属する3科目を合わせた計5科目に合格する必要がある。必修の会計科目2科目は、「簿記論」「財務諸表論」、税法に属する科目は、「所得税法」「法人税法」「相続税法」「消費税法又は酒税法」「国税徴収法」「住民税又は事業税・固定資産税」の9科目だ。一度に5科目合格でなくても、何年かけてもトータルで5科目取得できれば税理士資格を取得できるのが特徴だ。そのため、働きながら資格取得を目指せるメリットがある一方で、資格取得の年齢が高くなる傾向があり、前述した高齢化要因の一つにもなっている。
さて、今回の調査で分かったのが税理士資格者の構成を見ると大学院等の「試験免除者」が44.7%と最も多く、「試験合格者」は42.8%と減少傾向にあること。特に開業税理士では試験免除者が46.4%と高く、税理士法人の経営者を社員税理士というが、その社員税理士が39.8%だった。興味深いのは、勤め人である税理士を「所属税理士」というが、この所属税理士においては試験合格者が48.9%と試験免除者を上回っていることだ。個人で開業するよりも勤め人としての道を選ぶ税理士が増えていることは、税理士のサラリーマン化が進んでいることが考えられる。
組織形態による年齢構成の違い
税理士の勤務形態によっても年齢構成に差がある。税理士法人の社員税理士は、50歳代が最多(24.5%)で、30〜50歳代で53.5%を占める。所属税理士では、40歳代が最多(30.2%)で、30〜50歳代で71.7%と若手・中堅層が中心となっている。
これは、税理士法人や会計事務所が比較的若い人材を採用・育成しやすい環境であることを示している。法人組織では業務の分業化や教育体制が整っており、若手が成長しやすい土壌がある。一方で、個人開業税理士は事業承継や後継者育成が課題となっており、業界の構造的な世代交代の難しさが浮き彫りになっている。
女性税理士の増加と多様性
税理士登録者の性別構成を見てみると男性が74.3%、女性が14.1%と依然として男性が多数を占めるが、前回調査では男性85.1%、女性12.8%だったことから、女性比率は微増している。税理士業界におけるジェンダー多様性の進展は緩やかではあるが、今後の人材確保や業界の魅力向上に向けた重要な要素となる。
税理士は、企業経営や資産管理、相続対策など、社会の根幹を支える専門職である。その持続可能性を確保するためには、業界全体が年齢構成の偏りや制度的課題に真摯に向き合い、次世代の育成と制度改革を両輪で進める必要がある。今回の実態調査は、その現状を可視化し、未来への課題を提示する重要な一歩となった。
クローズアップインタビュー
会計業界をはじめ関連する企業や団体などのキーマンを取材し、インタビュー形式で紹介します。
税界よもやま話
元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。