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最終更新日:2023-01-31

デジタルインボイスの行方

  • 2023/01/31
デジタルインボイスの行方

昨年10月にデジタルインボイスの国内仕様が発表された。これでデジタルインボイスが急加速するように見えたが、各メーカーへ取材しても完成日どころか仕様すら決まっていないというのが現実だ。そこで本紙編集部は、デジタルインボイスの関係者に現在の状況を取材した。

1.デジタルインボイスを実現する「Peppol」(ペポル)とは?

「Peppol」(Pan European Public Procurement Online)とは、電子文書をネットワーク上でやり取りするための「文書仕様」・「運用ルール」・「ネットワーク」のグローバルな標準仕様。 請求情報(請求に係る情報)を、売り手のシステムから、買い手のシステムに対し、人を介することなく、直接データ連携する仕組み。その際、売り手・買い手のシステムの「違い」などは問われない。

また、ユーザーは、自らのインターフェース(既存のインターフェース)を活用し対応することが可能であり、負担が少なく、かつ、快適なUI/UXでデジタルインボイスをやり取りすることが可能となる。

当初、デジタルインボイスは、電子インボイスと言われていたが、インボイスは電子データだけでなくQR等様々なデジタルデータもあることから名称が変更された。

そのデジタルインボイスのメインストリームが「Peppol」(ペポル)と呼ばれるデジタル庁が推進する仕組みだ。

まず請求者が「Peppolプロバイダ」に請求書を送り、プロバイダはPeppol登録情報(PEPPOL ID)を元にして、支払者が契約している「Peppolプロバイダ」を通して、支払い者に送る仕組みだ。

このように紙で請求書を送るのではなく電子データで送るため郵送や印刷の必要もなく、検索もしやすいとして多くの企業が注目した。

ところが発表当初は「Peppol」を国が管理しスタートすると見られていたが、今は民間ベンダーらで組織する「デジタルインボイス推進協議会」(略称:EIPA)が中心となって推進していくことになり、様々な問題が浮き彫りになってきた。

2.課題1. 利用料金の問題

利用料金は各企業が個別に負担するか、ソフト代金に含まれる形になる。つまり送信にはプロバイダ料金がかかるということになる(受信はプロバイダ事業者により異なる)。またメーカーは現在のシステムのデータを「Peppol変換事業者」へ送信しPeppolデータに変換後Peppolプロバイダに送るということになり、そのコストもかかることになる。編集部の取材では1通10円から15円程度という。さらに固定の基本料金が必要なメーカーもある。

3.課題2. 卵が先か鶏が先かの問題

 当たり前だがPeppolでデータを送信しても受信側がPeppolを受け取る仕組みがなければデータを受け取ることができない。開始当初Peppolの契約をしている企業はあまりないと考えられるので、Peppol導入企業へ国が補助金、助成金などの支援をする必要がある。

4.課題3. 大手企業の不在

既に大手企業では、業界内でEDI(「電子データ交換」企業間における契約書や、受・発注をはじめとした商取引に関する文書を専用回線や通信回線を用いてやり取りする仕組みが出来上がっている。そのため「業界EDIがあるのにさらにPeppolを導入する予定はない」(大手企業担当者談)と言う。大手企業がPeppolを導入しない限り、下請け企業もPeppol導入を見送るだろう。

他にも「PEPPOL ID」を誰が管理するのか、日本における「商慣習」から、都度請求しかできない現在の仕様など、乗り越えなければならない問題は多い。

Peppolを利用したデジタルインボイスは、多くの期待と不安を持ってスタートする事になりそうだ。

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