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最終更新日:2023-04-04

Vol.4 引き取り事業者と、国庫帰属制度との比較 いよいよ始まる「相続土地国庫帰属制度」

  • 2023/03/20
  • 2023/04/04
Vol.4 引き取り事業者と、国庫帰属制度との比較 いよいよ始まる「相続土地国庫帰属制度」

監修者

松尾 企晴

松尾 企晴

Land Issues (株)代表取締役

不動産コンサルティング会社のプロサーチ(株)に中途入社し、2017年より代表取締役に就任。不動産、遺産相続事業の活動を通して見えてきた課題に取り組むべく、2020年にLand Issues(株)(ランドイシューズ、東京・千代田区、HP:https://land-issue.com/)を設立。また、税理士ら士業・専門家向けコミュニティ「プロサーチ遺産相続実務倶楽部」を運営。土地に新たなる価値を作り出し、未来へつなげる事業を展開中。

国庫帰属の民間版、引き取り事業者

前回の記事で、相続土地国庫帰属制度の注意点をお伝えしました。

国は土地なら何でも引き取ってくれるわけではなく、建物を解体する、境界を明らかにするなど10もの条件がありました。前記事を読んだ方は国庫帰属のハードルが高いと感じたのではないでしょうか。

連載第4回目は負動産を引き取る事業者についてお伝えします。この記事を読むと、引き取り条件や相談時の注意点、国庫帰属制度との違いが分かります。

引き取り事業者とは

売れない貸せない不動産の有料引き取りをしている事業者のことを「引き取り事業者」と呼んでいます。所有者が引き取り事業者に対し費用を支払うことで、不動産を引き取ってもらうことができるというサービスです。

この引き取り事業者はインターネット上で5社ほど確認できています。なお、インターネットにホームページ等を掲載していない事業者はもっとたくさんいると思います。(松尾調べ)

本記事では、実際に引き取りをしている弊社(ホームページ:Land Issues株式会社)を例に取りお伝えします。(以下、LandIssues株式会社を、「L社」とします。)

L社の事業モデルは、売れない貸せない不動産で困っている方からお引き取りし、L社が所有者として固定資産税の納税や所有者/管理者責任を負います。

そして、引き取りした不動産を有効活用します。※不動産の特性によって3Dプリンター建築×グランピングなど活用方針を決めています。興味のある方はぜひお気軽にホームページよりお問い合わせください。

L社 事業モデル図
L社 事業モデル図

引き取り条件

事業者によって料金体系や引き取りエリアなどが異なります。

私が調べた限り、料金:35万円からとするところが多く、エリアも日本全国対応するところもあれば、関東甲信越や関西圏限定とするところもあります。

L社では、次のような条件です。

【主な引き取り条件】

料金土地 1筆目15万円、同エリア内:2筆目以降+5万円
建物 50万円/棟(利用可とL社が判断した場合)
※固定資産税(20年分)や別荘地管理費(30年分)等を加算します
※所有権移転登記報酬や登録免許税はお客様負担(司法書士の指定なし)
エリア 種類日本全国
山林、原野、宅地、私道、住宅などあらゆる種類の不動産
共有持分引き取り可能
条件土地測量等必要なし、契約不適合責任免責、現状有姿
崖地は擁壁など安全策を施していただいたあとにお引き取り
支払い所有権移転登記完了後にお支払い
対応原則、オンラインや郵送に手続き。直接ご面談も可能
引取不可畑や田のうち、農地転用できない、非農地証明を取得できない土地

よくあるお引き取りは、山林や原野商法で購入した土地、別荘地です。

直近3ヶ月で105件ほど見積もりいたしましたが、見積もり額の平均は30万円前後でした。(移転登記報酬や登録免許税除く)

このように相続土地国庫帰属制度より引き取りの条件は緩いことがわかります。

国庫帰属VS引取り事業者

これから、引き取り条件と料金の違いについてお伝えします。

1.ヒトの要件

・相続土地国庫帰属制度は相続又は遺贈で取得+相続人であることです。
・引き取り事業者は、取得経緯は問いません。

2.モノの要件

3.カネの要件

4.手続き

2つを比較すると、このような違いがあります。

具体的事例で費用比較してみましょう。

・山林 3筆 地続き 面積3500㎡ 
・土地境界不明
・土地を明らかにする費用50万円、移転登記費用8万円、固定遺産税1,000円/年

※相続土地国庫帰属制度の負担金は法務省の計算シートより
※引き取り事業者の引き取り料金は、L社のものより

【料金比較】

国庫帰属制度と引き取り事業者の料金は、不動産のエリアや面積、筆数、土地の境界が明らかであるかどうかなどの条件で、どちらの方が安くなるのか変わります。

どちらも計算してくれるところに相談することを推奨いたします。

【畑や田】

引き取り事業者も農業委員会の許可なく引き取りは出来ません。一方、国庫帰属制度は条件を満たせば畑や田のまま引き取りしてもらえます。

【引き取り事業者を語った詐欺に注意!】

第1回目の記事で第二次原野商法詐欺が流行しているとお伝えしました。いま、引き取り事業者と名乗って詐欺等をはたらく者がでてきました。

注意点をお伝えしますで、ご相談するときにお役立てしてください。

・引き取り料金の先払いはNG
・引き取り明細を提示してこない会社NG
・インターネット等で検索できない会社NG
・何でも引き取るとしているのに宅建業免許がない会社NG
・売買契約書の土地表記、売主名の確認 など

まとめ
国庫帰属の民間バージョンである引き取り業者の存在をはじめて聞く方もいらっしゃるのではないでしょうか。国と比べて引き取り条件が緩いためお客様が負動産を手放したいと考えているときは事業者に相談してみるのも良いでしょう。

今後、国庫帰属制度が広がるにつれ、引き取り事業者の数も増えてくるでしょう。そのとき、料金体系が明瞭であることなど、相談先には十分に気を付けてください。経営者情報や関連企業の情報も確認することが重要です。

次回は、お客様から負動産の相談を受けたときの対応についてお伝えします。

Vol.4 引き取り事業者と、国庫帰属制度との比較 いよいよ始まる「相続土地国庫帰属制度」

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