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最終更新日:2022-12-12

インボイス制度 会計事務所が取り組むべき課題

  • 2022/12/12
インボイス制度 会計事務所が取り組むべき課題

インボイス対応に関しては、会計事務所としても、どこまで対応していくのか方針を決定しておく必要がある。
顧問先から適格請求書の確認作業などを依頼されたら、従来と違う手間がかかるほかリスクも伴う。ただ、簡単に報酬アップを要求できないのも現実だ。会計事務所が取り組むポイントをまとめた。

職員に欠かせないインボイス制度の知識向上

まずは、会計事務所として適格請求書発行事業者登録(登録事業者)をするかの判断をすることだ。

所長税理士としての考え方もあるため、必ずしも登録事業者になる必要はないが、顧問先に登録事業者を勧めておきながら、自ら登録事業者にならない場合、関与先からの印象は良くない。登録事業者にならないのであれば、その理由を関与先に説明する必要があるだろう。

登録事業者となったら、会計事務所としても関与先に登録番号と登録日を知らせておくこと。また、このとき、関与先が登録事業者になっていれば、関与先の登録番号と登録日を聞いて、エクセルなどにまとめておきたい。

こうした作業と同時に取り掛かりたいのが、職員のインボイス制度の知識向上だ。今後は、関与先からインボイスに関する質問が増えることが予想される。社内研修などを通じ、職員一人ひとりが知識を深めておく必要がある。また、顧問先からの相談対応のマニュアルなど作成しておけば、事務所内で一定の業務品質を保ったサポートができる。

登録事業者になったら事務所の経理体制の見直し

インボイス制度がスタートすれば、会計事務所も登録事業者として、仕入税額控除の適用を受けるには帳簿とインボイスの保存が必要だ。そのインボイスには、登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額等を記載する必要があるため、記載漏れがないかなど、チェックしていく作業が増える。

また、インボイスは、書面での交付に代えて、電子データ、いわゆる「電子インボイス」で提供することができる(消法57条の4⑤)。提供を受けた電子インボイスは、紙に印刷したものを保存することもできるが、業務効率化の観点から電子データでの一元管理を考えた場合、電子帳簿保存法(電帳法)の電子取引に係るデータ保存制度の要件に従って保存することになる。会計事務所としては電帳法についても知識を深め、対応していく必要があるわけだ。

つまり、電帳法対応も見据えた追加業務がでてくると、事務所内の業務フローの見直しが必要になる。

従来と違う業務が追加されるため、どのような業務フローにしていくのか、運用に至るまでどのぐらいの時間が必要なのかも要検討事項だ。

業務フローなどの見直しで考えるべきは、所長がインボイス対応の青写真を持つこと。

所長及び幹部が、その青写真を実現するための業務モデル図を作っていく。業務モデル図ができれば、業務プロセスでの課題が見つけやすくなる。そして、課題が見つかれば、課題リストを作成し、優先度、業務内容、解決策をまとめ、何が優先すべきことなのか、把握しやすくしていく。

スタッフも業務モデル図が明確になれば、それを確認することで、何がメリットなのか、どういった事務所に変っていくのかが分かり、協力を得られやすい。

<業務モデル図の作成で見えてくること>

ここで重要なのが、改善・確認作業だ。新たな業務フローを構築したら終わりでなく、継続して改善状況を確認していく。これにより、業務効率化を更に進めることができるほか、事務所の業務品質向上にも結び付く。

関与先からインボイスのチェック確認を依頼されたら

インボイス制度がスタートすれば、業務の煩雑さから、インボイスのチェック、保存に関して、関与先から丸投げされる可能性も考えられる。そうなった場合の関与先への業務フローの見直しも考えておく必要がある。基本的にやることは前述の内容と変わりがないが、自事務所の業務モデル図をベースに、関与先の管理をどうしていくのか、新たに業務モデル図を作成し、定着していくように検証を重ねていくことだ。

関与先に関しては、インボイス対応での報酬アップについても検討しておく必要がある。ここまでサポートしたら報酬を追加でもらう、逆に自社でここまでしてくれたら報酬はこれまで通りなど、基準を明確にしておくと交渉しやすい。

会計事務所内のインボイス対応は、すぐにできるものではない。

会計事務所が準備すべきことの大枠としては、以下のようになる。

・インボイス制度への対応方針の決定

・職員への知識向上

・インボイス対応の青写真の作成

・業務モデル図の作成

・新たな業務モデルの検証

会計事務所が関与先のインボイス対応にどこまで関わっていくのか、報酬面はどうするのかなど検討すべきことは多い。

この大きな転換期に勝ち残っていくために、会計事務所がやっておくべきことを整理し、必要な体制作りを今から進めておきたい。

インボイス制度 会計事務所が取り組むべき課題

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