最終更新日:2021-05-21
リスケジュールを卒業するためには何が必要か
- 2021/05/14
- 2021/05/21
監修者
徳永 貴則
(株)スペースワン 代表取締役 金融税理士アドバイザー講座主宰
大和銀行(現りそな銀行)にて、都内を中心に主に法人融資の新規開拓業務を行う。その後、本店融資部・審査部門を歴任。2,000社以上の融資に携わる。これらの経験を活かし㈱スペースワンを創設。銀行融資のコンサルをはじめ、事業再生や経営改善のアドバイスも行っている。
また、金融税理士アドバイザーの専任講師としても活躍中。
今月から公庫・商工中金にて「資本性劣後ローン」の取り扱いが開始になりました。
顧問先からも問い合わせが多いと思います。
この制度は結論から言えば、導入のハードルはかなり高いです。
理由として
〇本当に今の苦境がコロナ禍が理由か
〇10年、15年、20年先の計画値が組めるか?(事業承継も絡むでしょう)
〇期日に一括返済が本当にできるのか?
通常の借入の審査と違って、本部にて専門チームが審査を行うようです。
まだまだ情報が不足していることから、どのくらいのレベルなら導入できるか分かりませんが、安易にこの制度にチャレンジすることは避けたほうがいいでしょう。
ご存知だとは思いますが、この制度には「認定支援機関が作成した経営改善計画書」と取引行からの金融支援が条件になります。
私としても今後情報が入りましたら本制度についても情報発信を行っていきます。
資金繰りがきつくてやむを得ずリスケジュールを選択した企業においては、いつどうやったら銀行取引が正常化されるんだろ?と疑問に思う方も多いと思います。
また、「リスケ慣れ」しないためにも「リスケ卒業目標」を立てるために、どの数字がどういった基準までいけばよいのか?知りたいはずです。
今回は「リスケの卒業とは、リスケの出口戦略」についてお話をします。
▽リスケジュールの卒業とは新しい融資を受けられることが条件
「リスケの卒業」とは何か?とは諸説ありますが、私は「新たに借り入れができる状態になること」を「リスケの卒業」・「リスケの出口」と呼んでおります。
では、「新たに借り入れが出来る状態」とはどういった状態か
ずばり、債務者の信用格付けが「正常先」になること!これに尽きると思います。
(資本性ローンや、コロナ特別融資など特殊ケースは除きます)
「正常先」になるための指標は「実質長期負債返済年数」!
「正常先」になるためには、3つほどの数値要件がありますが、ここではひとつだけ簡略的に指標をお話しします。
「実質長期負債返済年数」が「10年以内」になること!
これが一番の指標です。
「実質長期負債返済年数」=(「総借入額」-「運転資金借入額※1」)÷「実質CF※2」
※1「運転資金借入額」=「売掛金・受取手形」+「在庫」ー「買掛金・支払手形」
※2「実質CF」=「経常利益×70%」+「減価償却費」
数式が難しく感じる方も多いと思いますが、この数式の意味は利益で返済すべき借り入れに対して、年間のキャッシュフローで返済すると何年で返済できるか?を表しています。
運転資金の借入はキャッシュフローで返済はしないのが銀行融資の基本ですので、全ての借入額から運転資金相当分は差し引きます。
残った借入額に対して、CFの力で「10年以内」に返済が可能な水準になっていれば、「正常先」の要件を満たせます。
(この数値だけで絶対とは言えませんが、有力な指標にはなります)
残った借り入れの中身は過去に設備投資で借りた借入や赤字を埋めるために借り入れた赤字補填資金がほとんどだと思います。
残りを何年で利益償還できるか?が正常先と要注意先の分岐点になるので、ひとつの基準として参考にしてください。
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税界よもやま話
元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。