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最終更新日:2021-06-22

「納税資金は「運転資金」として借入するのか?」

  • 2021/05/20
  • 2021/06/22
「納税資金は「運転資金」として借入するのか?」

監修者

徳永 貴則

徳永 貴則

(株)スペースワン 代表取締役 金融税理士アドバイザー講座主宰

大和銀行(現りそな銀行)にて、都内を中心に主に法人融資の新規開拓業務を行う。その後、本店融資部・審査部門を歴任。2,000社以上の融資に携わる。これらの経験を活かし㈱スペースワンを創設。銀行融資のコンサルをはじめ、事業再生や経営改善のアドバイスも行っている。
また、金融税理士アドバイザーの専任講師としても活躍中。

3回目の緊急事態宣言が今月末まで延長となり、何とも世の雰囲気も閉塞感が続いております。

先日、日経新聞にて「ウッドショック」の記事がありました。

アメリカにて住宅建築需要が急激に増えて、木材が不足しており、価格もコロナ前の6倍に跳ね上がっているようです。

日本においても、従来は木材を輸入に頼っていたこともあり、住宅をはじめ、梱包資材等が枯渇しており、価格上昇に転じております。

アメリカ、日本においてもコロナにより郊外に自宅を構えるニーズが高まり低金利も相まって土地の価格もあがり、建築資材も高騰する流れになるとは誰が予想できたことでしょうか?

いずれアメリカでは「利上げ」による引き締めのタイミングが来るはずですし、その影響は日本にも及んでくるはずです。

コロナ長期化で企業体力も疲弊していますが、さらに先の景気の波をいかに読んで今何をすべきか?

「短期的な視点のアドバイス」と同時に「中長期的に視点でのアドバイス」も私達には求められていると思います。


3月決算の企業は5月末に本決算の納税があります。

私のクライアントで3月決算の経営者から下記の質問がありました。

「運転資金としての納税支払いは『長期』で借りるべきですか?」

ここで解説しないといけないのは「運転資金」の中身です。「運転資金」とは使い勝手よい広義な意味の言葉になりますが、銀行融資では一言「運転資金」といってもその中身は50種類ほどあると言われています。

今回は「運転資金」の「一部」である「納税資金」はどのように借りたらよいのか?についてお話しします。

「運転資金」と「納税資金」は全く違う

まず「運転資金」とは事業を継続する上で最低限必要な借入と定められています。

(厳密には「経常運転資金」と言います)

計算式は以下のように考えます。

「経常運転資金」=「売掛金(受取手形を含む)」+「棚卸資産」―「買掛金(支払手形を含む)」

売上が発生したとしても「入金されるまでの立替分」及び事業を行う上でストックしておくべき在庫から支払分を差し引いたものになります。例えば、「売上回収が現金」で「在庫がなく」、支払いが「1か月後」だとすると、運転資金は「0」となります。

では、本題である「納税資金」は「運転資金」なのでしょうか?

前述した「運転資金」の計算式には「納税支払い分」の項目は出ておりません。

つまり、銀行融資では「納税資金」は「運転資金」ではないと言えます。

「納税資金」とは事業で黒字が出た結果、「法人税」「事業税」などの支払い分を工面する資金になりますので、通常の事業継続における「運転資金」とは資金使途が異なるのです。

一方、赤字決算の企業においては「法人税」は「均等割り」負担しかありませんので、「納税資金」は出ません。

※赤字企業において「運転資金」が必要なのは「赤字補填資金」と言い、厳密には「運転資金」とは言いません。(昨年のコロナ融資は、まさに「赤字補填資金」です)

また、「消費税」の支払として「納税資金」を利用することは出来ません。

「消費税」は既に売上先から預かっているものであることから、融資にて支払うことは出来ないとされています。

「納税資金」の借り方は「短期6ヶ月分割返済」

では、実際に「納税資金」の借り方についてですが、「納税資金」は「短期6ヶ月分割返済」しかありません。

6回の分割返済を行うことで、次回の中間納税時にも新たに資金を借入し、6回分割を行っていくと、納税分の資金繰り負担が平準化される仕組みです。

最期に、今回のクライアントに対する答えとして

〇「納税資金」と「運転資金」は混同しないこと

〇「納税資金」は長期で借りないこと(短期6ヶ月)

〇「消費税」の支払には使えない

この3つのポイントを押さえておいてください。

「納税資金は「運転資金」として借入するのか?」

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