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    最終更新日:2021-03-26

    取引先の連鎖倒産から自社を守る「経営セーフティ共済」 節税効果にも期待

    • 2021/02/18
    • 2021/03/26
    取引先の連鎖倒産から自社を守る「経営セーフティ共済」 節税効果にも期待

    顧問先の経営悪化による連鎖倒産から金銭面で支えてくれるのが、中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)だ。掛金は経費で落とせることから節税効果も期待できる。

    コロナ不況で注目される「共済」のメリット

    経営セーフティ共済は、公的機関である中小企業基盤整備機構(基盤機構)が運営する共済制度で、取引先の突然倒産から守る資金的な備えだ。コロナ不況が深刻化するなか、連鎖倒産から自社を守ってくれる。「経営セーフティ共済」加入メリットは、

    • 加入後6カ月以上経過して、取引先事業者が倒産し、売掛金債権等(売掛金債権・前渡金返還請求権)が回収困難となった場合に共済金貸付けが受けられる。
    • 掛金は最大年間240万円まで経費処理できる。一括払いも可能で、期末に240万円を損金計上すれば、事業所得なら年間最大480万円を必要経費にすることが可能。なお、掛金は加入後変更も可能。
    • 40カ月掛けていると掛金が100%戻る

    無担保・無保証の借り入れも可能

    ①については、中小企業が経営セーフティ共済に加入して「掛金」を支払うと、取引先の倒産時に掛金の最高10倍(上限8千万円)まで無担保・無保証人で借り受けることができる。貸付金は無利息で、借入にかかる時間も、取引先企業が倒産し、売掛金債権の回収ができなくなってことが確認できればすぐに共済金が借りられる。

    経営セーフティ共済での「倒産」要件は、

    1.手形交換所に参加する金融機関によって取引停止処分を受けた

    2.破産・再生手続開始・更生手続開始・特別清算開始の申立てが裁判所に対してされる

    3.私的整理の一部(内整理)について、その通知があった

    4.甚大な災害の発生によって、手形等が「災害による不渡り」になる

    ※夜逃げなどは本制度の「倒産」には該当しない

    とされる。

    掛金は月額5千円から設定可能

    ②の掛金に関しては、月額5千円から20万円の範囲内で設定することができる。設定の仕方は5千円刻みで加入後増額することも可能だ。

     加入条件は、1年以上継続して事業を行っている中小企業者で、以下の「資本金額等」または「従業員数」のいずれかに該当する中小企業なら加入ができる。中小企業者の要件も業種によって異なり、以下の図表の通り「資本金の額または出資の総額」、「常時使用する従業員数」でいずれかに該当する会社または個人事業者となっている。組合関係では、共同生産、共同販売等の共同事業を行っている事業協同組合、事業協同小組合、商工組合は加入できるが、医療法人や農事組合法人、NPO法人、森林組合、農業協同組合、外国法人等は加入対象にはなっていない。

    (独立行政法人 中小企業基盤整備機構ホームページより)

    掛金は全額損金、節税にもメリット

     経営セーフティ共済の掛け金は、全額損金処理できるため節税にもつながる。また、掛金は途中で変更できるほか、一定要件を満たせば掛け止めも可能だ。そのため、利益が出ている年は掛金を増額、利益が出ない年には掛金減額あるいは掛止めすることが出来る。

    • に関しては、途中で解約しても解約返戻金を受け取ることができるほか、解約返礼率が、40カ月以上掛けると100%戻ってくる。

    ?40カ月以上掛けることで解約返戻金率が100%

    <参考>

    掛金納付月額   任意での解約返礼率

    1~11       0%

    12~23     80%

    24~29     85%

    30~35     90%

    36~39     95%

    40~      100%

    ただし、解約手当金を受け取ったときには課税されるため、事実上の税負担という意味ではトータルでは変わらない。そのため、解約するなら業績が悪化して赤字になりそうな事業年度にすることが財務的にはメリットがある。注意したいのが、掛金を12カ月納めていない場合。12カ月を超えて納めていると掛金総額の8割以上が戻るものの、12カ月未満は掛け捨てとなる。