最終更新日:2023-03-13
国税庁 暗号資産の期末時下評価で質疑応答 活発な市場の範囲を具体化
- 2023/03/12
- 2023/03/13
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暗号資産を「取引の決済手段」として利用するケースも増えてきたが、国税庁は1月20日、2023年1月1日時点の法令に基づく質疑応答事例「法人が保有する暗号資産に係る期末時価評価の取扱いについて(情報)」を公表した。令和5年度税制改正大綱には、暗号資産の評価方法等について見直しを行うことを盛り込んでいるが、今回公表した情報には、5年度税制改正大綱の内容は反映されていない。
国税庁公表のFAQ
暗号資産に関する一般的な法人税法上の取扱いは、令和4年12月22日付課税総括課情報第10号ほか5課共同「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」が公表されている。
1月20日に国税庁が公表したFAQ(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/230120/pdf/01.pdf)では、「活発な市場が存在する暗号資産」の範囲などをより具体化した。
<公表されたFAQ>
1、暗号資産の期末時価評価
2、期末時価評価の対象となる活発な市場が存在する暗号資産
3、DEXにおいて取引される暗号資産
4、ステーキングのためロックアップした暗号資産の期末時価評価
5、貸付けをした暗号資産の期末時価評価
6、借入れをした暗号資産の期末時価評価
FAQの1「暗号資産の期末時価評価」については、法人が事業年度終了に保有する暗号資産(活発な市場が存在する暗号資産)は、時価法により評価した金額をもってその時における評価額とするとしている。そして、その暗号資産を自己の計算において有する場合には、その評価額と帳簿価額との差額は、その事業年度の益金の額または損金の額に算入するとし、この評価損益は翌事業年度で洗替処理をすることになるとしている。
なお、時価評価金額は、暗号資産の種類ごとに次のいずれかにその暗号資産の数量を乗じて計算した金額とした。
- 価格等公表者によって公表されたその事業年度終了の日における市場暗号資産の最終の売買の価格
- 価格等公表者によって公表されたその事業年度終了の日における市場暗号資産の最終の交換比率×その交換比率により交換される他の市場暗号資産に係る上記①の価格
暗号資産の評価の定義を明確化
今回のFAQの目玉は、「2.期末時価評価の対象となる活発な市場が存在する暗号資産」の定義だ。国税庁は、以下の要件すべてに該当するものが対象になると説明している。
- 継続的に売買価格等が公表され、かつ、その公表される売買価格等がその暗号資産の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであること。
- 継続的に上記①の売買価格等の公表がされるために十分な数量及び頻度で取引が行われていること。
- 次の要件のいずれかに該当すること。
- イ 上記①の売買価格等の公表がその法人以外の者によりされていること。
- ロ 上記②の取引が主としてその法人により自己の計算において行われた取引でないこと。
またFAQでは、「活発な市場が存在する暗号資産に該当するかどうかは、保有する暗号資産の種類、その保有する暗号資産の過去の取引実績及びその保有する暗号資産が取引の対象とされている暗号資産取引所又は暗号資産販売所の状況等を勘案し、個々の暗号資産の実態に応じて判断することになる」などの補足説明も記載している。
このほかに関心の高いFAQとしては、一般に中央に管理者のいない分散型取引所を意味する「3.DEX(Decentralized Exchange)における取引される暗号資産」についてだが、「活発な市場が存在する暗号資産」の判断における「市場」に含まれるとの解釈が示されている。これを踏まえ、DEXで上場されている暗号資産も「活発な市場」の判断基準を充足するかぎり、期末時価評価の対象となることが明らかになった。
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元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。