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最終更新日:2021-03-25

コロナが引き金 大手企業が減資で中小企業へ 節税対策で苦肉の策

  • 2021/03/25
コロナが引き金 大手企業が減資で中小企業へ 節税対策で苦肉の策

「資本金1億円」の境界線、何が変わるのか?

毎日新聞社が2021年3月31日付けで、大企業から中小企業へ鞍替えする。41億5千万円の資本金を1億円に減資するもので、税法上では、資本金1億円以下だと「中小企業」扱いとなり、法人税法で大きな税優遇が受けられる。実は、今、毎日新聞だけでなく大企業が減資して、中小企業に鞍替えするケースが増えている。

税法では、資本金1億円以下を「中小企業」と定め、1億円を超えると「大企業」と分類うる。そして、中小企業と大企業では、法人税率も大きく変わり、中小企業の法人税は資本金が1億円以下だと大きく削減される。

令和3年度税制改正でも、コロナ禍での影響を考慮し、「中小企業者等の法人税率の軽減特例」が令和5年3月31日まで2年延長された。

延長された特例は、2021年3月31日までに開始する事業年度については、年間所得800万円以下の部分は、法人軽減税率15%(本則19%)とされていたものを、さらに2年間延長するというもの。このため、軽減税率は2023年3月31日までの開始する事業年度までに改正される。 法人税率は原則として23.2%だが、資本金1億円以下の中小企業者等ついては、各事業年度の所得金額のうち年800万円以下の金額については、軽減税率(本則)で19%となるところを、さらに特例では軽減する措置をとっている。

「中小企業」となれば多くの税優遇策も

中小企業の税優遇はこれだけでない。大企業の場合、赤字でも外形標準課税は払わなければならないが、資本金1億円以下の中小企業はその納付義務が免除されるのだ。

なぜ、赤字でも税金を納めなくてはならないかというと、企業も地方公共団体からさまざまな公共サービスを受けていることから、赤字である等の理由に関係なく、サービス利用料として公平に税金を徴収することを目的にしているからだ。

外形標準課税の課税対象は、資本金をはじめ会社の床面積や従業員数、そして会社の付加価値等の外観から客観的に判断したものが基準となる。

このほか、減資のメリットは節税だけでなく、累積赤字の補てんができることも挙げられる。貸借対照表の資本金と繰越欠損金が相殺される。貸借対照表は、金融機関や取引先に開示されることから、繰越欠損金があれば会社の安定性という点で信用性を落とすことがある。そのため、節税や赤字補てんができることで企業としては経営を安定させる効果が期待できるのだ。

今回、日本最古の全国紙、毎日新聞社が資本金41億5千万円から1億円に減資する理由は、中小企業になることで、節税効果や財務的な改善を図ることが大きい。毎日新聞は、グループ会社の東日印刷も資本金を1億円に引き下げる。

JTBや航空会社、居酒屋チェーンなど続々原資へ

実は、減資を図り、大企業から中小企業に鞍替える企業は毎日新聞だけでない。旅行大手のJTBも3月31日付で、資本金を23億400万円から1億円へ減資する。令和2年4~9月期に中間期としては過去最大の782億円の最終赤字(前年同期は43億円の黒字)を計上、国内店舗の25%を閉鎖するなど、コロナ禍において業績悪化が経営に打撃を与えた。

このほか、中堅航空のスカイマーク、かっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイト、居酒屋「はなの舞」を運営するチムニーなども減資を発表している。

これまでも、2015年当時、資本金1218億円の大企業だったシャープが経営破綻を回避するのに、一時的に資本金を1億円まで減資するとした報道があったが、結果的に資本金を5億円し、累積赤字の補てんを行った。

これまで資本金の少ない会社は、財務的に弱いと見られ、資本金の額が会社の格付けのような一面もあった。しかし、コロナ禍において、世間体を気にもしてられない大企業が増えてことや、資本金を減資しても、財務的にキレイにしたほうが、金融機関などへの信用力が上がると見る経営者が増えてきたことが影響している。

ちなみに、税務調査においても中小企業か大企業かの区分で、調査の所管が違ってくる。大企業になると、国税局の調査部が担当し、調査官も大人数になってくる。

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