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最終更新日:2022-08-05

大規模化する会計事務所 「第一世代」「第二世代」は!?

  • 2022/08/05
大規模化する会計事務所 「第一世代」「第二世代」は!?

執筆者

徳永 貴則

宮口 貴志

KaikeiBizline論説委員兼編集委員

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。

昔は、50人規模の会計事務所は、大規模と言われていたが、今や職員数が100人を超えてこないと、大規模事務所の領域には入ってこないだろう。会計事務所の大規模化の歴史においては、辻・本郷税理士法人の本郷孔洋公認会計士・税理士や山田グループの故山田純一郎公認会計士・税理士が「第一世代」という若手税理士も少なくないが、何十年もこの業界を見てきたものとしては、第一世代はもっと古いあの事務所なのだが・・・

平成13年の税理士法改正をキッカケに、会計事務所の大規模化が加速している。平成13年の税理士法改正では、広告規制の撤廃、報酬自由化、税理士の法人制度が実現した。それまで、自由に広告も出せず、報酬に関しても業界団体が一定基準をもうけ、更には法人ではなく個人事務所しか認められてこなかったのだから、大規模な変革が起こるわけもなかった。

一方で、広告規制の撤廃、報酬自由化、税理士法人制度の創設が、これほどまでに会計事務所の大規模化を加速させるものになるとは、当時どれだけの人が予想しただろうか。

協同事務所化を目指す巨匠

会計事務所業界の大規模化の歴史を見たとき、若い税理士の間では、辻・本郷税理士法人の本郷孔洋会長や山田&パートナーズをはじめとした山田グループの創始者である故山田純一郎会長を『第一世代』という人もいる。

しかし、“会計事務所の大型化”をキーワードに業界の歴史を見たとき、筆者はその先駆けは、大阪の「ゆびすいグループ」の創業者である故指吸千之助税理士だと思っている。

お会いしたこともなく、まさに歴史上の人物だが、協同事務所構想を持ちながら、記帳代行や税務会計業務だけでなく、すでに「管理会計」「情報化対応」など、税金の領域を超えた中小企業への総合サービスを目指し、実践してきた大先駆者だ。

ホームページの事務所概要によれば、1958年(昭和33年)には、職員数がすでに50名を超えている。事務所創業は1946年(昭和21年)で、税理士制度が構築される前の「計理士」として事務所を開業された。1951年(同27年)の税理士法制定と同時に税理士登録をされている。

すでにこのころ、現在の多くの会計事務所が手掛けようと目指している業務内容を、戦後間もなくから中小企業に提供されてきた。それが指吸先生だ。同時代に傑出した大先生として忘れていけないには、株式会社TKCの創業者である故飯塚毅氏だ。Wikipediaによると、飯塚氏は、1946年計理士登録。1952年税理士登録。1966年公認会計士登録。同年TKC設立、同社代表取締役社長に就任。1961年TKC全国会創設をされている。指吸氏が大正6年生まれであり、飯塚氏が大正7年生まれだから、ほぼ同時代を会計人として駆け抜けている。

お二人とも、業界では跳び抜けた存在であり、それゆえ、並び経つ税理士はほぼいない。会計事務所業界の「第一世代」と位置付けるには、跳び抜けた存在すぎる。

「第一世代」は地方の雄

そうなると、その次の世代を大規模事務所の歴史の「第一世代」と呼びたい。浮かぶ名前が、故佐藤澄男税理士だ。佐藤氏は、本郷氏や山田氏が若かりし頃に大規模事務所を築いていた名南会計グループ(名古屋)の創業者。職員数や顧問先数など、独立系の会計事務所としては他を寄せ付けない勢いだった。その佐藤氏の後輩として近畿地方の雄として拡大していたのが、株式会社日本経営(大阪)の創業者である菱村和彦税理士。そして北海の雄といえば税理士法人池脇会計事務所(北海道)の故池脇昭二税理士。また、東海地方の雄にYMG林会計事務所(横浜)の創業者である故林勝彦税理士、北陸の雄としてソリマチ会計(新潟県)の創業者である故反町秀司税理士等がいた。

事務所を開業した年代が1960年代後半で、TKC全国会の飯塚氏に薫陶を受け、会計事務所業界の一時代を築いた大御所だ。

税理士法改正が大規模化を加速

「第一世代」と位置付ける大規模事務所の特徴は、大規模事務所は地方に多かったこと。創業者は、地方経済を支える実力者であり、地域の経済界に入り込んでいた。当時の税理士法では、税理士事務所は法人化することができず、個人事業主として運営し、一身専属制。そのため、大規模化しにくい環境にあった。その環境を跳ね除け、大規模化に成功した世代が第一世代だ。
このほか、「第一世代」には、医療経営コンサルティングの雄である川原会計グループ(東京)の創業者の故川原邦彦税理士等が名を連ねると思う。川原氏は、医療経営に特化したメディカル・マネジメント・プランニング・グループ(MMPG)を創設、病院やクリニックなどに関与を広げる会計事務所の勉強会組織を基盤に、業界に大きな波を起こした。
こうした先人たちの活躍で、職員数50~100人規模の大型会計事務所が構築されるなか、平成13年の税理士法改正だ。ここで次の大きな波が来る。

「第二世代」に目立つ公認会計士・税理士

このときに、この波に乗り大きく飛躍したのが、山田グループの山田氏であり、辻・本郷税理士法人の本郷氏などの世代だ。ゆえに、山田、本郷の両氏は「第二世代」と位置付けたい。

お二人より先の1970年代に事務所を開設し、大きく飛躍している先生方もいる。コンパッソ税理士法人(東京)の代表社員で創業者の内川清雄公認会計士・税理士や、吉岡マネージメントグループ(北海道)の創業者で代表の吉岡和守税理士だ。1970年代に開業というと、山田氏や本郷氏の先輩に当たるが、年齢的にはほとんど変わらない。そのため、年齢的に70歳以上で、事務所の拡大に取り組んできた先生方はこの「第二世代」としても良いと思っている。

BDO三優監査法人(東京)の杉田純会長・パートナーも、かつては山田氏と本郷氏と3人合わせて、会計事務所業界の若手として注目されてきた。ゆえに第二世代を代表する人物と言える。

この第二世代の特徴として、一つ上げられるのが、資格の肩書が「公認会計士・税理士」ということ。多くが、公認会計士として監査法人に勤務していた経験がある。

一方、地方の第二世代となると、熊本の税理士法人近代経営の代表社員の栗谷利夫税理士などが入ってくるだろう。

では「第三世代」は・・・。この世代になってくと、現在50歳以下で数百人規模の事務所に発展させた先生方ということになる。 「第2世代」が広告の自由化、報酬規程の撤廃、税理士法人制度の創設をキッカケに大規模化を加速度的に進めたのと同様、「第三世代」は、税務行政及び会計事務所業界のDX化をキッカケに、更に事務所規模を大きくしていくことになるかもしれない。

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