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最終更新日:2023-04-10

Vol.5 お客様から負動産の相談を受けたときの対応 いよいよ始まる「相続土地国庫帰属制度」

  • 2023/04/04
  • 2023/04/10
Vol.5 お客様から負動産の相談を受けたときの対応 いよいよ始まる「相続土地国庫帰属制度」

監修者

松尾 企晴

松尾 企晴

Land Issues (株)代表取締役

不動産コンサルティング会社のプロサーチ(株)に中途入社し、2017年より代表取締役に就任。不動産、遺産相続事業の活動を通して見えてきた課題に取り組むべく、2020年にLand Issues(株)(ランドイシューズ、東京・千代田区、HP:https://land-issue.com/)を設立。また、税理士ら士業・専門家向けコミュニティ「プロサーチ遺産相続実務倶楽部」を運営。土地に新たなる価値を作り出し、未来へつなげる事業を展開中。

相談者の実態

前回の記事で、民間企業による負動産の引き取りについてお伝えしました。

国も民間企業も“負動産”を引き取ってくれるようになり、これまで手放す方法がなく途方に暮れるしかなかったお客様にとって朗報です。

しかし、普段から情報キャッチアップしている専門家と違い、一般のお客様はこのような情報を知らない、知っていても誰に相談したらいいのか分からないままの可能性があります。この記事を読むと、負動産を取得した原因やご相談があった時の対応方法がわかります。

子に残したくない

直近3ヶ月で負動産に悩む100名以上の方からご相談を受けてきました。

相談者様の約60%は70歳~80歳の親世代、その他は子世代20歳~60歳と幅広い層で、その方々からアンケート(令和4年12月~令和5年2月までのアンケート集計、実施者LandIssues株式会社)を取ると取得原因や手放したい理由が見えてきました。

取得原因

相続で取得したが全体の60%とダントツです。

不動産を手放す理由

【5%のところ】

・子など家族から処分して欲しいと言われた

・相続のたび、相続税や相続登記等の費用が掛かるから今のうちに処分したい

・別荘管理費などの維持負担

・固定資産税などの税負担

相続したけど使う予定もなく自分の代で処分したいというお客様が多いことがわかりました。実際にとにかく子に残したくないという切実な願いを痛いほど感じます。特に原野商法の土地を購入してしまった親の処分したい願いは更に強い印象です。

相談を受けたときの対応

専門家が売れない貸せない不動産の処分の引き取りを相談されたとき、私どもの経験から次のようなヒアリング、対応をしてみてはいかがでしょうか。

ヒアリング

  1. なぜ処分したいのか(動機)
  2. 売却活動したことがあるかどうか(負動産判断)
    • -1 したことがある:価格を1万円などとしても売れないのか
    • ―2 したことがない:不動産会社にマーケット査定してもらうのはどうか
  3. 国や民間企業で有料引き取りがあるが興味はあるか

※お金を支払ってでも処分したいかどうか

ヒアリングの際、所有時の問題(第1回目記事)についても伝えましょう。

(1)相続のたび費用がかかる

(2)遺産分割で押し付け合う、共有になる

(3)固定資産税や管理費の負担

(4)詐欺の対象となる

(5)崖崩れや倒壊等による所有者の管理責任

相談や見積もりに必要な必要情報、資料

・固定資産税課税明細書
・土地や建物の全部事項証明書
・公図
・所在地が分かるもの
・別荘地等の場合は管理費、規約
・定期的に費用負担しているもの(雑草処分費用等)

処分までの進め方

ご相談者様の動機や現状を把握し、次のようなステップで進めていきます。

【ステップ1】不動産マーケット調査
・売買、賃貸、有効活用の視点で簡易調査、近隣業者へのヒアリング

【ステップ2】売却活動
・まず買取事業者へアプローチ

 買取可否や価格の確認する。

結果を基に、そのまま売却するか、エンドユーザーに向けて売却するか決める。

・次にエンドユーザーへアプローチ

インターネット掲載、看板設置、隣地地権者へアプローチなどをおこなう。

【ステップ3】寄付
・地方自治体や、財団法人に打診する。

【ステップ4】有料引き取り
相続土地国庫帰属、引き取り事業者の条件や見積もりを確認する。

負動産だからと調査や売却活動等しないのではなくこのようなステップを踏み進めていくことを推奨します。理由は、売れるものなら売りたいというお客様の納得感のためです。

まとめ
これまで売れない貸せない負動産は、相続放棄か相続税の物納などに解決手段が限られ、そしてそれを実行できる人は少ないのが現実でした。読者の方は、相続土地国庫帰属や引き取り事業者のことを知り、解決方法はあるんだと分かっていただいたかと思います。

しかしお客様はこの制度を知る機会が少ないのと、知ったとしても誰に相談できるのか分かりません。ご相談がくるのを待つのではなく、専門家側から情報をお届けすることをしていきたいですね。

相談先によっては代理取得してくれるケースもありますから確認ください。
Vol.5 お客様から負動産の相談を受けたときの対応 いよいよ始まる「相続土地国庫帰属制度」

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