最終更新日:2022-08-08
リスケジュール実施企業に『ABL』を売り込んでいる銀行があります
- 2022/08/08

監修者

徳永 貴則
(株)スペースワン 代表取締役 金融税理士アドバイザー講座主宰
大和銀行(現りそな銀行)にて、都内を中心に主に法人融資の新規開拓業務を行う。その後、本店融資部・審査部門を歴任。2,000社以上の融資に携わる。これらの経験を活かし㈱スペースワンを創設。銀行融資のコンサルをはじめ、事業再生や経営改善のアドバイスも行っている。
また、金融税理士アドバイザーの専任講師としても活躍中。
リスケジュール(以下リスケ)を実施すると、原則新たな借入はできなくなります。
(あくまで原則です)
しかし、最近、リスケ先に対して「ABL」を提案している銀行が見受けられてきました。今回は、リスケ先にとって「ABL」を行うべきがどうかについて、銀行と企業側からの観点でお話してみます。
銀行は何故、リスケ先に「ABL」を提案してくるのか?
「ABL」を提案してくる銀行側の思惑は何か挙げてみます。
〇リスケしているし、借入もできないことから資金繰りに困っているだろう
〇売掛金担保にするし「ゼロリスク融資」であり、貸出残高も伸ばせるし、引当コストもかからない
〇毎月の評価手数料も入ることから「手数料収益」も取れる
〇リスケ先に「恩が売れる」はず
このような考えがあると推測されます。
「ABL」とは、「売掛金」や「在庫」などの動産を担保にして資金化させるファクタリングのようなものです。
売掛金が回収されるまで「2ヵ月」かかるものを即資金化させます。
銀行としては、リスクが限りなく小さい(リスクは売掛先の信用になる)融資であることから、リスケ先とは言えども、やり易い融資と言えます。
ただし、いったん「ABL」を導入すると、抜け出すのは困難になります。
「ABL」を卒業するためには
〇黒字転換をし、手元資金を貯めて「ABL」を返済する
〇他の借り入れで「ABL」を返済する
この2つしか方法はありません。
リスケ企業としては提案を受けるべきか否か?
私個人的には「ABL」の導入には否定的です。
理由としては、特に「売掛金」は最後の砦になることから、仮に「破産」を選択せざるを得ない場合、裁判所や弁護士への費用が手元になくても、前月までの売掛金にて申し立てが可能になるケースもあり、会社にとっては早期資金化できる最後の資産であるためです。
さらにリスケ実施先で「ABL」を実施した場合
〇リスケ済みの既往債務とは別建てで考える必要があり、ABLが減額された場合はリスケ債務とは別に返済原資を捻出する必要がある
〇新たな貸出とはいえ、リスケ中に新たな担保を差し出すことになり、他行の了解が必要になる
など、ABL実施後に想定される事態に対して、どうすべきかを事前に検討しておく必要があります。
どうしても資金が必要な場合はあると思いますが、その前に、企業の収益体質を根本から改める必要性があることをよく念頭においてください。

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税界よもやま話
元税理士業界の専門紙および税金専門紙の編集長を経て、TAXジャーナリスト・業界ウォッチャーとして活躍する業界の事情通が綴るコラムです。




