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最終更新日:2022-07-27

令和4年10月から職員5人以上なら税理士事務所も社会保険に加入

  • 2022/07/27
令和4年10月から職員5人以上なら税理士事務所も社会保険に加入

執筆者

徳永 貴則

宮口 貴志

KaikeiBizline論説委員兼編集委員

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。

令和4年10月1日から、常時5人以上の勤務税理士・従業員を雇っている税理士事務所は、社会保険の強制加入事業所になる。常時5人以上の考え方は、家族専従者は除き、正職員に加え週及び月の労働時間・日数が正職員の3/4以上の従業員をカウント。これまで、従業員には市町村国保に加入してもらっていた税理士は、10月分から従業員の社会保険料の負担も増えることになる。

社会保険の適用拡大

現在、税理士法人などの法人事務所は、社会保険の加入が義務付けられている一方で、従業員5人以下の税理士事務所にはその義務がない。そのため職員の多くは、市町村国保に加入するか、一部税理士会なら、税理士国民健康保険組合(以下=税理士国保)に加入している。これが、令和2年5月に成立した新年金制度により、同4年10月1日から常時5人以上の勤務税理士及び従業員を雇用している税理士は、「協会けんぽ」と「厚生年金」への加入が義務付けられ、厚生年金保険と健康保険、いわゆる社会保険の強制適用事業所になる。
厚生労働省では、短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件を段階的に引き下げ、現在は従業員500人超だが令和4年10月に100人超規模、令和6年10月に50人超規模にすることとしている。賃金要件は月額8.8万円以上、労働時間要件は週労働時間20時間以上、学生除外要件については現行のままとし、勤務期間要件は現行、1年以上となっているが、実務上の取扱いの現状も踏まえて撤廃し、フルタイムの被保険者と同様の2カ月超の要件を適用するとしている。
加えて、強制適用の対象となる5人以上の個人事業所の適用業種に、弁護士、税理士などの士業を追加。以下、その対象となる10士業だ。

  • 税理士
  • 公認会計士
  • 弁護士
  • 司法書士
  • 行政書士
  • 土地家屋調査士
  • 社会保険労務士
  • 弁理士
  • 公証人
  • 海事代理士

税理士国保に加入していれば健康保険は継続加入

ただ、健康保険に関しては、令和4年9月30日時点で「関東信越税理士国保組合」「近畿税理士国保組合」の税理士国民健康保険組合(以下、「税理士国保」)に加入していれば、所轄の年金事務所に健康保険の適用除外申請をし、承認を得て「税理士国保」に継続加入が可能(厚生年金については強制加入)。
「税理士国保」は、関東税理士会及び近畿税理士会の会員税理士だけが加入できるもので、他の税理士会は対象外。また、勤務税理士や従業員のみの加入はできないため、勤務税理士・従業員を加入させる場合は事業主である所長税理士が加入する必要がある。
「協会けんぽ」と「税理士国保」の違いは、保険料の計算の仕方。「協会けんぽ」は標準報酬による賦課方式だが、税理士国は、資格区分(税理士、勤務税理士、従業員、家族)に応じた定額保険料を採用している。そのため、「税理士国保」は「協会けんぽ」のような賞与に係る保険料がない。
保険料負担は、「税理士国保」も「協会けんぽ」と同様に、従業員(勤務税理士・従業員・従業員の家族)と雇用主の折半。
なお、令和 4 年 10月1日以降に「協会けんぽ」の強制適用を受けると「税理士国保」への加入はできなくなる。そのため、「税理士国保」を継続加入するには、令和4年9月30日までに手続きを行い、法施行日(令和4年10月1日)から14日以内に「健康保険被保険者適用除外承認申請書」を所轄の年金事務所に提出する必要がある。承認されれば「協会けんぽ」に加入せず、そのまま「税理士国保」の加入資格を継続することができる。また、新規に「税理士国保」に加入したい場合も同様だ。

対象は約5万人となる見通し

“常時”雇用する従業員の数については、正社員、契約社員、パート、アルバイトなど臨時的労働者の数を含め、1週の所定労働時間及び1カ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上ある人(家族専従者を除く)。対象となる従業員は全員、社会保険に加入する必要だ。
強制適用事務所になると、厚生年金は原則、70歳までの加入となる。
任意適用をしないまま10月1日を過ぎると、強制適用となり10月以降は速やかに「新規適用届」と「被保険者資格所得届出」などを提出する必要がある。
今回、税理士事務所をはじめとした10士業を追加したのは、士業事業所は比較的経営が安定しており、保険料の支払いといった事務手続きも問題なく行えると判断されたため。対象になる人は約5万人の見通しだ。

令和4年10月から職員5人以上なら税理士事務所も社会保険に加入

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