最終更新日:2022-12-01
速報 2022年(72回)税理士試験合格者 昨年度より増え620人 41歳以上が約4割超
- 2022/12/01
第72回税理士試験の結果が11月30日、国税庁から発表された。官報合格者は昨年度より35人増え620人で、一昨年度以来の600人台回復だ。官報合格者の約4割超が41歳以上で、依然として税理士資格取得年齢の高齢化が進んでいることが浮き彫りとなった。
執筆者
宮口 貴志
KaikeiBizline論説委員兼編集委員
税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
官報合格者は35人増加し620人
第72回税理士試験の結果が11月30日、国税庁から発表された。今回、5科目合格の官報合格者は620人で、昨年度より35人増加した。しかし、5科目合格の官報合格者については、近年最も多かった平成16年度から見てみると、2番目に少ない合格者数で10年後、20年後の税理士業界において、税理士不足になることが懸念される。
官報合格者の4割超が41歳以上
官報合格者を年齢別に見てみると、特徴的なのが高齢化が顕著なこと。令和4年度試験では、41歳以上が274人と突出して多く全体の44.2%を占める。次いで31歳から35歳が114人(18.4%)、36歳から40歳が112人(18.1%)、26歳から30歳が82人(13.2%)、25歳以下が38人(6.1%)と、年齢が若いほど、合格者の人数が少ない。
平成20年度には、「31歳~35歳」が303人でもっとも多く、ついで「26歳~30歳」の236人で、官報合格者全体の59%と約6割を占めていた。税理士業界において、今後、若者採用はより難しくなっていくことが明らかで、若手税理士の取り合いが益々過熱していくことが予想される。
受験者数の減少に歯止めか?
今回の受験者数は、コロナ禍で最も減少した令和2年度(2020年)の2万6,673人から2,180人増え2万8,853人となり、前年度と比べても1,554人増えた。近年、税理士試験離れが進んでいたことから、やっと歯止めがかかったと見て取れる。
ただ、平成16年度の第54回税理士試験では、受験者数が5万6,126人だったことからすると、19年で受験者数は半分以下に激減したことは確かだ。グラフ1のように受験者数の減少は顕著で、平成20年より前は、減少しても100人前後だったものが20年以降は数百人規模になり、22年以降は千人規模、24年以降になると1千~3千人規模に膨れ上がっている。
若者の受験離れが顕著に
グラフ2は平成20年度以降の受験者数の推移を年齢別に見たものだが、若者層ほど税理士試験離れが進んでいることが分かる。
25歳以下は、平成29年度から3千人台を推移していたが、昨年度やっと4,280人まで回復し、今年はさらに4,929人まで増えた。とはいっても、平成20年度は9,320人が受験したことからすると、若者の受験者は激減した。
26歳~30歳の層は令和2年度、3年度と3千人台まで落ち込んだが4,131人と4千人台を回復。31歳から35歳の層は、令和2年度から4千人台に落ち込み、今回も4,581人と3年続けて4千人台を上下している。
36~40歳代に関しては、令和元年に4,997人と初めて4千人台に落ち込んだが、その後、2年に4,343人、3年に4,334人、そして今回4,407人と4,300~4,400人を上下している。
一方で、41歳以上の受験者数は高い位置で横ばい状態が続き、今回は1万805人が受験し、年代層では断トツに多かった。
41歳以上の受験者数が安定しているのは、税理士試験が科目の積み上げ方式であることが大きく影響しており、何年かけても5科目合格することで税理士資格を得られるためだ。
そのため、仕事しながらゆっくりと資格取得を目指す受験生が多くを占め、高齢化が顕著になってきている。
税理士の隣接資格者に公認会計士がいる。その公認会計士試験の合格者の平均年齢は25歳だ。若者の資格者を輩出し、育てていくことは、その業界の発展、将来に大きく影響してくる。税理士試験の合格者の年齢層がまんべんなく散らばっているのなら、それほど気にすることもないが、半数近くが41歳以上というのは、税理士業界の将来に不安を感じざるを得ない。
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税界よもやま話
元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。