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最終更新日:2021-08-10

税務行政のDXに対応した事務所改革が不可欠に

  • 2021/08/08
  • 2021/08/10
税務行政のDXに対応した事務所改革が不可欠に

デジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進する動きが社会全体で高まっている。会計事務所業界でも緊急事態宣言をキッカケに、日本税理士会連合会から「税理士の業務とテレワーク(在宅勤務)~新型コロナウイルス感染防止対応版~」が発表されるなど、デジタル化への対応が徐々に進められているが、この動きは今後ますます加速化しそうだ。

9月創設の「デジタル庁」がDXけん引役に

今年9月に行政のDX化のけん引役としてデジタル庁が設置されるが、国税庁もこの動きに対応。今年6月11日には「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション - 税務行政の将来像2.0 -」を公表し、デジタルを活用した、今後の国税に関する手続きや業務の在り方を抜本的に見直した。
会計事務所としても、この国税庁の動きは注視しておく必要がある。
税務行政のDXには、「納税者の利便性の向上」と「課税・徴収の効率化・高度化」を柱に「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」の実現や、課税・徴収におけるデータ分析の活用等の取組をさらに進めていくことなどが詳細に示されている。
ざっと中身を見れば、確定申告に必要な給与等の収入金額、医療費の支払額などのデータを自動で取り込み、簡単な操作をすることで申告が完了する仕組や、チャットポッドなどを活用し、税務署にいかなくても相談が受けられる体制作り、納付手段の多様化とキャッシュレス納付の推進などが想定されている。このほか、税務調査はAIやデータ分析ツールなどを活用し、申告内容や調査事績、資料等の情報のほか、民間情報機関や外国政府から入手する情報など、膨大な情報リソースを統計学や機械学習等の技術を用いてデータ分析を行うBA(Business Analytics)ツールを用いた調査対象の抽出などが示されている。

国税庁「リモート調査」の実現に取り組む

ここまではこれまでの机上調査の範囲だが、実地調査においても「リモート調査」の実現に取り組むとしている。
国税庁では、税務調査の効率化を進める観点から、令和2年7月から大規模法人を対象にWeb会議システムなどを利用したリモート調査を実施している。リモート調査は、国税当局の調査担当者が、セキュリティの高い特定専用回線から調査法人のネットワーク回線に入り、サーバーのデータやWEB会議の情報などを収受できるようにするなど、質問検査権のもと、調査法人内の情報すべてにアクセスできるようにすることなどが想定されている。

リモート調査の例

「Web会議システム」の活用も視野に

今後のDXの取り組みにおいて国税庁は、必要な機器や環境の整備を進め、リモート調査のさらなる拡大に取り組むとしており、一つの例としてWeb会議システム利用を取り上げている。

Web会議システムの活用の例

ただ、WEB会議システムを利用する場合は、①税務調査では機密性の高い情報のやり取りが行われることやシステムの脆弱性に起因するリスクがあることを相手方が理解していること、②調査法人が、通常業務において機密性の高い情報のやり取りを含め当該Web会議システムを利用していること、③調査法人の管理・支配する場所等において、相手方の使用に供する機器・接続環境を利用してセキュリティポリシーの範囲内で活用するなどを挙げている。
このほか、照会等のオンライン化では、これまで書面や対面により多くの手続きを踏んで行っていた金融機関への預貯金照会(令和3年10月〜)や、税務調査における必要な資料の提出(令和4年1月〜)について、オンライン化を図るとしており、リモート調査拡大への土台づくりを進めている。
国税庁では、こうした将来像を実現するため、基幹システムのKSKシステムを刷新し次世代システムを開発、データ分析を行うことのできる人材育成に力を入れている。

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