最終更新日:2022-08-08
コロナ感染急拡大 会社でPCR・抗原検査キットを購入したら全額経費で落とせるのか?
- 2022/08/08
執筆者
宮口 貴志
KaikeiBizline論説委員兼編集委員
税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
オミクロン株「BA.5」の置き換わりで、急拡大しているコロナ感染。会社としては、クライアント訪問時等にPCR検査や抗原検査などを実施することも増えている。会社で検査キットを購入したり、PCR検査を受けた場合、当然、会社経費で落としてもよいと考えるが、場合によっては税務署から「NO」と言われることもあるため注意したい。
「給与」と判断される可能性も
コロナ感染しているか否かを調べるため、会社でPCR検査や抗原検査をすることも増えた。また、大勢の集まりなどに出席する前に、市販の抗原検査キットを購入して、陰性の確認証明を得て参加することも一般的となった。
では、こうしたコロナ感染に関する検査費用は、会社の経費で落とせるのかという問題だ。国税出身のOB税理士の話では、「勘定科目は会社で決めれば良いが、いずれにしても業務上必要なことなら全額経費計上して問題ないと考えられる」と言う。
ここで注意したいのが、一部の役員・社員だけが使うものであれば、給与と判断される可能性が高い。
例えば、役員だけのPCR検査費用を会社が負担する場合、その経費は「役員報酬」となり、特定の社員の場合は「給与」として処理することになる。会社は検査費用を役員報酬や給料に上乗せすることになるわけだ。役員や社員側も結果的に所得が増えることになるため、所得税もその分増えることになる。
会社でこうした経費を落とす場合、重要なポイントは「業務上必要か」「特定の人の利益になっていないか」と言う点だ。
一般的に国税当局が「業務上必要か否か」を判断する基準は、社会通念上、会社が利益や所得を得るために必要な出費なのか否かで線引きされる。そのため、PCR検査や抗原検査の場合は、会社が利益を業務上必要な行為であれば、一部従業員の場合でも経費と落としても問題ないと考えられる。
2つ目のポイントは「特定の人の利益になっていないか」ということだが、業務上必要な出費を、社員などの一部の人のみしか認めない場合は、その一部の人に経済的利益を図ったと考え、経費性が否認される。そのため、検査をするか否かは個人の判断だとしても、全従業員に間口を広げ、公平性を保っておけば全額経費計上しても問題ないと考えられる。
検査キットを大量購入して会社にストック
PCR検査、抗原検査を会社経費で落とす場合、多くの税理士が「福利厚生費ではないか」と言うことが少なくないが、国税OB税理士は「福利厚生費にこだわることはなく、会社で決めて経費化すればいい。営業部門が営業活動で必要ということで購入したのなら、営業費でも構わない。簡単に雑費でもいいと思う」としている。ただ、「営業費」として経費計上する場合、転売するために購入しているのではないかと税務調査時に判断されないように、「営業費の中の項目についても明確にしておくことが必要だ」(前出の国税OB税理士)と指摘する。
なお、会社の指示ではなく、社員個人の判断でPCR検査等をした場合だが、費用は個人負担になる。会社の指示によらないものを社員個人の判断で行い、さらに事後報告をしたような場合にまで、会社が費用負担する必要はないからだ。
このほか、検査費用を会社で負担するとき、「前払い」か「後払い」か、という問題も現場でありがちだが、どちらでも経費として認められる。社員が一時的に負担したときは、領収書等を基に清算し、社員が負担した分を支払えば問題ない。
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税界よもやま話
元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。