最終更新日:2025-09-30
「NFT」「ビットコイン」は技術的に違うため課税関係は違う!?
- 2025/10/03
- 2025/09/30

デジタルアートやゲームアイテムなどの所有証明として注目を集める「NFT(非代替性トークン)」。一方、代表的な暗号資産であるビットコインは通貨的な機能をもつ。両者は技術的に異なる性質を持つが、税務上の扱いに差はあるのか。国税庁の見解をベースに、実務上の課税関係を検証する。
暗号資産市場の拡大に伴い、NFT(非代替性トークン)が一般投資家やクリエイターの間で急速に浸透している。
NFTはブロックチェーン技術を基盤とし、アートや音楽、ゲーム内アイテムなどの「唯一無二のデジタル資産」を証明できる仕組みを持つ。
一方でビットコインをはじめとする従来型の暗号資産は、通貨的性格を帯び、交換可能性が高い。この違いは税務にどのような影響を与えるのかが、納税者にとって大きな関心事だ。
技術的な違い 代替可能性の有無
まず、NFTとビットコインの本質的な違いは「代替可能性」だ。
・ビットコイン(BTC)などの暗号資産 : 代替可能(Fungible)
交換可能。通貨や現金と同じく、保有者にかかわらず同一の価値を有する。例えば、Aさんが持つ1BTCと、Bさんが持つ1BTCは、区別がなく全く同じ価値を持ち、交換可能。
・NFT(非代替性トークン): 代替不可能(Non-Fungible)
一つひとつが固有のトークンIDを持ち、唯一性が保証される。同じ作品を題材にしたNFTでも、トークンが異なれば別物として扱われる。ブロックチェーン上に、デジタルデータ(アート、音楽、ゲームアイテムなど)の唯一無二の識別情報(トークンID)を記録することで、「世界に一つだけのデジタル資産」であることを証明。同じアート作品のNFTでも、トークンIDが異なれば別個のものとして扱われる。
こうした技術的背景から、NFTは「世界に一つだけのデジタル資産」として価値を生む。ビットコインと性質が異なるため、税務上も別枠での取り扱いが必要ではないかとの議論がある。
現行の税法では、NFTをビットコインなどと明確に区別する規定は少ない。しかし、国税庁が公開した情報によれば、NFTを用いた取引も、それが財産的価値を有する資産と交換できるものである限り、所得税の課税対象となる。つまり、NFTがビットコインのような暗号資産と同じく「所得税の課税対象」となる点は変わらない。違いは、所得の区分や課税方式が取引の態様に応じて判断されること。NFTの売買で得た利益は、その取引の態様に応じて、譲渡所得、雑所得、事業所得のいずれかに区分されると考えられており、ケースバイケースでの判断が必要だ。
所得区分による課税判断
NFTやビットコインの取引益が、どの所得に分類されるかについてだが、基本的には以下のように考える。
<譲渡所得>
保有していたNFTや暗号資産を売却し、利益を得た場合が該当する。ただし、暗号資産に関しては原則「雑所得」として扱われるケースが多い。
<雑所得>
個人が投資目的や副業として行う取引は雑所得に区分されるのが一般的である。給与など他の所得と合算され、総合課税の対象となる。
<事業所得>
継続的かつ大規模に取引を行い、生計の基盤となる場合には事業所得と認定される可能性がある。青色申告特典などが利用可能となる。
NFTの場合、デジタルアートを制作・販売するクリエイターが反復継続的に収益を得ている場合などは、事業所得として扱われる余地がある。単発的な売買であれば雑所得とするのが一般的だ。
税法上の判断としてNFT取引の課税根拠は、
・資金決済法第2条第5項
暗号資産の定義を示す規定で、代替可能なもの(Fungible Token)を想定しているが、NFTも「不特定の者を相手に財産的価値をもって交換できる場合」は暗号資産に該当する可能性がある。
・所得税法第36条(収入金額)
金銭以外の資産による収入も、取得時の時価で評価されるため、NFTの売買益も収入金額として扱われる。
これらを踏まえ、国税庁は「NFTは暗号資産と同様、取引で得た利益は課税対象」との立場を明らかにしている。
NFTや暗号資産の取引は、価格変動の激しさに加え、取引プラットフォームが複数存在するため、正確な記録が求められる。具体的には、
・売買日時、数量、価格を客観的に保存する
・NFTのトークンIDや関連するデジタル資産の情報を管理する
・所得区分(雑所得・事業所得など)を事前に整理する
また、消費税や相続税の課税関係にも影響が及ぶ可能性があるため注意が必要だ。
NFTは技術的にビットコインなどと異なり、代替不可能な性質を持つ。しかし、税務上は「財産的価値を有する資産」として位置づけられ、売買などで利益を得れば課税対象となる。所得区分は取引態様に応じて雑所得や事業所得に分かれるため、事例ごとに慎重な判断が求められる。
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会計業界をはじめ関連する企業や団体などのキーマンを取材し、インタビュー形式で紹介します。
税界よもやま話
元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。