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最終更新日:2024-03-23

一般社団法人 共創経営推進機構(COMBO) 会計業界に新風吹込む共同体 事業活動の成否握るカギとは…?山本要輔代表理事に聞く?「企業の倒産防止にどれだけ協力し合えるか」

  • 2024/03/23
一般社団法人 共創経営推進機構(COMBO) 会計業界に新風吹込む共同体 事業活動の成否握るカギとは…?山本要輔代表理事に聞く?「企業の倒産防止にどれだけ協力し合えるか」

「中小企業の成長・発展を支え、税理士の力で倒産リスクを限りなく減らしたい」。そんな熱い志を持って九州の会計事務所を母体とする4社が立ち上げた(一社)共創経営推進機構(通称:COMBO)が4月より本格活動を開始している。それぞれ専門分野が異なる(株)IGブレーン(長崎・長崎市、代表取締役=野口雄介氏)、税理士法人アイユーコンサルティング(東京・豊島区、代表社員=岩永悠氏)、税理士法人アーリークロス(福岡・福岡市、代表社員=小西慎太郎氏)、(株)優和マネジメント(熊本・熊本市、代表取締役=岡野訓氏)が共同出資した事業体の設立は全国でも珍しいケース。同協会の代表理事を務める(株)IGブレーンの山本要輔氏に、設立の経緯から目的、事業活動などについて聞いてみた。

ひとつの会計事務所で出来る業務支援の限界

―そもそも社団組織を発足させようとしたきっかけからお話ください。

山本 2年ほど前から設立の準備を進めておりましたが、きっかけとしては、ひとつの会計事務所で出来る業務支援の限界を感じた事が大きいです。私の所属しているIG会計グループは、ビジネスシーンでも取り入れられている集合知を大切にしています。お客様が抱えている困りごとについて担当者レベルで判断することが出来なければ、組織全体で持ち帰って皆で考える。それでもだめなら得意としている事務所に協力依頼してでも解決していこうという考え方がベースにあります。
私が5年ほど前から営業責任者として新規顧客開拓にあたっていたなかで感じたことは、中小企業が抱えている問題の1つ1つが難化し、かつスピード勝負になってきている状況下において、人材不足を抱える会計事務所がすべて対応できるのかとの疑問でした。
そこで、何か良い方法は無いかと考える中で、九州にはそれぞれの分野に強みを持つ事務所の存在があることを知りました。そうした特色のある事務所と連携すれば面白いことが出来そうだと思い、岩永經世IGグループ代表に話したところ共感していただき、現在の4事務所に声掛けして今回の社団法人設立へと進んだわけです。
4社共同出資としたのは、平等に責任を取る覚悟を示すためです。そうすることで、4社で成果をあげていこう!となるわけです。

―通称名のCOMBO(コンボ)ですが、意味と理念については?

山本 C O( C o – C r e a t i o n:共創)M(Management:経営)B(Boost:推進)O(Organization:機構)の頭文字を繋げて社名にしました。理念として掲げたのは、「倒産は博物館へ」です。これは私の仕事観にもつながる話ですが、事業を営む父親が他界し、その時に「負の相続問題」に巻き込まれた経験によって、倒産によってどんな影響があるのかを知りました。倒産の悲劇を繰り返さない、終わらせるにしても周囲の納得を得るかた
ちで終わらせる。つまり、倒産は過去のものとし、博物館に行かなければ見る事が出来ないくらいのものにしようとの決意を示したものです。
また、COMBOには「組み合わせ」の意味もあり、財務コンサル、バックオフィスDX支援、事業承継、組織再編、M&A、企業型DC導入支援などの特殊業務サービスの組み合わせ、会計業界でも知名度のある事務所同士の組み合わせを通して中小企業へ貢献をしていくことで、日本経済の発展に寄与したいとの想いを込めました。

専門特化した事務所が九州エリアに存在

―なぜ、九州のメンバーで設立されたのでしょうか。

山本 意図して集めたというよりも、いろんな業務に専門特化した事務所が九州エリアにいたという感覚です。クロスさんとは3年ほど前に業務提携を
締結してDXとMAS業務のコラボをしています。アイユーコンサルティングの岩永代表とは、京都大学経営管理大学院で行われている上級経営会計専門家(EMBA)の同期でもあり、優和マネジメントさんは弊社の事務所見学会に参加してくれて以来、永年MAS業務の展開において協業関係にあります。こういう関りがあったからこそ、今回の構想についても共感してもらいやすかったのかもしれません。また、それぞれの事務所の代表が私と同年代で、目指す方向性も近いことも要因の一つです。

―社団のマーケットとサービス内容について教えてください。

山本 マーケットは一般企業です。ただし、会計業界の中ではお客様の取り合いはしない事が原則ですので、税務顧問や会計業務はサービスから除外しました。事業承継、M&A、DX支援など特殊なスポット業務をサービスの基本としています。そのために金融機関や会計ベンダーとの業務提携、同業である会計事務所からの会員を募ることも事業活動にあります。金融機関の融資先や会計ベンダーのユーザー企業も、最悪の場合、倒産されては大きな痛手になります。だからこそ、COMBOと連携して頂き、少しでも課題解決に繋がる経営情報といった付加価値を提供することで、倒産リスクを軽減させていきたいと考えています。

垣根を超えた新たなビジネスチャンスを創造

―事務所単体ではおのずと限界があると。

山本 はい、そのとおりですね。「個人の限界を組織の限界にしてはいけない。組織の限界を業界の限界にしてはいけない」と、常に自問自答しながら経営改善の指導を続けてきました。COMBOでは「協働・協業」をテーマに、垣根を超えた連携でシナジーを生み出し、新たなビジネスチャンスを創造し顧客とともに強く成長する。そんな経営の好循環を目指しています。

―すでに具体的な活動を展開されているそうですね。

山本 はい、活動には大きく2つあります。1つ目としては、中小企業と多く付き合いのある金融機関や会計ベンダーとの業務提携を進めるための社団の紹介活動を始めました。九州各県の金融機関への挨拶をはじめ、業務提携し協業する企業とはセミナーを企画・開催していく予定で、社団活動を広く周知させていきます。
2つ目は同業である会計事務所を中心に、会員事務所に参画していただく活動です。会員事務所に対しては、これから年内にかけて集中的に4社のノウハウをシェアする研修会及び情報交換会などを開催する予定です。会員事務所に対しては、COMBOとレベニューシェアしながらそれぞれの事務所のコア業務に集中していただける環境づくりを支援していきます。
このような活動を通してMASや事業承継、DX、M&A、企業型DC導入支援などの依頼案件を獲得していく予定で、会員事務所や提携先企業には業務依頼
の紹介料をお支払いする仕組みも用意しております。

―設立記念イベントも企画されているそうですね。

山本 全国的にもこんな組織は珍しいので、ぜひ関係各位にCOMBOの設立趣旨や提供サービスなどを知って頂き、一緒に中小企業へ貢献をするためのスタートを切りたいと思い、企画しました。リアルだけにするかネットも活用したハイブリッドにするかはまだ決まっていませんが、多くの方にご理解いただく機会にしたいと思っています。特別ゲストにマネーフォワードの辻庸介社長をお招きし、これからの日本経済と会計事務所が担うべき役割について講演して頂く予定です。より多くの方々の理解と賛同を得られるよう、素晴らしいものにしたいと
思っています。

価値あるサービス提供で中小企業に貢献

―専門士業、金融機関、企業経営者それぞれが抱える特有の課題解決、経営改善がCOMBOの活動の中心となるわけですね。深刻化する人材問題についてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。

山本 会計業界に限れば、事務所の魅力が低減していることを危惧しております。この要因として、まず挙げられるのが会計事務所の「生産性」の低さでしょう。平均生産性が1,200万円あれば一流と言われる会計業界において、欲しい給料の3倍稼がないといけないのですから、それでは平均給料が400万円にしかなりません、これが魅力を落としてしまっている最大の要因で、これでは優秀な若い人材が会計業界に就職したくなくなるのも当然です。
また、2点目は資格優先になっていることです。中小企業に役立つ人材になるのに必ずしも資格は必要ないのですが、資格優先になるから優秀な人材が集まらないのではないでしょうか。このままでは、社会的インフラである会計事務所の人材が不足し、中小企業を十分に支援できなくなり、経済成長を阻害することになりかねません。
これからCOMBOの活動を通して、会計業界に携わってくれている20代、30代の方たちが、10年後に価値あるサービス提供を通して中小企業に貢献できる「場」を創造したいというのが当面のビジョンです。

―なるほど。まだ活動を開始されたばかりですが、今後1年間の目標及び将来構想などをお聞かせください。

山本 1年間で会員事務所数100は達成したいと思っています。COMBO4社だけでも400人超のスタッフがいる団体ですが、さらに多くの会計事務所に会員になって頂くことで影響力を高めたいと考えています。中小企業経営者が一番に相談したいのが顧問税理士だとするアンケート結果もありますが、それに会計事務所がどこまで応えられているかと問われると、まだ多くの課題があります。だからこそ、会計事務所も得意分野で貢献することが中小企業の期待に応えることに繋がると思いますし、そうなったときに本当の意味で中小企業のパートナーになれると思っています。そのためにも多くの仲間を作って影響力をつけていきたいと思います。

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