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最終更新日:2023-10-25

弥生 新サービス「弥生Next」を発表 会計情報を分析し、中小企業の業績向上をサポート

  • 2023/10/25
弥生 新サービス「弥生Next」を発表 会計情報を分析し、中小企業の業績向上をサポート

執筆者

宮口 貴志

宮口 貴志

KaikeiBizline論説委員兼編集委員

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。

はじめに

弥生株式会社(以降:弥生)は10月11日、同社が展開するクラウドサービスの新ブランド「弥生Next」の全貌及び今後の展開などについて、前山貴弘代表取締役・社長執行役員が発表した。同サービスは、中小・零細企業の抜本的な経営改善に繋がるサポートとして考えており、同社の会計事務所ユーザー会員と二人三脚で普及に努めることになりそうだ。

会計本来の機能を中小・零細企業に提供したい

弥生が新たなステージにサービスを拡大させる。今回、発表されたクラウドサービスの新ブランド「弥生Next」は、「会計」「給与労務」「商取引」の領域をベースに、弥生が保持するビッグデータを基に、AIによる分析や同業他社との比較など、中小・零細企業、個人事業主などの経営に関する業績アップを総合的にサポートしていくもの。これまでの業務効率化支援に留まらないのが、これまでと大きく違う点だ。
弥生は1987年の「青色申告会計 弥生」の発売以来、中小・零細企業や個人事業主のバックオフィス業務を支えてきた。現在の登録ユーザー数は、約310万以上、カスタマーセンターへの問い合わせ対応件数120万件以上、会計事務所ネットワーク1万2千事務所にも拡大している。弥生では、35年以上に渡り蓄積してきた事業者向けサービスのノウハウやデータなど、これらを有効活用していくことで、業績アップをさまざまな方向性から支援できるものと判断したもの。
本来の「会計業務」は、決算や税務申告、確定申告だけのデータではない。大企業では、専門部署で会計データを分析し、何が問題になっているのか、自社で何ができるか、どうすべきなのか、どんな可能性があるのかーなど検討している。これを、弥生は、中小・零細企業、個人事業主にも広げようという壮大な取り組みの一歩を踏み出したわけだ。
筆者個人の感想としては、前山社長は公認会計士・税理士の資格保持者で、実務的に大企業から中小企業まで関与して経験がある。税務・会計の専門家なら、会計データなどの有効活用は、常日頃から考えてきたことであり、弥生の社長就任前から「やらなければならないこと」と、強く思っていたことの一つだったと推察している。

AIやビッグデータを活用して業績向上に役立てる

とはいうものの、AIがここまで発展していなかった10年前では不可能だったかもしれない。時代も後押ししたのだと思う。これからは、会計データを有効活用し、AIやビッグデータの活用で業績向上につなげていくことは、大企業だけの専売特許ではなく、中小・零細企業、個人事業主まで浸透していく可能性を秘めている。
前山社長は今回の記者発表で「AIやクラウドの力を使って、私達が今どういうところに課題があるのか、どういうとこに強みがあるのか、競合に対してどういったところが劣っているのか、どんなところを次に補強しなきゃいけないのか、そしてそれによってどうやったら業績が上がっていくのか、これをわれわれは次のアクションとして取り組んでいきます。まさにデータを活用した業績の向上です」と、力強く弥生ソリューションのキーメッセージを話している。

会計事務所と二人三脚で「付加価値サービス」を拡大

ただ、素晴らしいソリューションを用意しても、事業者がこれを有効活用しなければ、絵に描いた餅だ。そこに会計事務所の力が必要になってくると推察される。前山社長は「秋から弥生ユーザーの会計事務所『弥生PAP会員』向けにカンファレンスを開催し、そこでこの弥生Nextも発表し、どのように利用してもらうのか紹介していきます」と会計事務所と二人三脚で広めていくことを明言している。
このサービスが展開されたら、会計事務所にとっても、従来業務のほかに、本来得意とする「会計」を使った「付加価値サービス」を広げることが可能になる。会計事務所にとっても注目のサービスになりそうだ。
今後の製品ラインアップについては、従来提供してきたクラウドサービスの「弥生 オンライン」およびデスクトップソフトの「弥生 24 +クラウド」シリーズに加えて、新たに「弥生Next」が加わり、計3つのラインアップとなる。
弥生Nextシリーズ第1弾の製品としては、10月20日に給与計算ソフト「弥生給与 Next」および「やよいの給与明細 Next」を発売。弥生給与 Nextは、これまで煩雑だった年末調整に関する従業員とのやり取りも全てデジタル化し、業務効率化を図るとともに、給与計算そのものも自動計算で行われる。また、法令改正にもタイムリーに自動的に対応できる。弥生給与 Nextは初年度は無償で提供され、次年度以降はセルフプランは3万1000円、ベーシックプランは5万4200円、トータルプランは7万5000円(全て税別)で提供される。
元米マイクロソフトのVice Presidentの平野卓也取締役会長は、「日本企業の99%以上が中小企業。この領域の業績向上を支援していくことは、非常に有意義なことであり、わが社にとって大きなチャレンジ。未知な分野だけに全社員及び連携する会計事務所と全力で取り組んでいきたい」としている。
現段階で「弥生Next」のサービス内容は、未だぼんやりとした感を否めない。具体的にどのようなサービスを受けられるのか、今後の発表に期待したい。

弥生 新サービス「弥生Next」を発表 会計情報を分析し、中小企業の業績向上をサポート

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