最終更新日:2021-06-22
短期運転資金でも「コベナンツ手数料」をとってくる
- 2021/06/22
監修者
徳永 貴則
(株)スペースワン 代表取締役 金融税理士アドバイザー講座主宰
大和銀行(現りそな銀行)にて、都内を中心に主に法人融資の新規開拓業務を行う。その後、本店融資部・審査部門を歴任。2,000社以上の融資に携わる。これらの経験を活かし㈱スペースワンを創設。銀行融資のコンサルをはじめ、事業再生や経営改善のアドバイスも行っている。
また、金融税理士アドバイザーの専任講師としても活躍中。
製造業等の「外需」との関係がある先は年明け以降、確かに受注高は回復してきており、トンネルの先が見えてきた感があります。
一方、飲食・運輸・宿泊・小売・サービス業などはまだまだ暗闇の中にあり、出口はワクチン次第といった感が強くあります。
コロナ2年目の資金繰りは、業種によって「2極化」の差が顕著になってきており、単に「リスケ」だけでは処方が困難な先も出始めております。
「自力再生」「スポンサー方式」「資本性ローン」などなど、金融手法も今までとは違った切り口の発想が求められます。
まずは、顧問先の道筋をどのように立ててあげるのか? 私達の「アンテナ」の感度をさらに上げていくようにしていかないとですね。
「コベナンツ融資」とは
皆さんは「コベナンツ融資」を聞いたことありますか?
「コベナンツ」とは日本語にすると「財務制限条項」の意味です。
一般的に(私が知っている範囲での一般的の意味ですが)は、コベナンツ融資は長期資金(1年以上)の融資において銀行と債務者との約束を交わすケースが多いのですが、先日、私のクライアントにて短期融資でのコベナンツ融資提案がありました。
今回は「短期」コベナンツ融資についてお話をさせて頂きます。
▽コベナンツって聞こえはいいが、面倒くさいもの
私のクライアントに対して某大手関東地銀からの提案は下記のとおりです
〇手形貸付 「極度」50,000千円
〇期間1年での期限一括返済
〇金利 1.375%
〇コベナンツとして下記の3点を守ること
➀毎月借入残高を報告すること
➁毎月末の全ての預金口座の残高を提出すること
➂新たな借入を他行からする場合は事前に相談すること
〇取り組み手数料 1,300千円
〇毎年更新時に手数料 300千円
融資スキームのメリットとデメリット
では、この融資スキームの「メリット」「デメリット」を挙げてみます。
<メリット> 「極度」「期限一括」はGOOD
まず「50,000千円」の金額はクライアントの「正常な運転資金」(売掛金+在庫-買掛金)の範囲であり、この金額を期限一括にできるのはありがたい条件です。
また、「極度枠扱い」になっていることから、使うときには使えばいいし、余剰資金があれば返済できるものいい条件です。
次に金利も1.375%とメガバンク短期プライムレートになっており、なかなかいい条件です。
<デメリット> 「報告」「事前承認」面倒くさい、かつ融資の事前相談ってなに??
コベナンツ条項とは聞こえは格好いいですが、毎月の借入残高、預金残高(融資された銀行以外もです)を毎月報告するのは手間ですし、翌月以降に試算表を出せばそれでいいのではないかと思ってしまいます。
かつ、他行で融資を受けたいのに、わざわざコベナンツ融資を受けた銀行に事前に相談する必要がどこにあるのか?またダメと言われたら、追加で貸してくれるのか?かなり疑問と懸念が残ります。
そもそも、このような報告を「有償(手数料支払い)」でやる必要性が私には理解できません。
▽こんなスキームで手数料とるの??
ダメ押しで最悪なのは上記コベナンツ➀~➂(全て債務者が報告する事項)で、銀行に払う手数料です。
取組時手数料「1,300千円」は元金50,000千円に対して年利換算「2.6%」
更新手数料 「300千円」は元金50,000千円に対して年利換算「0.6%」
この手数料は何のためにあるのか?
なぜ毎年金利以外に手数料がかかるのか大いに疑問です。つまり貸出金利は「1.375%」と低く見せているが、初回は「2.975%」、2年目以降は「1.975%」の実質金利になります。
目先の「極度貸の期限一括」「金利が安い」と好条件と聞こえがよく、「コベナンツ」ってカタカナ響きでなんか最新型融資では?と思っている方は大きな間違いです。
「報告の義務を課せられ、新規融資の選択肢の自由が制限され」かつ手数料を払うこれが本件のコベナンツ融資の正体です!
コベナンツ「なし」で「普通に金利払って」運転資金の融資を受ける・・私ならこちらを選びます。
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