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最終更新日:2024-04-20

英和グループが実践するDX戦略 中小企業の”デジタル経理部”に

  • 2024/04/20
英和グループが実践するDX戦略 中小企業の”デジタル経理部”に


会計事務所業界は、慢性化した人手不足、業務の属人化、低い生産性などの問題を抱えており、その解決策としてデジタル化が期待されている。そうした中、税理士法人を中核とした英和グループが顧問先との間で展開するデジタル化と、それに伴うペーパーレス化によるDX化は、多くの事務所の参考となる実践事例になりそうだ。

「中小企業に経理はいらない」をポリシーに掲げる

英和グループ(東京・品川区)は、顧客に最適なソリューションを提供するコンサルティング会社、デジタル化とペーパーレス化を推進しながら実務レベルで経理周りの業務を代行する経理代行会社、そして税理士法人3社による3本柱で、ワンストップでサービスを提供できることを強みとしている。
「中小企業には経理は要らない。本業に集中して、業績改善・拡大を図るべし!」をポリシーに掲げ、グループ全体で中小企業の“デジタル経理部”としての役目を担うためのサポート体制構築を目指している。

経理代行会社「TOKYO経理サポート」が展開するDX支援

その3本柱のひとつ、経理アウトソーシングのための「TOKYO経理サポート」は、作業レベルの自動化とペーパーレス化、会計事務所職員の教育と情報共有を目標に掲げ、「経理を変えると、会社が変わる!」をキャッチフレーズに、様々な経理代行業務を「Smartおまかせ経理」というサービス名称で仕組み化した。
まずはネットバンキングの活用で、顧客からネットバンキング閲覧権限を預かり、入出金データを自動仕訳する。売上や仕入の計上も、顧客が利用する販売管理システム等のデータから仕訳化できるようにし、可能な限り手作業での仕訳処理が発生しないよう、効率化とミス防止の工夫をしている。
また経費精算については、システム導入顧客はデータを入手して自動処理。非導入顧客は英和グループが提供する独自の経費精算ファイルにより自動仕訳処理ができる。
勤怠管理システムを導入する顧客の場合には、勤怠データをダウンロードして給与計算処理を行い、顧客には給与統計表をデータ提供、社員にはWebで給与明細を提供する。給与の送金処理については、データをネットバンキングに登録して、顧客の社長承認を待つ仕組みだ。源泉所得税や地方税は、電子納付で対応することでペーパーレスを実現させている。
面倒な売掛金消込代行の自動化も、ネットバンキングを使うことで実現。販売管理システム導入顧客には、リモートでシステムに入る権限を付与してもらい、ネットバンキングデータと照合して消込を行う。また、件数の多い顧客にはRPA型の自動消込システムもある。請求代行のデジタル化については、顧客からの得意先別請求一覧により、エクセル形式のインボイス対応請求書を作成して発送までを代行する。
このように、中小企業特化型の経理代行システム「Smartおまかせ経理」は、記帳から給与計算、明細Web配信、振込・支払・電子納税、年末調整、売掛金の消込までのデジタル化、ペーパーレス化を推進し、「企業に最適な経理アウトソーシングを実現させました」(北田唯我英和コンサルティング株式会社代表取締役)と語る。
中小企業の人材不足、経理担当者の高齢化などを背景に、経理代行ニーズは今後も高まっていく。そのためにも、TOKYO経理サポートではスキャン代行業務なども加えて、デジタル化を促進させ、完全ペーパーレスを完了させる予定で、さらにサービス内容の拡充を図っていく計画だ。

徹底したセキュリティ対策と社員教育でデジタル化を推進

経理業務に大きな影響を及ぼす改正電子帳簿保存法には、会計専用機メーカーのクラウドシステムを利用する同グループでは、現時点で帳簿保存、電子取引データ保存、スキャナ保存の3種に対応している。電子帳簿保存対応の総勘定元帳と仕訳日記帳などを、生涯保存ができる記録メディア「M-DISC」に収めて提供することで、従来のように紙の分厚い総勘定元帳がなくなり、顧客に喜ばれている。申告書データもPDF化して納品・保管している。
デジタル化の推進で忘れてならないのは事務所の情報セキュリティ対策だ。メールやインターネットの利用、物理的な情報の持ち出しや保管・破棄、さらには職員教育など、セキュリティ対策で重要な項目がおろそかにならないよう、同グループでは体制を徹底させている。ネットワーク関連では、サーバーに顧客別の情報(基本情報、月次決算、業務種別内容など)をルールに基づいて保管する。また、特定個人情報(マイナンバー)の管理やカード認証による入退出管理面も強化。
特筆すべきは職員教育で、情報共有と活用が自然な形で進む仕組みを作っており、マニュアルを前提としたOJTとテーマ別研修も実施するなど、一貫したデジタル化への取り組みが際立っている。

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