最終更新日:2025-09-16
暗号資産のレンディングは消費税の課税対象!? 事業者が対価を得て行う「資産の貸付け」と判断
- 2025/09/18
- 2025/09/16
最近、保有する暗号資産を貸し付けて収益を得る「レンディング」という投資手法が注目されている。従来の銀行預金のように、暗号資産を暗号資産交換業者に貸し付けることで、定期的に利用料(利回り)を得る仕組みだ。この新たな収益源に対し、多くの事業者は消費税が課税されるのか判断に迷っているが、暗号資産のレンディングで得られる利用料は、消費税の課税対象となることを覚えておきたい。これは、暗号資産が税法上の「金銭」には該当しないため、非課税とされる「金銭の貸付け」とは区別されるからだ。
暗号資産のレンディング(貸付け)によって得られる利用料は、消費税の課税対象となる。同取引は、消費税法上「資産の貸付け」に該当するからだ。事業者が対価を得て行う資産の貸付けは原則、消費税の課税対象となる。これは、消費税法第2条および第4条で規定されている基本的な考え方に基づいている。
一般的な貸付け、例えば会社の車両を他社に貸し付けてリース料を得る場合や、事務所を賃貸して家賃収入を得る場合と同様に、暗号資産という資産を他者に貸し付け、その対価として利用料を得る行為は「資産の貸付け」として認識される。そのため、この利用料収入には消費税が課される。
「金銭の貸付け」とは異なる税務上の定義
暗号資産のレンディングが非課税取引である「利子を対価とする金銭の貸付け」と混同されがちだが、この2つは明確に区別される。消費税法第6条および別表第二では、「利子を対価とする金銭の貸付け」が非課税取引として定められている。これは、銀行預金の利子や融資の利息などがこれに該当し、消費という性質になじまないためだ。
しかし、暗号資産は法律上の「金銭」には該当しない。資金決済法で「支払手段」として位置づけられているものの、法定通貨である日本円や米ドルとは異なり、税法上の「金銭」とは見なされないためだ。この違いが、レンディングの利用料の課税関係を決定づける重要なポイントとなる。
暗号資産の貸付けは、「金銭の貸付け」という非課税取引には該当せず、原則通り「資産の貸付け」として扱われる。したがって、受け取った利用料は消費税の課税売上となる。
円換算による課税売上の計上方法
暗号資産のレンディングによって得られる利用料は、通常、暗号資産のままで支払われる。この場合、受け取った暗号資産を、受け取り時点の時価で日本円に換算した金額が課税売上となる。例えば、ビットコインで利用料を受け取った場合、その日の日本円での価格で評価し、消費税の課税売上として計上する必要がある。
この点は、暗号資産の価格が日々変動するため、注意が必要だ。利用料を受け取るたびに、その時点の時価を確認し、正確に日本円に換算する必要がある。この作業を怠ると、消費税の申告漏れや過少申告につながり、税務調査の対象となる可能性がある。
暗号資産のレンディングは、企業や個人にとって新たな収益の機会を提供する。しかし、その利益の裏側には、従来の税務ルールとは異なる複雑な課題が存在する。暗号資産の貸付けは、消費税法上「資産の貸付け」として扱われ、その利用料は消費税の課税対象となる。これは、暗号資産が税法上の「金銭」ではないため、「利子を対価とする金銭の貸付け」という非課税取引には該当しないからだ。
事業者は、レンディングから得た暗号資産の利用料について、受け取り時点の時価で日本円に換算し、正確に消費税の課税売上として計上する必要がある。これらの手続きを適切に行うことで、予期せぬ税務リスクを回避し、健全な事業運営を維持することができる。暗号資産をめぐる法規制や税制は今後も変動する可能性がある。新たな投資手法には、新たな税務上の義務が伴うことを認識すべきだ。
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税界よもやま話
元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。



