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最終更新日:2021-03-07

秋からの税務調査で「重加」狙いが増えるワケ

  • 2021/03/07
秋からの税務調査で「重加」狙いが増えるワケ

恒例となっている毎年7月の国税当局の人事異動。これが済んだ頃から税務調査が本格化していく。

国税職員の勤務評定と上司の評価が影響

税務署から届く税務調査の通知。人事異動終了後の“調査秋の陣”では、以前に増して「重加算税(重加)狙い」の調査が増えることが予想される。理由は、加算税制度の見直しの影響もありそうだ。

なぜ、加算税制度が見直されて、「重加狙い」となるかー。

国税OB税理士の話を総合してみると、「通常、新たな制度が導入されると実績を残さなければならない」「事例を集めて、分析していくことになる」ことから、重加算税を積極的に取りにいかざるを得ないという。

また、国税職員の勤務評定として、税務調査においては重加算税賦課のポイントが高く、増差金額が高いよりも、金額が低くても重加算税を賦課できたほうが上司の評価が高くなるからとされる。

ここで、改めて加算税制度について紹介してみる。

以前と変わっているのは以下の2点。

(1)調査通知を受けて修正申告等を行う場合の加算税制度の見直し

(2)短期間に繰り返して無申告または仮装・隠蔽が行われた場合の加算税の加重措置の導入 (1)については、「調査通知」した後から「更正の予知」までの間に修正申告等が行われた場合、従来は加算税が賦課されなかったが、過少申告加算税の割合については5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%)とし、期限後申告または修正申告に基づく無申告加算税の割合については10%(納付すべき税額が50万円を超える部分は15%)が加算税として賦課されるようになった。

「実績と事例の積み上げ」が要因?

さて、「重加算税問題」に関しては、(2)の領域になるわけだが、簡単に説明すると、過去5年以内に無申告加算税または重加算税を賦課された者が、再び「無申告」または「仮装・隠蔽」に基づく修正申告書の提出等を行った場合、加算税を10%加重されことになった。

つまり、5年以内に2回、無申告加算税または重加算税となると、加算税にプラス10%上乗せされるわけ。重加算税は35%(40%)なので、加重されると45%(50%)とかなり厳しいペナルティとなる。(*カッコ書き部分は無申告加算税に代えて課されるもの)

なぜ、このような厳しいペナルティが設けられたかというと、現行の重加算税は、「無申告」または「仮装・隠蔽」が行われた回数にかかわらず一律であるため、意図的に「無申告」または「仮装・隠蔽」を繰り返す者も少なくない。そのため、悪質行為を防止する観点から加重措置が設けられている。 (2)が設けられたことで、税理士として注意しておくべきことは、重加算税を賦課されたクライアントについては、2回目の重加算税を狙い、ほぼ5年以内に税務調査が実施される可能性が高いということだ。国税当局としては「実績を残し、事例を積み上げていく」必要があり、2回目の重加算税を何としても取りたいと考えるのが自然の流れとなりそうだ。

秋からの税務調査で「重加」狙いが増えるワケ

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