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最終更新日:2021-03-26

海外子会社に出向者した社員の給与を親会社が負担したら?

  • 2021/02/18
  • 2021/03/26
海外子会社に出向者した社員の給与を親会社が負担したら?

新事業年度がはじまる4月、海外の子会社に出向する者も少なくない。注意したいのが、出向者に対する給与負担金の問題だ。税務調査で問題となるケースが多く注意が必要だ。

全額海外子会社で負担するのが原則

親会社の社員が、出向先の海外子会社で業務に従事する場合、その社員の給与は、全額海外子会社で負担するのが原則だ。しかし、地域によっては、日本と現地の給与水準に大きな開きがあるため、親会社が海外子会社との間の給与の差額を補填し、支給することがある。この場合、補填した差額分は、親会社が損金算入することになる(法人税基本通達9-2-47)。

また、海外子会社に勤務する現地採用の社員の中で、出向社員と同様の業務を行い、同程度の役職であるならば、その社員の給与相当額を海外子会社で負担し、較差部分を日本の親会社が負担するとしたら、親会社の負担額は損金算入できる。

一方で、子会社が負担すべき出向社員の給与を親会社が負担した場合には、その金額は「国外関連者に対する寄附金」とされ、損金不算入となる。親会社が負担する金額が、給与較差の金額を超えている場合や、親会社の負担額に明確な根拠がない場合も、寄附金と判断される可能性が高い。

海外子会社に出向者と同じ職位の社員がいない場合は、同じ職位の社員を海外子会社が現地で採用したとした場合の給与を算定し、その給与の額との差額を親会社が負担することが肝要だ。

過大な留守宅手当は、寄附金課税にご注意

税務調査対策という意味では、出向契約書に給与の負担関係を明記するとともに、現地採用者の給与テーブルなど現地での給与水準を説明できる客観的な資料を準備し、親会社が負担する較差補填金の額が妥当であることを説明できるようにしておく必要がある。

また、法人税基本通達9-4-27(注)2においては、「出向先法人が海外にあるため出向元法人が支給するいわゆる留守宅手当の額」も較差補填のために支給したものと認められるとしている。

実務上、海外出向者に対して現地の給与水準に基づく給与の額を海外子会社から支給し、較差の補填部分を留守宅手当として日本の銀行口座に振り込むといった方法がよく採用される。基本通達では、留守宅手当がいくらまで認められるかには触れていないが、留守宅手当の名目で支給すればいくら支給しても認められるというわけではない。あくまで、較差補填金の一環として認められたものと考えられ、海外子会社において現地水準の給与を負担した上で、留守宅手当の額を決めることが不可欠と考えられる。過大な留守宅手当は、国外関連者に対する寄附金として課税される可能性が高い。

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