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最終更新日:2023-12-04

会社の事業を第三者に譲渡したら融資を返済しないといけないのか?

  • 2023/12/04

監修者

徳永 貴則

徳永 貴則

(株)スペースワン 代表取締役 金融税理士アドバイザー講座主宰

大和銀行(現りそな銀行)にて、都内を中心に主に法人融資の新規開拓業務を行う。その後、本店融資部・審査部門を歴任。2,000社以上の融資に携わる。これらの経験を活かし㈱スペースワンを創設。銀行融資のコンサルをはじめ、事業再生や経営改善のアドバイスも行っている。
また、金融税理士アドバイザーの専任講師としても活躍中。

中小企業において後継者がいない企業が多いのはもちろんですが、会社の一部の事業を譲渡し、その事業に従事する社員を移籍させ、会社規模を縮小し、自分が続けられるだけ続けてみるのも選択肢のひとつです。

今回は私のクライアントに実際にあった話で、会社の一部事業を譲渡した場合、借入金の返済はどうしたらよいのか?についてお話をします。

「全部譲渡」と「一部譲渡」では対応が違う

「全部譲渡※」の場合

会社の事業を「全部譲渡」するのは、全事業と社員を買い手に引き継いでもらうことです。(「株式の全部譲渡」ではなく、あくまで「事業の全部譲渡」の意味です)「全部譲渡」の場合は、譲渡後には事業を継続しないことから、「譲渡代金」にて借入金を全て返済するのがベストです。
ただ、「譲渡代金」<「借入金」となっていた場合には、残った会社の資産にて譲渡代金返済後の借入金が返済できなければ、

〇違う事業を起こして返済を続けるか
〇現経営者が保証人として返済を続けるか
〇「破産」するか
〇それとも「残債免除」になるか

はあくまで債権者との折衝になります。
(ここでは詳しい話は割愛します)

「一部譲渡※」の場合

会社の事業を「一部譲渡」する場合は、譲渡後も事業を続けることを前提としますので、借入金の返済は続けることになります。
ただし「一部譲渡代金」は原則として「全額融資返済」に充てなければなりません。
その理由として、銀行は譲渡する事業からのキャッシュフローを見込んで融資していたためです。
つまり、一部であっても事業譲渡代金の使い道はあくまで金融機関からの同意がないと返済以外には使えないことになります。

※「全部譲渡」「一部譲渡」どちらも債権者の同意が必要になります

「一部譲渡」後にいかに返済していくのかが問われる

私のクライアントのケースでは、一部事業譲渡の話を取引金融機関にした当初は「全額返済」の一点張りでした。
しかし、譲渡後に「事業再構築」を図りたく異分野の事業を行う意思と計画があったことから、新たな事業計画のもとで、必要な運転資金を除いた金額を返済すれば認める結論に至りました。

前述のとおり、金融機関にとって「譲渡代金は全て返済に充てる」のは当たり前です。一部譲渡代金を返済に充てても、借入金が完済できない場合には、返済を継続していく必要があります。そのため、返済継続のために譲渡代金の一部を新事業の為に使うことは必ずしも否定はしてこないのです。

ただし、新事業に必要な資金や資金繰り、事業計画書の提出は必須になりますので、その点は忘れないようにしてください。

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