最終更新日:2025-09-16

食事補助の税優遇拡大へ、40年据え置きの非課税限度額が見直しへ

  • 2025/09/17
  • 2025/09/16
食事補助の税優遇拡大へ、40年据え置きの非課税限度額が見直しへ

社員食堂などに代表される食事補助制度の税優遇が、物価高騰を背景に拡大される機運が高まっている。経済産業省は令和8年度税制改正に向け、1984年以来40年以上据え置かれてきた月額3500円の非課税限度額の引き上げを要望している。政府の骨太の方針にも見直しが明記され、年末に向けた税制改正論議の行方が注目される。企業にとっては福利厚生の拡充、従業員にとっては実質的な手取り増につながる可能性があり、各方面から期待の声が上がっている。


近年、物価高騰が家計を圧迫する中、従業員の生活を支援する企業の福利厚生制度「食事補助」に大きな注目が集まっている。特に、この補助に対する税制優遇の見直しが、年末の税制改正に向けた重要テーマとして浮上している。

現行の税制では、企業が従業員に提供する食事補助について、非課税とされる限度額が月額3500円と定められている。この制度が適用されるためには、企業の負担分がこの金額以下であることに加え、従業員が食事代の半分以上を負担するという二つの条件を満たす必要がある。この非課税限度額は、1984年の制度導入以来、実に40年以上にわたり据え置かれてきた。当時の物価水準とは大きくかけ離れており、制度が時代に即していないとの指摘が長年なされていた。

こうした状況を踏まえ、非課税限度額の引き上げを求める声が多方面から上がっている。経済産業省は、2026年度(令和8年度)税制改正の要望事項として、この食事補助の非課税限度額の引き上げを正式に要望した。これは、賃上げとともに物価高騰への対策を企業に促す意図があるとみられる。また、外食企業などで構成する業界団体「食事補助上限枠緩和を促進する会」も今年5月、限度額を月6000円以上へ引き上げるよう政府・与党に要望書を提出しており、民間の側からも強い働きかけが行われている。

 こうした要望に対し、政府も迅速な対応を示している。今年6月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる「骨太の方針」には、食事補助の非課税限度額について「速やかに見直しを行う」と明記された。これは、単なる検討にとどまらず、具体的に制度を改正する意向が政府内にあることを示唆している。

さらに、多くの経済団体も令和8年度税制改正に向け、非課税限度額の拡充を要望する方針を固めている。ある団体の関係者は「非課税枠が拡大されれば、企業が食事補助を充実させやすくなり、従業員の実質的な手取り増につながる」と指摘。さらに、「人材確保や定着率向上といった、企業の人事戦略においても大きなメリットが期待できる」と、その効果に強い期待を寄せている。

年末に向けた税制改正論議では、引き上げ額や適用条件など具体的な制度設計が焦点となる。長年の課題だった食事補助の税優遇が、この物価高を機に、いよいよ本格的な見直しを迎えることになるだろうか。

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会計業界をはじめ関連する企業や団体などのキーマンを取材し、インタビュー形式で紹介します。

税界よもやま話

元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。