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最終更新日:2021-03-26

会計事務所 手付かずの中小企業の事業承継マーケット

  • 2021/02/18
  • 2021/03/26
会計事務所 手付かずの中小企業の事業承継マーケット

経営者が高齢化していく中、後継者が見つからない中小企業が多い。こうした中、コロナ禍の影響で、事業承継をあきらめ、廃業してしまう中小企業が増えてきたという。中小企業庁の試算によると「中小企業廃業の急増により、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性がある」としている。中小企業が関与先である会計事務所としては見過ごせない問題だ。

休廃業・解散した企業は過去最多

東京商工リサーチによると、2020年(1-12月)に全国で休廃業・解散した企業(以下、休廃業企業)は、4万9698件(前年比14.6%増)。これまで最多だった2018年(4万6724件)を抜き、2000年に調査を開始以降、最多を記録したとしている。

休廃業した企業の代表者の年齢を見てみると、41.7%が70歳代で、60歳以上になると84.2%と8割を超える。社長の高齢化が休廃業・解散を加速させていることが分かる。

倒産にカウントされていないが、休廃業した企業の中には、コロナ禍が全国に広がり、少なからず休廃業・解散の決断を促す契機にもなったようだ。

(出典:東京商工リサーチ)

東京商工リサーチの調査では、休廃業・解散と倒産の合計は5万7471件。これを「経済センサス活動調査」(2016年)にある国内の企業数358万9千から単純計算すると、約1.6%が2020年に市場から撤退・消滅したことになる。

何とか救いたい黒字廃業

こうした状況に政府も、成長戦略において中小企業の事業承継に関しては、取組みを強化している。例えば、「平成30年度税制改正」では、事業承継の際の贈与税・相続税の納税を猶予する事業承継税制について、「今後5年以内に特例承継計画を提出し、10年以内に実際に承継を行う者」を対象として抜本的に拡充するとした。また、2018年7月に中小企業等経営強化法及び中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律の一部改正が施行され、M&A等再編による事業承継への措置や、親族外承継時の資金ニーズへの対応が追加された。

東京商工リサーチによれば、廃業する企業の約半数が経常黒字だ。なぜ優良企業が廃業しなければならないのか。事業がジリ貧になっているわけではなく、後を受け継ぐものがいないため、仕方なく廃業を選ぶ経営者が増えているという。環境変化に応じて企業に新陳代謝が必要なのは言うまでもないが、十分に将来性のある企業までもが消えてゆく事態は見過ごせない。会計事務所にとっても、事業承継対策に力を入れることはビジネス拡大につながるほか、顧問先を守るためにも重要なサービスということを強く意識しておきたい。

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