最終更新日:2021-05-20
中小企業にも『コミットメントライン』の提案が増えてきている!
- 2021/05/14
- 2021/05/20
監修者
徳永 貴則
(株)スペースワン 代表取締役 金融税理士アドバイザー講座主宰
大和銀行(現りそな銀行)にて、都内を中心に主に法人融資の新規開拓業務を行う。その後、本店融資部・審査部門を歴任。2,000社以上の融資に携わる。これらの経験を活かし㈱スペースワンを創設。銀行融資のコンサルをはじめ、事業再生や経営改善のアドバイスも行っている。
また、金融税理士アドバイザーの専任講師としても活躍中。
先日の日経新聞にてコロナ融資の「据置期間」についての記事がありました。
コロナ融資では制度上では最長5年間の据え置き期間が認められておりますが実際に借り入れできた企業の実態は
公庫 →据置期間1年以内が全体の66%
保証協会→据置期間1年以内が全体の56%
とのデータが中小企業庁から出ております。
つまり、コロナ融資を借入した企業の半分以上はもうすぐ返済が開始されることになります。
コロナ前に借り入れした返済に加えてコロナ融資の返済も始まることになり、売上回復がされたとしても資金繰りはかなり切迫してくるのが明らかです。
(コロナ枠増額にて借り換えをし、再度据え置き期間を得る手法もあります)
私達としては顧問先の当面1年間の資金繰り計画に最大の注意を払う必要があります。
資金が不足してしまってからでは手は打てません。
確定申告の多忙時期ではありますが、顧問先への十分な目配りをお忘れなきようにしてください。
このコロナ禍で売上確保に苦労している企業も多いかと思います。
手元資金を確保するためには「融資」を受けることが一番の手段になります。
しかし、同じ「融資」でも資金確保には様々な手法があります。今回は「コミットメントライン」という融資手法の提案が銀行から増えてきているお話をさせて頂きます。
「コミットメントライン」とは「当座貸越」の一種です。
コロナ禍の中で大企業が手元資金を確保するために、メガバンクに手元資金を確保するために「コミットメントライン○○億円を設定した」などのニュースを見た方もいるかと思います。
コミットメントラインとは、企業が銀行から○○億円等の資金を自由に使える極度枠を与えてもらうことを言います。
(期間は基本的に1年で金額も含めて1年後に見直しというケースが多いです)
極度枠いっぱいにお金を使うことも自由ですし、今は手元資金があるので敢えて極度枠を使わないのも自由です。
「コミット」とは「約束」の意味で、銀行がその金額を企業に供与することを約束するものです。
「当座貸越」とは何が違うのか?
一般的な「当座貸越」では使った分の金額と期間に応じて「利息」を支払うことになります。「コミットメントライン」でも使った分の「利息」を払うのは当然ですが、極度枠を仮に使わなかったとしても「コミットメントライン」では「手数料」を支払う必要があります。
「手数料」とは約束した金額を使う権利を企業に供与する対価として支払うものです。つまり、借りていなくても「安心料」として「手数料」を払うわなければなりません。
また、コミットメントラインは通常の当座貸越契約にコミット契約をすることから「組成料」が発生するケースもありますので、コストの観点から言えば、通常の「当座貸越」よりは高くなるイメージです。
(あくまで企業の信用力と連動するので、金利とのオールインコストとの比較が必要です)
なぜ中小企業に「コミットメントライン」の提案が来るのか?
大企業ならともかく、なぜ中小企業に対して、通常の「当座貸越」ではなく、「コミットメントライン」の提案をしてくるのか?
勘の言い方はすぐに気づいたと思いますが、銀行の狙いは「手数料収益」です。
「利息」だけでなく「手数料」も得たいがために、提案してきていると思います。
以前にもお話しした「社債」の提案と同じ理屈です。
ただし、コミットメントラインでは「コベナンツ契約(財務制限条項)」も併せて入れてくる可能性もあることからよくよくご検討してください。
「いいね!」をしよう
- 最新情報をお届け!
- Follow @kaikeihaku
- Tweet to @kaikeihaku
クローズアップインタビュー
会計業界をはじめ関連する企業や団体などのキーマンを取材し、インタビュー形式で紹介します。
税界よもやま話
元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。