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最終更新日:2021-03-26

「医療特化事務所として常にトップランナーでありたい」  ―初の「医療経営士認定試験1級」に合格―

  • 2014/02/01
  • 2021/03/26
「医療特化事務所として常にトップランナーでありたい」  ―初の「医療経営士認定試験1級」に合格―

東日本税理士法人副所長 長 英一郎公認会計士・税理士

「病院経営の意思決定をサポートする高い専門性を発揮したい」

全顧問先の9割が医療機関と、医療特化事務所として有名な東日本税理士法人(東京・新宿区)。(一社)日本医療経営実践協会が実施した「医療経営士」の資格取得に力を入れており、このたび第1回「1級試験」に、副所長の長英一郎社員税理士が合格。ちなみにこの1級は、全国でわずか7名しか合格していない。今年度の経営目標として職員20名の「1級合格」を宣言、差別化でさらなる医療経営特化事務所を目指すという。長氏に新たな事業構想と戦略を聞いてみた。

比較的新しい認定資格である「医療経営士」になぜ、着目したのでしょうか。

診療報酬の改定など、医療機関を取り巻く経営環境の安定化が課題となるなか、医療特化事務所を目指す事務所として、より実践的な医療コンサルティングを行うためにも、この資格取得は喫緊の課題と考えていました。とくに、関与先の医師や看護師とコミュニケーションをとるためには、現状の税務・会計を中心とした経営指導だけでは限界がある。医業経営に変革をもたらすには、現場の医療従事者の経営数字への意識をも変えていかなくてはなりません。そこでは当然ながら、医療経営に関する知識が求められます。病院関与の担当職員は経理部長と話ができても、病院トップの理事長にはなかなか会えないのが現状でした。そこで、医師らとの距離感をより縮めるためにも、2010年10月に誕生した(一社)日本医療経営実践協会の資格認定試験に注目したわけです。

あえてこの資格を選んだ理由とは。

公益社団法人「日本医業経営コンサルタント協会」の医業経営コンサルタントもありますが、医療経営士は医業経営コンサルタントよりも病院勤務者が多く受験しているときいたので、この資格試験の導入を決めました。医療経営士有資格者を増やすことで、クライアントである病院にも受験を薦められるかと。
医療経営士認定試験は、ベーシックな「3級」から「2級」「1級」へとステップアップする仕組みで、「3級」試験であっても、医療・医療経営に関する基礎知識、医療経営史、医療法規・医療行政、医療界・医療機関の構造等、実に幅広い知識が求められます。

まずは全員で試験を受験しようと号令をかけたそうですね。

はい。職員30名のうち、事務職員を除いた25名には「3級」を合格してもらおうと考えました。まず、所長の長隆(70歳)が率先して受験し、合格した(当時最年長合格)ことで事務所全体の雰囲気ががらりと変わりました。また、「医療経営士3級合格」を正社員採用の条件にしましたので、医療経営に関心のある職員が入社することになり、ベテランの職員にも刺激になったのではないかと思います。現在は、事務職員を除く担当職員がほぼ「3級」を取得しており、「2級」合格者も7名います。私自身も、年3回ある「3級試験」の第2回目から受験し、約2年で年末に初めて実施された「1級」の認定試験に合格しました。会計業界で初の1級合格者だと思われます。

まずは全員で試験を受験しようと号令をかけたそうですね。

はい。職員30名のうち、事務職員を除いた25名には「3級」を合格してもらおうと考えました。まず、所長の長隆(70歳)が率先して受験し、合格した(当時最年長合格)ことで事務所全体の雰囲気ががらりと変わりました。また、「医療経営士3級合格」を正社員採用の条件にしましたので、医療経営に関心のある職員が入社することになり、ベテランの職員にも刺激になったのではないかと思います。現在は、事務職員を除く担当職員がほぼ「3級」を取得しており、「2級」合格者も7名います。私自身も、年3回ある「3級試験」の第2回目から受験し、約2年で年末に初めて実施された「1級」の認定試験に合格しました。会計業界で初の1級合格者だと思われます。

医療特化事務所としての優位性がますます発揮された格好ですね。

今から3年前くらいまでは、他の医療特化型事務所と同様に、医療法人の税務や会計、特定医療法人に絡む相続・事業承継など、税を切り口とした医療機関への戦略を重視していました。しかし、同じ土俵で他の事務所と勝負するのではなく、そこから一歩抜け出すための戦略として、税務や会計以外の医療制度や診療報酬に関する情報提供をすることを考えました。税制改正や医療法改正だけでなく、診療報酬改定や介護報酬改定に関する情報を提供することで、将来の方向性を担当者が経営トップと一緒に考えます。月次の訪問時には、財務データ(医業収益、人件費率など)だけではなく診療データ(平均入院日数、重症患者割合など)の読み方、活用方法を助言することで、経営改善の切り口を探ります。 
実際、介護老人保健施設(老健)を担当している税理士は、医業収益や人件費率だけでなく、入所率や在宅復帰率(老健から自宅等に退所した割合)などを月次段階から把握しています。病院経営の意思決定をサポートする高い専門性を発揮すれば、ますます優位に立てる。そういったツールとして「医療経営士」を有効に活用していきたいと考えています。

医療機関を取り巻く環境は全体的に厳しい状況にあります。

小泉政権下での医療政策が医療機関にとっては大きな痛手で、経営体力の乏しい中小病院は急激に経営が悪化してきています。M&Aや事業譲渡に至らないためには、経営方針をしっかり確立していかなくては、今後も閉院・解散は減らないでしょう。そうした病院の経営改善に対するニーズは高まってきているのですが、肝心の会計事務所に相談すると、節税を含めたコスト削減は提案できても、収益アップにつながる入院・外来単価や患者数の増加にまで踏み込んでアドバイスできる事務所は極めて少ないのが現状です。採用時に会計士や税理士であっても「3級資格保有」を条件にしたのも、会計や税務の枠にとどまらない幅広い提案やアドバイスができるようにするためです。医療経営士3級だけでは現実的には経営改善指導は難しいので、今後は医業収益の中身(診療報酬、介護報酬)に踏み込んだ2級、1級の資格保有が求められていくと考えています。

なるほど。資格試験の受験に会計事務所が増えてきた点も理解できます。

関与先の医療機関の平均売上は、20億円から30億円規模(ベット数150から200程度)の病院が全体の約8割を占めており、残りが診療所・クリニック。規模に比例して所得も出ており、税務リスクも高くなっています。先般の公益法人改革に伴って誕生した「社会医療法人」は、法人税、固定資産税のほとんどが非課税の医療法人。社会医療法人に移行する法人が増えると、税務ニーズの大部分がなくなる。弊法人が社会医療法人移行コンサルティングを行うと、会計・税務以外の経営助言が求められることになるのです。顧問先の現場では、税務以外の改善提案を求められてきましたが、これといった有効的な改善策を提案できない歯がゆい状況に何度か遭遇してきました。「事務所として税務以外に何も武器を持っていないと」というその時の苦い経験が、「医療経営士」の資格取得に弾みがついた大きな要因ともなっています。

今後の展開については。

東日本税理士法人副所長 長 英一郎公認会計士・税理士

今年度は、現場を知ることに力を入れていきます。先進的な取り組みを行っている病院や老健を見学します。学校形式で在宅復帰の取り組みを行っている「おとなの学校」を見学し、とある大阪の病院で看護師1日体験を行います。継続研修として研修医が観るような医学DVDを常時閲覧できるようにします。
医療経営士2級を合格した場合にはインドやシンガポール等、海外の病院研修の機会を与え、資格取得をバックアップしていきます。とくに東南アジアにおける医療法人の海外進出の支援には、26年医療法改正後、事務所として積極的にサポートしていく予定です。

東日本税理士法人副所長 長 英一郎公認会計士・税理士

 

「医療特化事務所として常にトップランナーでありたい」  ―初の「医療経営士認定試験1級」に合格―

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