最終更新日:2025-09-16
自作NFTアート販売に消費税はかかる? NFTは「モノ」ではなく「サービス」
- 2025/09/20
- 2025/09/16

NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)という新たな市場が誕生し、自作のNFTを発行・販売することで、これまでにない形で収益を得る事業者も出てきている。一方で、新たな取引手法とあって税務処理でのミスも目立っており注意が必要だ。とくに消費税だが、デジタルアーティストが自作NFTを日本の消費者に販売する取引ついては、消費税の課税対象。これは、NFTアートの販売が消費税法上の「電気通信利用役務の提供」に該当すると判断されるからだ。
NFTとは、ブロックチェーン技術を使って作成される、唯一無二のデジタル資産を表すトークン。「非代替性」とは、他のものと交換できない、替えがきかないという意味で、NFTは世界に一つしかない独自の価値を持つデジタル証明書として機能する。
従来のデジタルファイルは簡単にコピーできるため、オリジナルと複製品の区別が困難だった。しかし、NFTはブロックチェーン上に記録されることで、そのデジタル資産の所有権や真正性を証明できる革新的な仕組みを提供する。
個人事業主であるデジタルアーティストが、自身の作品を紐づけたNFTを販売した場合、その取引は消費税の課税対象となる。この取引が、単なるデジタルデータの販売ではなく、著作物の利用を許諾するという「電気通信利用役務の提供」に該当すると判断されるためだ。
消費税法第2条第1項8号の3では、「電気通信利用役務の提供」が定義されている。これは、インターネット等の電気通信回線を通じて行われるサービスであり、具体的には、電子書籍の配信、音楽や動画のストリーミング、そして著作物の提供などが含まれる。NFTアートの販売も、デジタルアート作品をインターネット経由で提供する行為であるため、この「電気通信利用役務の提供」に該当する。
消費税は、国内における消費に対して課税される税金だ。しかし、インターネットを通じて国境を越えて提供されるサービスについては、その「提供を受けた者(購入者)」の住所地が国内にあるかどうかで、日本の消費税の課税対象となるかが判定される。これは、消費税法第4条第3項第3号で明確に規定されているルールだ。
購入者が日本の消費者であり、住所地が日本国内であれば、同取引は国内取引とみなされ、消費税の課税対象となる。販売者が消費税の納税義務がある課税事業者である場合、NFTアートの販売による収入に対して消費税を申告・納税する必要がある。
販売者が免税事業者の場合
消費税の納税義務は、その事業者の課税売上高によって決まる。前々事業年度の課税売上高が1千万円以下の事業者は、消費税の納税義務が免除される「免税事業者」だ。この場合、NFTの販売による収入が課税売上高の計算に含まれるものの、その年の消費税の納税義務は生じない。
しかし、免税事業者であっても、国税庁にインボイス(適格請求書)の発行事業者登録していれば課税事業者となる。
NFT市場には、一次販売(クリエイターから購入者への直接販売)と、二次流通(購入者から別の購入者への転売)という二つの取引が存在する。NFTの二次流通の場合、消費税の取り扱いはさらに複雑となる。
二次流通は、最初に作品を購入したユーザーが、そのNFTを別のユーザーに転売する行為だ。この取引は、NFTという「資産の譲渡」に該当するため、NFTの売却そのものは消費税の非課税取引となる。これは、暗号資産の売却が「支払手段の譲渡」として非課税取引となるのと同様の考え方だ。
したがって、NFTの一次販売と二次流通では、消費税の取り扱いが異なることに注意が必要だ。デジタルアーティストは、自身の作品の一次販売で消費税の課税義務が生じる可能性があるが、二次流通で転売益を得た場合、その売却益自体には消費税はかからない。
NFTと税務、新しいルールへの適応が不可欠
デジタルアーティストが自作のNFTを日本の消費者に販売した場合、その取引は「電気通信利用役務の提供」として消費税の課税対象となる。これは、デジタルアートの提供がサービスの一環と見なされるからだ。消費税の納税義務がある事業者は、NFTアートの販売による収入について、消費税の申告・納税が必要となる。一方で、二次流通におけるNFTの転売は「資産の譲渡」として非課税取引となる。このように、NFTの取引段階によって消費税の取り扱いが異なることを理解しておくことが重要だ。
NFT市場はまだ歴史が浅く、税制や法規制が十分に整備されているとは言えない。今後も、新たな取引形態の登場や国際的な議論によって、税務上のルールは変化していく可能性がある。デジタルアーティストやNFTに関わる事業者は、常に最新の情報を把握し、不明な点があれば専門家に相談することが、予期せぬ税務リスクを回避する上で不可欠である。
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会計業界をはじめ関連する企業や団体などのキーマンを取材し、インタビュー形式で紹介します。
税界よもやま話
元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。