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最終更新日:2021-02-28

国税庁の気になる富裕層基準 相続での取得財産などにも目安か?

  • 2021/02/28
国税庁の気になる富裕層基準 相続での取得財産などにも目安か?

国税庁は1月、令和元事務年度(令和元年7月~令和2年6月)の調査事績を公表した。コロナ禍の影響で調査件数は減少したものの、大口・悪質と思われる調査事案は、1件当たりの追徴税額が軒並み増加した。とくに富裕層に対する調査では成果を上げており、追徴税額では過去最高となった。国税当局が富裕層と位置付ける基準というのは、どのレベルなのかその基準に迫ってみた。

昨年度の富裕層調査で過去最高の追徴額

国税庁が毎年掲げる重点目標には、富裕層調査が入っており、専門部署が情報収取に力を入れている。

その成果も毎年上がっており、令和元事務年度は、富裕層に対する調査は、1件当たりの追徴税額が 581 万円で、所得税の実地調査全体の222 万円の2.6 倍。追徴税額の総額は259 億円で過去最高を記録した。

特に、海外投資等を行っている富裕層は、前年より77件多い936件の調査を実施し、1件当たりの追徴税額は 1571 万円で、所得税の実地調査全体に比べ 7.1 倍も高額だった。

国税庁では、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、「国外送金等調書」「国外財産調書」「租税条約等に基づく情報交換制度」のほか、「CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)」などを効果的に活用し、積極的に調査を実施している。

公には出せない富裕層基準の目安も存在する!?

では、国税庁が基準にする富裕層だが、どのレベル資産家を富裕層と位置付けているのか。公になっている資料によると「有価証券や不動産などの大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人」としている。「大口所有者」「所得が高額」と定義しているものの、具体的には示しておらず曖昧だ。個人の考え方によって、富裕層が変わってしまう可能性があるが、実は公には出さない目安はあるようなのだ。

現職時代には、当局の資産税部門で活躍していた国税OB税理士の声を集めてみると、その全容が見えてくる。

例えば、

  • 有価証券の年間配当4千万円以上、
  • 所有株式800万株(口)以上、
  • 賃金の貸付元本1億円以上、
  • 不動産所得1億円以上、
  • 所得合計額が1億円以上、譲渡所直及び山林所得の収入金額10億円以上、
  • 取得資産4億円以上、
  • 相続などの取得財産5億円以上、
  • 非上場株式の譲渡収入10億円以上、または上場株式の譲渡所得1億円以上
  • 継続的に大口の海外取引がある者

これらの情報は、OB税理士からの情報をまとめたものだけに、現状どこまで当てはまるのか分からないが、大枠は外れていないと思われる。東京国税局では、超富裕層は課税1部資料調査課で調査。大物政治家も容赦なく調査する。富裕層に対する調査は今後も深度のある調査が実施される。

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