最終更新日:2022-06-09
アーリークロス 企業型DC導入支援で協会設立 パートナー会計事務所が退職金問題をサポート
- 2022/06/06
- 2022/06/09
「老後資金2,000万円不足」問題を契機に、大きくのしかかる「将来への備え」。その不安を解消するiDeCoが人気を集めると同時に企業型確定拠出年金制度(企業型DC)への関心も高まりつつある。こうした状況を受け、会計業界内でも新たな導入支援の取り組みが出てきており、税理士法人もグループにあるFP会社の(株)アーリークロス(福岡・福岡市、代表取締役=花城正也氏・写真)が、企業型DCの普及・推進のための(一社)中小企業退職金制度支援協会(略称:中退協)を立ち上げ、顧問先企業の退職金問題をサポートする新しいビジネスモデルを展開し始めた。
将来資産の問題解決を提案
企業型DCは、企業が掛金を毎月積み立て(拠出)し、従業員(加入者)が自ら年金資産の運用を行う制度で、全国で約750万人が加入している(2021年3月末)。 (株)アーリークロスは、「みらいのおかねをデザインする」をコンセプトに、企業型DCの導入支援をはじめ、アニメでわかる「おかねの教科書」やキッズマネースクール「おかねの学校」など、資産運用全般に関する商品やサービスを提供。中心となる企業型DCは、SBI証券、みずほ信託銀行、日本企業型確定拠出年金センターなどと協力して展開している。
もともとは個人資産形成に関するFPを提案した際、顧問先社長から、「自分の老後資産についてもコンサルして欲しい、との相談を受け、確定拠出年金に興味を示してもらったことがきっかけ」(花城社長)となり、以来、企業型DCに関する制度設計、投資教育、事務取次をワンストップで提供し、社長や従業員の将来のおかねを作る支援を実施しているもの。
そもそも年金問題は、税務はじめ保険、不動産、証券の各分野における各専門家がばらばらに提案していたのではまとまらない。同社はこれらを総合的に提案することで、将来資産の問題を解決させており、中核となる企業型DCは半年で40件の導入実績となった。
企業型DCは、役員退職金の積み立てが全額損金で行えるほか、従業員の節税(所得税・住民税・社会保険)に加え、会社側の社会保険軽減にもつながる。掛け金については、選択制を活用した場合、従業員が毎月の貯蓄の一部を転嫁することで拠出する。これによって給与が減額されると同時に、社会保険料と税金が一部軽減されるため、事業主の負担もそれだけ軽くなる。また、経営者ひとりの零細企業でも同制度が利用できるほか、利用するかどうかは従業員の選択に委ねられる点も大きな特徴といえる。
ただし、こうしたメリットがあるにもかかわらず、中小・零細事業者に対する導入支援をしっかり行える機関や人材が極めて少ないのが現状であり、さらに企業側でも、「規定」の作成など事務コストがかかるほか、自社の年金制度設計、従業員への継続投資教育の実施など面倒な手続きがあり、導入を躊躇する経営者は少なくない。
永続的な業務手数料も望める
このように、どんなに効果的に運用したくても、経営者の“サポーター役”がいなければ、実際の導入にはなかなか繋がらないため、同協会では、パートナー制度を発足させて全国の会計事務所や税理士法人に参加を呼び掛けている。退職金積立や節税、福利厚生などは経営者との話題になりやすく、中退協では、税理士らが適任と見ている。
同社の導入実績のうち、約15%が紹介によるもので、関与先への紹介ツール、いわばドアノックサービスとして活用を呼び掛ける。パートナーの役割は、厚生年金事務適用事業所から対象となる企業を選別し、企業型DCの概要説明を行う。そして企業との面談日程の段取りなど、紹介レベルの業務を担う。説明に必要なツールや、従業員説明会、投資教育、制度開始後の運用など面倒な導入プロセスは中退協がサポートする。
事務所側には営業や実務、経験、資格は必要なく、「提案書を持っていくだけでも大丈夫。顧問先には、『社長の老後設計はどう考えられていますか?退職金はどうされますか?』というレベルのヒヤリングだけでも有効」(花城社長)という。ただ、単なる紹介とはいえ、企業型DCに関する基本的な知識や最低限の金融知識は必要で、場合によっては就業規則の変更が必要になる場合もある。
企業側のDC導入コストは、初期費用と月額費用のほか、拠出人数に応じた料金が加わる。仮に10名程度なら初期費用でおよそ40万円程度必要で、ここから、パートナー(会計事務所)への手数料収入が支払われる。パートナー制度は顧問先にニーズを喚起して紹介し、成約になった場合に紹介手数料が受け取れる。紹介手数料は1事業所あたり約4万円の初期導入費と、拠出した従業員数に応じた月額手数料収入が継続して得られる。会計事務所の付加価値提案業務の新しいメニューとして追加できるほか、中小企業の退職金問題をサポートしながら、定期的なフィーも期待できるわけだ。
情報提供から始める取り組みを
現状、中小企業側の認知度は低く、確定拠出年金制度の情報提供だけでもロイヤリティがある。会計事務所としても提案しやすく、紹介ツールとしてのメリットもある。なお、問い合わせや相談等は、オンラインにて対応する。中小企業の退職金問題が深刻化する理由として、「身近に専門家がいない」という問題は大きい。今年度から始まっている高校の新学習要領では、「資産形成」の視点にも触れる金融教育が実施されるなど、「マネーリテラシー」は今後高まっていくだろう。そうしたなか、中小企業の参謀役である税理士が立ち上がり、退職金問題を積極的にサポートする必要はありそうだ。
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